南投県の信義郷は、山奥の秘境。東埔温泉はその秘境に隠れる秘湯なのです!
こんにちは、台北ナビです。東埔温泉の泉質は、関節炎、水虫、胃腸病、皮膚病、神経痛に効くという弱アルカリ性の炭酸泉。無色透明で水温は53℃。血圧を下げたり、心臓の負担を軽くするのにも効果があるため、「心臓之湯」とも呼ばれています。
また、ここの炭酸泉は二酸化炭素も含むため、肌に気泡が立つ天然のマッサージ作用もあるのです。別名「美人湯」気泡湯」とも呼ばれ、特に女性に大人気だそう。台湾中部の南投県でも、美人になれる湯に浸かることができるとは!驚きました。これは行かなきゃ~!
東埔温泉街
ブヌン(布農)族の村
やってきたのは、南投県信義郷。郷というのは、日本でいう郡のこと。信義郷は、台湾第2の大きさを誇る郷で、その面積は彰化県に匹敵します。また、台湾原住民の中でも、台湾の中央山脈の両側に住を構える典型的な高山民族のブヌン族が多く住む地方としても知られています。彼らは、信義郷の人和村や豊丘村、久美村、地利村、雙龍村、望美村、明徳村、東埔村、羅娜村に暮らし、阿里山に多いツォオ族も少数ながら住んでいます。
原住民社会は母系と父系に分かれていますが、ブヌンは長老制度による父系氏族の大家族社会で、村の政策決定は、各家族の長老たちが集まって取り決めます。民族意識が強く、民族固有言語を保っている数少ない原住民族でもあり、かつては独自の文字も持っていたという彼らは、現在台湾全土で5万人弱。5つの群に分かれ、花蓮や台東、高雄にも分布しています。
小さな温泉街
信義郷の奥まったところに位置する東埔温泉は、標高約1200m、八通越嶺古道の起点でもあり、玉山登山やトレッキングの人たちが体を癒す場所でもあります。温泉街は大きくはなく、20数軒の温泉ホテルや旅館、民宿がほぼ密集した通りがあります。宿泊するなら、この辺りが便利でしょう。ナビたちもその中の一つ「沙里山渡假飯店」に宿泊しました。信義郷内を縦断する道路は、水里から阿里山へ向かう新中部横貫公路の一部となっていて、水里から員林客運の路線バスが走っています。日本統治時代から親しまれてきたこの東埔温泉、温泉街の外れの住居内に、東埔温泉発祥の地がありました。
★哈比蘭明隧道
東埔温泉に入るときへの重要な入口として、哈比蘭明トンネルがあります。トンネルの周囲は林木に覆われ、入り込んだ人は必ず迷うと言われています。トンネルの内部にはブヌンの彩色がほどこされ、これは彼らの生命祭儀を表しています。ここを通るということは、ブヌン文化の豐富で多彩な世界へ入っていくということなのです。
梅の里
ナビたちは、10時50分、高鉄「台中」駅に到着。12時に南投県水里郷の「欣山園」で、食事をとりました。ここは梅の産地で、日本人も好む茶梅も台北より安く売られています。コーヒー味やパイナップル味など、試食して初めておいしいと感じた梅もありました。食事に出てきた梅ゼリーも美味でしたよ。
「欣山園」
住所:南投県水里郷中山路二段352号
電話:(049)277-0278
水里休閒農業区でDIY
車はさらに山中へ向かい、途中南投県で一番長い、全長225mの吊り橋「鵲橋」に到着しました。ここは、葡萄の産地でもあります。が、周囲を見渡すと茶畑やみかん、パパイヤも。ここでナビたちは梅の木で鉛筆を作るDIYをしました。仕上げに鉛筆を研ぐのですが、これが皆四苦八苦。梅の木って相当な硬さなんです。
住所:南投県水里郷槑休閒農業区
電話:(049)282-1011
南投県の農産物の名産は数多いのですが、シイタケもその一つ。ナビたちは上安香菇農場というシイタケ工場にも立ち寄り、あと3日で食べられるという苗を各自が箱詰めしました。すぐ食べられるサイズは、いい香りがし、とても大きくてきれいでしたよ。
梅の里で、ブヌンに触れる
「信義酒莊」に到着、ここには、梅酒の酒蔵フロアやブヌン族の歴史や文化を紹介したフロアがあります。「梅子夢工厰」という梅酒蔵を見学してから、ブヌン族の文化館に上がりました。ブヌンの家屋はパイワン族と同様、以前は石。また、昔は毎月のようにお祭りがあったのですが、中でも大切に引き継がれてきているのは、5月の「射耳祭」。動物の耳を狙って矢を放つこの儀式は、狩猟を得意とする彼らが一番熱くなる祭りだと言われています。ナビも機会があれば見に行きたいと思いました。ブヌンはかつて文字を持っていたのですが、ここでは使用されていた文字なども展示されています。隣の建物は、「梅子酒荘」のショップ。梅酒もあれば、梅のお菓子やジュース、梅味噌などなど梅づくし。梅好きにはたまりませんねえ。ナビたちは引き換え券で梅アイスをもらいました。甘酸っぱくてうまい!
「信義酒莊」
住所:南投県信義郷明徳村新開巷11号
電話:(049)279-1949
やっと到着~!!温泉街で晩ご飯
変わった料理名が並びます
やっと東埔温泉に到着し、山の料理が思う存分食せました。レストラン前の生簀では大きなニジマスが泳いでいるのですが、ここでは刺身でいただけます。歯ごたえがあって、おいしい!最高におすすめです。他にも鹿肉やイノシシ肉の煮込み物に、甘酸っぱい梅を混ぜて絶妙な味付けにしていたり、とにかく食材はすべて新鮮だし、十分満足できる夕食でした!また、食べに行きた~い。
「山之香」
住所:南投県信義郷東埔温泉75号
電話:(049)270-1141
2010南投東埔溫泉祭、始まる!
今回ナビたちが東埔温泉を訪れた最大の目的が、「東埔温泉祭」に参加することでした。お腹が満たされた後は会場まで歩いていきます。坂の上から大勢の人たちが集まっているのが見え、ちょうど「八部和音」が始まるところでした。
最初は地の底から響いてくるようでした
この「Pasibutbut」と言われる八部和音は、毎年11~12月、「小米(粟)の種まき祭り」の時に歌われる「豊作の祈り歌」のことです。最初男たちは円を作り、お互いの肩をしっかり組み、厳粛な表情を浮かべて顔を上に高くあげます。彼らは歌いながら、声を張り上げる度にステップを踏み、揺れ動きます。
歌はミツバチの群れが低くぶんぶん鳴っているような音を連想させる声から始まり、徐々に調子を上げていきます。その音は、ハーモニーの構造をくずさずにどんどん上昇していきます。低、中、高音はともに美しいバランスでお互いの音を補い、かぶさり、ふくらませ、どんどん周囲に広がっていきます。最後には歌い手達の声が合わさってパワフルな音を作り出します。歌は大きな祈りの声となって天に届き、それを聞いた天が感動して粟が良く育つようにしてくれるという話はブヌン族皆が信じ、そのため敬虔な心を持ちながら歌っているのです。
伴奏は一切なく、発声の瞬間から、ポーンと飛んででてくる美声。それが、世界中でただ一つのハーモニー方式をもつ「八部和音」で、素朴な感触ながらも、非常に複雑な和音で構成されているこの和音は、民俗学や音楽の起源に関する研究のフィールドにおいても注目を集めています。
ステージ上では、肩を組みあっていた男たちの後方に女たちもいて、女性の八部和音も重なり、すごい…。もともと虫の羽音や流れる滝の音、風に揺れる木々の葉づれの音などからイマジネーションを得て生まれたというこの歌ですが、精霊が宿るかのように美しく、目を閉じると、荘厳な大自然やブヌン族の日々の暮らしの風景が眼前に迫ってくるようです。円を解いてから男は前方に座り、女は後方に立ちました。見ると若いブヌンはいません。これは後で知ったのですが、「八部和音」は若い頃から歌い込んでいかないと、いい声が出せないのです。こうやって今ステージで歌っているのは、熟練した最高の声を持つ選ばれた長老者たちなのです。
この迫力に圧倒されました…
右側の人は、長老リーダー
真ん中に座り、皆をリードしています。 最後のクライマックスが近づくにつれ、女たちの体も左右に大きく揺れます
聞きながら徐々に、そして聞き終わった後も、鳥肌が立っていたナビでした。この感動は実際にこの場で、その歌声を聴いた人にしかわからないでしょう。その声は、まるで歌う者達を囲む山々のごとく、広大なスケールを見せつけてくれました。不思議なことに、涙もあふれてきそうでした。
さあ、歌が終わると、踊りの時間の始まりです。ブヌンの踊りは派手ではないのに、自然と関わる生活や結婚など実直な内容が見てすぐわかり、惹かれてしまいます。
ひと段落つくと、弓矢を持った人が矢を放ち、会場後方のはるか向こうに見える橋に当てました。その瞬間花火が数発上がり、「温泉祭り」は最高潮に突入!
矢を構えます
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橋に当たりました~
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収獲の踊り
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結婚式の踊り
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ブヌン族出身の歌手「王宏恩」が登場すると、会場は若い子たちの歓声でさらに盛り上がりました。トークも上手で、観客の中からかわいいブヌンの女の子をステージに連れて上がりました。一緒に来ていた友達たちからは、歓喜の嵐。会場では、老若男女皆が本当に楽しんでいて、この土地に住む人たちの結束力みたいなものを感じました。ダンスと歌は続いていますが、ナビたちは入口で米酒と焼いた猪肉をいただいて、いったん坂を登ります。
米酒もふるまわれました
最後の儀式に出発~!
坂を上ったところで、ナビと観光局の林さんだけ残り、残りの人たちはホテルに戻りました。ここで、かつて東埔國小の校長で、現在羅娜國小の校長である馬彼得さんにお会いしました。太鼓を抱えた子供たちを見つけて、いつ演奏するんですか?とナビが聞くと、短い言葉しか発していないのに、すぐ「日本人だね、音でわかるよ」と言われました。馬校長と話しはじめ、TVの大衆銀行のCMに出演していた子供の合唱団を作った人だというのを知りました。
馬校長の関連記事はここから。http://blog.jangmt.com/2010/05/blog-post_23.html
話していた時は、小学校の校長先生ということしかわからなかったんですが、林さんは何か感じたようで、ホテルに戻ってインターネットで調べて、素晴らしい教育者というのがわかった次第です。
出発~
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皆、浴衣にたいまつ
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すごくにぎやかなんです
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林さんと馬校長
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さて、お祭りの最終段階で、参加者は浴衣を着て松明を持ち、東埔國小まで街をねり歩いていきます。子供たちが打つ軽快なリズムの力強い太鼓の音、単調なリズムなのに聞いてて飽きません。馬校長や一緒に歩く子どもたちは体を揺らしながら、時折インディアンのような声を揚げます。誰かが発すると皆が続いて発するのです。この音は、残念ながら、文字では表現出来ません…。が、太鼓の響きにうまく同調し、気持ちをワクワクさせてくれました。
歩いているだけのナビも疲れてきました
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一番前で一番小柄で、一番頑張っていたボク
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もうすぐ終点、ガンバレ~!後方には大勢の人がいるんです
夜11時過ぎ、お祭りの行進は小学校に到着し、各自解散。感動的なお祭りの夜で、また来年もぜひこの時期に来たい!と思ったナビです。
2日目の朝の散歩で
東埔國小前
早朝、昨日馬校長に教えてもらった、日本統治時代の「東埔温泉」の発祥地まで歩いてみました。その時代は小学校の日本人の校長先生が住んでいたそうです。今は一般人の住居なので、中に入ることはできません。隣は「東埔警光山荘」、警察に勤める人たちのために作られた宿泊所ですが、民間人も泊まれます。そのまた隣は派出所、そして、「東埔國小」。学校前の弓矢の彫像がブヌンの子たちの学校であることを象徴しています。
ここが東埔温泉発祥の地!
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隣は「警光山荘」
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派出所が左に見えますか?
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東埔國小です
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彩虹瀑布へ
彩虹瀑布は、温泉街から往復約1時間半の距離にある滝で、東埔温泉エリアの東北方の山間に位置し、2層に分かれています。壯觀で、滝が流れる音は、雷のようにも響き、水量も豊富で終年涸れることはありません。陽光が差し込むと、滝の上に一筋の虹が渡っているように見えます。さて、最初は30人いたナビたち一行。最終的に滝まで到達したのは、うち10人でした。山道なのでかなりハードでしたが、お天気はよかったし、空気は最高。途中温泉の源泉地に寄ることもできました。滝に近づくにつれ、マイナスイオンを全身に浴びている感じがしました。皆さんも東埔温泉まで来たら、ぜひ歩いてみてください。特に早朝の散策がおすすめです。
水道管がすごい、村の人たちの水源でもあるのです
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最初の滝に到着!
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そして!どうです?ここまで、来る価値あり!
宿泊なら
ナビたちが宿泊した中堅ホテル。屋上には水着が必要ない露天風呂もあります。温泉だけなら200元。部屋のお風呂ももちろん温泉で、お肌にスベスベくるいいお湯でした。トレッキング姿の人たちをたくさん見かけました。
「沙里山渡假飯店」
住所:南投県信義郷東埔村開高巷74号
電話:(049)270-2988
温泉街でひときわ目立つ大型温泉ホテル「帝綸温泉飯店」を拝見。室内は明るく、快適そう。ナビたちが泊まったホテルより格段上でした…。
「帝綸温泉飯店」
住所:南投県信義郷東埔温泉86号
電話:(049)270-27891
ナビたちが宿泊したホテルのリゾートホテル版。コテージ風の部屋が42室、ホテル内の部屋が18室。どちらも素敵です。戸外SPAは低、中、高の温度別温泉。白いユーカリの樹木に山のリゾ-トを感じました。山小屋風の部屋は外にも温泉があります。窓も大きく、採光は十分。
「沙里山温泉渡假村」
住所:南投県信義郷東埔村開高巷136-2号
電話:(049)270-1289
昼食を済ませ帰路へ
肉まんの中にも梅が
東埔温泉の料理は、山菜、ニジマス、猪肉と選択肢は多くないですが、台北などから来ると、やはり普段食べたことのないものなので、どれもおいしく感じます。特に午前中の運動で、お腹がいい具合に空いたナビ。ガツガツ食べてしまいました。
「玉山楼」
住所:南投県信義郷東埔温泉69-2号
電話:(049)270-1063
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以上、台北ナビでした。