ファンが戻って活気を取り戻した台湾プロ野球。球場や台湾ならではの応援方法など見どころはありますが、やっぱり野球ファンなら個々の選手についても知りたい!というわけで今回ナビは、上半季優勝の義大ライノズから、2013年7月現在打撃部門三冠王の林益全選手、最多勝利の林晨樺投手に特別にお話を伺ってきました!
林益全選手(内野手/背番号9)
現在打撃部門のトップをひた走る林益全選手は、台湾を代表する左バッター。台湾電力野球チームから2009年に当時の興農ブルズ入り。入団当初から注目度の高い選手で、契約金は台湾プロ野球史上2番目に高い5百万元が支払われたとされ話題に。ルーキーイヤーに打点王に輝き、年度MVPや新人賞も受賞。一躍スター選手の仲間入りをしました。チームの主軸として毎シーズン3割以上の好成績を認められ、2009年、2013年のWBC台湾代表メンバー入り。2009年大会では不発に終わりましたが、2013年大会では予選リーグ突破に貢献。リーグ戦まで好調をキープし、現在打撃部門三冠王に輝いています。毎年高打率をキープする彼につけられたニックネームは“神全”。台湾プロ野球を代表する野手の語り口はとても穏やかでした。
――今シーズンの好調の理由を教えてもらえますか?
上半季の成績は特別なものではないですよ。毎年それくらいのアベレージは残していますから。実はバッティングの調子としては昨年の方がよかったんです。ただ今年は長打やホームランが多いから、好調さが目立っているのかもしれませんね。ラミレスの影響も少しはあると思います。
――チームオーナーの変更は影響がありましたか?
選手にとってはあまり大きな問題ではありません。オーナーが変わることはプロだったらいつでもあり得ることですからね。僕らはプレーに専念するだけです。ただ、もともとのブルズのファンに加えて、新しい観客を獲得するきっかけにはなったのではないかと思うので、その点はすごく嬉しいですね。
――WBCでベスト8入りし、お客さんが増えたと実感していますか?
それはプレー中にも実感していることです。僕たちの努力にファンが心を動かしてくれてすごく嬉しいですね。僕たちにもう一度チャンスをくれて、また声援を送ってくれている。声援は選手にとって何よりも原動力になりますからね。
――今シーズンは投手を使い果たしたチームのためにマウンドに上がる場面がありました。あれはどういう心境だったんですか?バッティングに支障はありませんでしたか?
あの時は自分でもビックリしました。「え?本当に?」という感じ。でも本職のピッチャーは多くないし、あの日はすべてのピッチャーを使い果たしていました。それに監督の采配ですからね。バッティングへの影響といっても、もともと小学生のころからずっといろんなポジションをやってきて、必要な時はピッチャーだってやっていましたから。実はああいう体験ができてけっこう楽しかったんです。だってめったにない機会でしょう?
――登録人数のことも含めて、台湾プロ野球の環境をどう思いますか?
環境はやはり日本に比べればまだまだです。ドーム球場か屋外球場かどうかは好みもあると思いますし、屋外で野球を見る楽しみもあると思うのでどちらでもいいのですが、グラウンドのコンディションが日本のように整えられていないので、ケガをしやすいなどのリスクがあります。
――台湾には日本からコーチや選手がたくさん来ていますが、林選手は日本野球の影響を受けていると思いますか?
実を言うと野球を始めてから今まで、ずっと日本野球の環境にあこがれています。なんといってもファンが多いですから。日本だと野球選手は超有名人ですし、スター選手ともなれば我々の総統並みの知名度がありますよね。台湾はまだまだそこまで野球選手の地位は確立されていません。
WBCですごく印象深かったのは、日本選手の決して諦めない姿勢です。土壇場でタイムリーを放ち同点に追いつく粘り強さには感服しました。僕たちも全力で戦って先制しましたし、決して負けてはいなかったと思うのですが、日本は僕たちをさらに上回る気力で勝利しました。あの粘り強い姿勢はアジアの選手すべてが見習うべきところだと思います。
機会があれば日本でプレーしたいという気持ちももちろんありますが、まず台湾国内で納得できる成績と結果を出したいです。
台湾の応援団は内野で鳴り物を鳴らします。選手ともこんなに近いんです
――台湾の野球ファンは日本のファンと違いますか?
基本的には同じですね。WBCで日本に行った時に、日本のファンも台湾と同じように熱狂的だと思いました。違うのは音楽隊(応援団)です。日本の応援団は外野で演奏しますが、台湾は外野で観戦する人が少ないので、内野でやります。応援はものすごくよく聞こえますし、時々試合中にも大音量で演奏しています(笑)。外国から見に来た方はあのうるさい応援にビックリするかもしれませんが、あれが台湾プロ野球の風物詩です。
――目標としている選手はいますか。
誰かのようになりたいという気持ちはありません。それよりも唯一無二の存在になりたい。ラミレスはマニー・ラミレスという世界でたった一人の特別な存在ですよね。彼のプレースタイルや雰囲気はすぐに思い浮かぶ。僕も「林益全」のプレーが見たい、と言われるような、特別な選手になりたいと思っています。それが目標ですね。
――11月にはアジアカップも台湾で開催されますね。
ここ台湾で開催されることをとても嬉しく思っています。日本の野球ファンのみなさんもたくさん台湾に来ていただいて、野球観戦のほかにも台湾を楽しんでほしいと思います。僕も大好きな台湾グルメもぜひ満喫してください。プロ野球も一度見に来てもらえると嬉しいです。
入団2年目の林晨樺選手。1988年生まれの25歳です。台湾電力野球チームから2012年に興農ブルズ入り。ルーキーイヤーに7勝を挙げ新人王に輝きました。2013年WBCの正式メンバーには惜しくも選ばれませんでしたが、今季は好調をキープし、2ケタ勝利一番乗り。今後さらなる活躍が期待される注目の投手です。日本野球への憧れも強いという林選手は台湾の若者らしく明るくて社交的。ユーモアあふれるトークも魅力です。
――今年は観客が多いと肌で感じますか?
そうなんです。すごく観客が増えたと感じています。WBCで8強入りしてこれまでのファンが戻ってきたし、新しい球団になってさらに新しいファンが加わったので、去年までと比べるとすごく球場が賑やかなんです。最初はこんなに観客の多いところで投げるのは慣れなくて、すごく緊張しました(笑)。でもだんだん慣れてくると、応援が力になるんだなと感じています。やっぱりファンが多いとプレーに力がこもりますね。
――入団2年目でチーム名が変わりましたが?
最初まだ正式に決まっていない時は、オーナーが変わるという噂を聞いて、「どうなるんだろう?」と正直不安でした。でも決まってからは義大の福利がとてもいいとわかったし、僕も落ち着いてプレーできています。
――今年はすでに2ケタ勝利ですね?
ラミレスなどの補強もあって打撃の調子がいいですからね。バックの守備もいいから僕たちピッチャーは楽に投げられます。それが結果につながっているんじゃないでしょうか。
――日本のプロ野球に興味はありますか?
もちろんありますよ。日本で実際に観戦したこともあります。実はプロ入り前の2011年に日本の球団(※注:ソフトバンク)の入団テストを受けたんだけど、合格できませんでした。機会があれば絶対に日本に行って投げたい。台湾では日本のプロ野球を放送するチャンネルがないので、実際に見られる機会が少なくて残念だけど、見られるときには必ず見ています。11月にもアジアカップがありますが、世界大会ではいいプレーをしたいと強く思いますね。