文化体験ツアーに参加して、台湾原住民の魅力を再発見しよう
こんにちは、台北ナビです。
近ごろ目にする原住民料理や原住民グッズは、素朴だけど手仕事のぬくもりにあふれ、どれもオシャレだったりかわいかったりと魅力がいっぱいです。そんな彼らの暮らしや文化をもっと知りた~い!と、台湾原住民の集落(部落)を訪れる特別ツアーに参加してきました。
現在、政府公認の台湾原住民族の数は16部族、その多くが台湾東部に暮らしています。中でも台東県は原住民族の割合が最も多い地方で、アミ族・ブヌン族・プユマ族らの故郷として知られています。
各部族に異なる言語や文化、風習があり、今も先祖代々受け継がれています。そうはいってもTVで時折目にするような山奥に籠って現代文明と一線を画した生活をしているわけではありません。一般社会の中で彼ら独自の伝統を守りながら暮らしています。
イラストになったアミ族の文化風習
日本では、古くから土地に根付き暮らしている少数民族を「先住民」といいますが、台湾では彼らへの敬意を込めて「原住民」と呼んでいます。台北ナビではそんな彼らに敬意を表し、敢えて中国語と同じ「原住民」と表記したいと思います。
原住民集落が開催する体験ツアーに参加しよう!
彼らの住まいは決してアクセスのよい場所ではありません。それに実際に訪ねてみたとて、気軽に彼らの伝統文化に触れられるわけでもありません。しかしながら、中には開かれた集落もあります。本日は、そんな2つの集落で催されている文化体験に参加してきました。
アミ族の集落、「電光部落Kaadaadaan」@台東・関山
台東県關山(関山)に位置する「電光部落」は、住民の7割が阿美族(アミ族)という集落です。
クリスチャンが多いアミ族
言い伝えによると、海岸山脈と卑南溪に挟まれたこの地にあった泥火山は、夜になるとしばしば火を噴いたことから、人々は雷様の仕業だろうと、台湾語で稲妻を意味する「雷公」から「雷公火」と呼ぶように。彼らの言葉(アミ語)では、「Kaadaadaan」と呼ばれています。
集落に関するレクチャーを受けたら、さっそく「竹炮(砲竹、爆竹)」体験へ。目の前に現れたのは太くて長~い竹製の筒。これは100年以上も前の清の時代、侵略してきた敵兵を威嚇し、退陣させるための武器として用いられていたとか。
当時、アミ族の持つ武器といえば弓矢やナイフくらい。そのため火縄銃や大砲で攻め入る敵にはとても太刀打ちできなかったそうです。そこで考え出されたのがこの「竹炮」。電気を帯びた土に水を加えてガスを発生させることで、火をつけるとドカンと大きな音が。ナビらも体験してみることに。
ドド~ン!と巨大な音が響き渡ります
人によっては「ポンッ」とかわいい音がしたり、「ドカ~ン!!!」と爆音と共に火を吹いたり、個性的な音が集落に響き渡りました。
アミ族伝統の打楽器を奏でよう!
地元の小学校では授業に取り入れられているという伝統打楽器
7本の竹筒を束ね、しゃもじみたいなバチで上部を叩くと、異なる音階の優しい音が響きます。無骨な見た目と裏腹に丸みを帯びた軟らかい音。聞くだけで癒されます。さらに集落の女性がリズムに合わせて歌声を披露してくれました。不思議!身体が勝手にリズムを刻み、思わず笑顔に。心地よいと身体が勝手に動いちゃうものなんですね、
「阿拜(アバイ)」とは、伝統的な原住民料理の1つで、モチ米と豚肉、干しエビや乾燥キャベツなどを月桃と甲酸漿と呼ばれる植物の葉でくるんで蒸したもの(具材は民族によっても異なるそう)で、いわば原住民版のちまきのことです。
集落のIna(ママの意)の指導の下、ちまきDIYのスタートです。中華風のちまきと違い、四角い箱型なのでナビでも簡単に包めそう!
と包みはじめるも……葉っぱが繊細なのかナビが大雑把なのか葉に裂け目が。なんとか包み終えたら、最後に吉兆の8回転で紐を巻いて完成です。あとは蒸し上がりを待つばかり♪
続いてやってきたのが、小さなコーヒーショップ「日出禾作」です。ここで生まれ育ったという黃瀚さんが、この地で栽培されたコーヒー豆を焙煎し、曳き立て・淹れ立てのコーヒーを提供しています。
台湾コーヒーといえば阿里山や古坑が知られていますが、ここ台東・関山でも日本統治時代は盛んに生産されていたといいます。戦後1度は生産がストップしたものの、近年の台湾コーヒーブームに背中を押され、集落あげてコーヒー作りに乗り出しました。
ここでは、実際に手網を使ってロースト体験もできるんです。やり方は簡単で、蓋付きの網に生豆を入れて、コンロの上で振るだけ。お好みの深さまであぶりましょう。できあがったコーヒー豆はお土産用にパッケージしてくれるから、おうちで思い出に浸りながら味わうことが。
出来上がった豆はお土産に~♪
ほかにも、集落には飾らない昔ながらの建物や風景があったり、自家製食材を用いた食事がいただける「寶媽食堂」があったり、アミ族のバーベキューやお餅作りの体験もできますよ!
ルカイ族の集落、達魯瑪克部落Taromak@台東・卑南
台東県卑南郷に位置する「達魯瑪克部落」には、台東で唯一の魯凱族(ルカイ族)が暮らしています。プユマ族やパイワン族が暮らす地域と隣接するここを、彼らの言葉(ルカイ語)で「Taromak(私たちの家)」と呼び、独自の文化を伝承し続けています。
入境の儀式を執り行いTaromakの森へ進もう!
台東ルカイ族の伝統文化が体験できるのは、スマホの電波も届かないような山の奥。昔ながらの暮らしや森林生態の学び場として切り開かれた場所です。
本日の案内人、Lravorase Lra-madaralraeさん
そんな秘境に足を踏み入れるには、まず入境の儀式から。記念碑を取り囲むように皆で立ち、ビンロウと酒を捧げて祖先に来客を伝えます。特に派手なパフォーマンスはありませんが、儀式は粛々と執り行われます。
ナビは心の中でこの機会を与えられたことに感謝の意を告げました。しばしの間、ルカイ族の一員になり、森の奥へと進みます。
ルカイ族のエコなコップを作ろう!
意外と簡単に切れたー!
活動場所に着いたら、切り出した竹を使ってコップ作りを。
竹のふしから指4本分上を斜め45度に、ふしから約1センチ下をまっすぐ切るだけです。この角度のおかげで視線を合わせたまま盃を交わせるのだそうですよ。
目と目で語りながら乾杯!
作ったコップはお土産としてお持ち帰りOK!ナビはできたてコップでさっそくコーヒーを飲んでみることに。大自然の中、自作のコップでいただくコーヒーは格別な味でした。
左がナビ作のコップ。右は葉っぱでできた器
地球がくれた恵みIcibiを味わおう!
ランチは自分たちで作る蒸し焼き料理「Ichibi(イチビ)」をいただきます。仕事の前に仕込んでおけば、お昼にはほどよくできあがっているというわけです。
Ichibi作りは地面に穴を掘り、石を並べて焚き木をくべるところからはじまります。大地のかまどを温めている間に、食材の用意を。火の通りにくい根菜を下に、葉物と肉をのせ、味付けはたっぷりの塩をまぶすだけ。昔は葉っぱでくるんだそうですが、今は便利なアルミホイルを使って包みます。
大きな塊となった食材を温まったかまどにドーンと放り込み、石で蓋をします。あとは待つだけ。できあがった料理は、それぞれの食材から旨味エキスが染み出し、シンプルながら慈悲深い味わいに。これぞ大地の恵み!
蒸し上がったぞー!
残った皮を大地に返せば、次の料理を温めるための土となり、永遠に命をつないでくれます。サステナブルが叫ばれるずっと以前から、取り組んできた知恵。人類も自然の一部だという当たり前のことに改めて気付かされます。
自然を分け合い、自然をいただきます
もっちりとしたお米は丸めておにぎりにすると、また違った味わいに
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素朴な風味にホッとする、ビンロウの花のスープも
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さまざまな植物が迎えてくれる
Ichibiのできあがりを待つ間に、ハイキングにでかけました。道々に咲く草花を眺めながら、食べられるもの、薬となるもの、工芸に使うものなど解説してくれます。ここには実にさまざまな植物が自生しています。
樹木に絡みながら上へと延びる葉は愛玉なんだとか!
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日本軍も弾薬倉庫として利用されていた洞窟
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小道の脇には洞窟も。これは防空壕跡で、第二次世界大戦中には日本軍の弾薬保管庫として使われていたそうです。今ではたくさんのコウモリの住処になっています。
緊急連絡用に一部通話は可能
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お手洗いもシンプル
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原始風景を残した森ですが、現代人も安心して利用できます |
ナビが体験したのはほんの一部。ほかにも多彩な体験が用意されています。4時間ほどのショートステイから集落の民宿に宿泊しながら、どっぷり原住民文化を楽しむ2~3日のツアーまで、好みに応じて選ぶことができますよ。
集落で原住民文化を体験するには?
ご紹介した2つの体験ツアーは、各集落のオフィシャルサイトまたはフェイスブックから応募ができます(実際の内容は異なる場合あり)。時期や人数などの条件がありますが、興味のある方は、ぜひリンク先をご覧ください。
以上、台北ナビでした。
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2023-11-22