アン・リー監督が10歳から高校まで過ごした台南で、よく通った映画館!
こんにちは、台北ナビです。
今年第85回アカデミー監督賞を受賞したアン・リー。『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』は、11部門にノミネートされました。彼は台湾出身で、生まれは南部の屏東県ですが、10歳から高校までの多感な少年から青春時代を台南で過ごしました。映画を見ることが大好きだったアン・リー監督、この台南で、この「全美戯院」で見た当時の映画は、後の彼に大きな影響を与えました。
台南は、映画監督のアン・リーを始め、実業家で小説家の邱永漢、奇美博物館で有名な実業家の許文龍など傑出した人材を多く輩出しています。日本人にも知られている野球選手の王建民や郭泰源、郭泓志も台南の出身なんですよ。
アン・リーについて
アン・リー監督が、学生時代よくここで映画を見ていたよという新聞記事と張りぼて
アン・リーは、台南一の男子校台南一中を卒業後、新北市の台湾国立芸術大学で学び、その後1979年にアメリカへ留学、イリノイ大学とニューヨーク大学で映画制作を学びます。
1991年に台湾・アメリカ合作の「推手」で、監督デビュー。
その後は、ウェディング・バンケット (1993年) 、 恋人たちの食卓 (1994年)、いつか晴れた日に (1995年) 、アイス・ストーム (1997年) 、楽園をください (1999年)などの作品を発表。「ウェディング・バンケット」と「いつか晴れた日に」では、ベルリン映画祭金熊賞を受賞しました。
2000年の「グリーン・デスティニー」では、アカデミー外国語映画賞など4部門を受賞。2003年には、「ハルク」でハリウッドデビューを果たし、全米で1億ドルを超えるヒットを記録しましたが、一部では失敗作だったとの批評もありました。
2005年になって、「ブロークバック・マウンテン」で、アジア人初のアカデミー監督賞を受賞。2009年には、「ウッドストックがやってくる! 」を制作。
ここで、チケットを買っていたんですね
そして、2013年、「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」で、2度目のアカデミー監督賞を受賞しました。順風満帆に進んできたようなアン・リーの監督人生ですが、実は挫折と挑戦の繰り返しだったそうです。30歳を過ぎても芽が出ず、奥さんに養ってもらったり、父親の反対を押し切ってアメリカに渡ったけど、くじけそうになって相談したら、今度は叱咤激励されたり。台湾の人たちの熱い応援もアン・リー監督の心の支えになっています。この感動のスピーチは、今年のアカデミーの授賞式でも話されました。最近は、息子が俳優として活躍し始めましたが、こちらも注目したいところです。
また、第64回ヴェネツィア国際映画祭に出品した『ラスト、コーション』は、『ブロークバック・マウンテン』に引き続き、2度目の金獅子賞を獲得。2回も受賞した監督は、世界に4人だけ。このヴェネツィア国際映画祭は、台湾からはかつて候孝賢や蔡明亮も受賞しています。ちなみに日本では北野武の「HANA-BI」が最新で、その以前は、稲垣浩と黒澤明しかいません。
看板にご注目
「全美戯院」が台南を代表する映画館になった功労者としては、「手書きの看板」があります。
今年61歲の顏振發さんは、台湾で唯一最後の映画看板師と言われています。
昔は日本でもありましたね。最近は伝統が途絶えるのは忍びないと、若者たちからアプローチし、顔さんに週末クラスを設けてもらい、40人近くの若者が「映画看板師」の師事を仰いでいます。
映画館の起こり
売店にいた人が、呉マネージャーでした
全美戲院のマネージャー吳俊誠さん曰く
「民国59年(1970年)には、映画のチケットは6元だったんだよ、それで2本の映画を見ることができたんだよね。民国65年(1976年)になって、8元に値上がりしたんだ。でもやっぱり2本さ。」
そして、時代が変わり、今や2本で130元。でも!台北の内湖にある「美麗華影城」だと、310元、3Dだと380元で、しかも1本。なので、この安さは、何物にも代えがたい…。少し前の映画でも、これだけ大きいスクリーンで見られるのはうれしいですよね。
この日もらった記念品、映画の夢は、ここから始まった、と書いてあります
アン・リー監督は、当時全美戯院の常客だったそうで、彼曰く「『ローマの休日』が一番印象的だったよ。」とのこと。
さらに今年帰国して、久々に全美で映画を見た彼は、「昔よりだいぶ音響がよくなったね」とも。
全美戲院は、1FがA廰で339席もあります、2FはB廰。
AとB、1日4本見れば、260元ってことですね♪
入口入って目の前にあるお菓子やさんで、食べたいものを買って見ながら食べるというのも昔ながらのスタイル。売ってるものも「今」の映画館と全然違う、懐かしさと楽しさが残っています。椅子も現代的な布張りではないのですが、座り心地はよかったですよ。
この日のA 廰とB廰の2本立て
A廰は、タイのオカルト映画「凄厲人妻」(Pee Mak Phrakanong)と「玩命關頭6」(ワイルド・スピード6)。台湾では、海外の映画俳優の名を、音やその人の雰囲気で中国語に当てるため、発音してみて、やっとああ、あの人か!とわかるんですね。ジェイソン・ステイサムは傑森史塔森(Jason Statham)、そして、この映画のアクションには欠かせないヴィン・ディーゼル馮迪索(Vin Diese)とドウェイン・ジョンソン巨石強森(Dwayne Johnson)。ドウェインの巨石という文字は、音というより本人の雰囲気に合わせた感じです。看板を見ると、ポール・ウォーカー(Paul William Walker IV)も描かれています。さて、ポール・ウォーカーって中国語でどう書くんでしょう??
そして、B廰は、愛在午夜希臘時(Before Midnight)と「世界第一麥方」。「愛…」は、イーサン・ホーク伊森霍克(Ethan Hawke)とジュリー・デルピー茱莉蝶兒(Julie Delpy)の「Before Sunrise」、「Before Sunset」に続いて、制作されたシリーズ。もう1本の「世界第一麥方」は、パンの世界チャンピオンになった「呉寶春」がモデルになった台湾映画です。出演者は、李國毅、孟耿如、王彩樺、高盟傑、黃鐙輝、Darren、邱凱偉、馮凱、于美人、許效舜、黃仲崑、小林幸子、野上智寬、目代雄介、柯一正、瞿友寧、林正盛、吳寶春、陳撫洸。
なんと、主人公が修行中に出会う日本の“伝説の料理人”という役柄で、小林幸子さんが登場しています。吳寶春ご本人も登場してるんですね。
A廰もB廰も、映画のセレクションと2本の組み合わせがとっても個性的。
特別試写会
今日は、このチケットで
さて、この日ナビたちは、特別試写会を見ることができました。
特別なので、一般公開はしていないのが残念ですが、当日もし機会があればまたこういう試写会をしてほしいと言ったナビの要望、今後どうなるか?です。
「南に」が「に南」
その内容は、4,5年前に台南大学で発見したフィルムからなんですが、日本統治時代の日本が台湾をどのように紹介していたかという記録映画。
白黒で、解説も日本語で、日本語の文字は右から左へと読むようになっています。
発見した当初ほとんどが修復不可能な状態だったのを、何とか3分1を修復し、それをデジタル化したものが今回見た映画。解説口調は、テレビが始まった時のようなはっきりとした滑舌で、尺八などを使った民謡やその場面に合わせた音楽が流れるのも面白かったです。
王さんと柳さんの台湾旅行記ってタイトル
台湾の台北から、台南、高雄への観光紹介が終わった後は、台湾人俳優が演じる当時のコメディ映画の紹介。小柄な男性が占い師にあなたはあと何日しか生きられないと言われ、太っちょで大きな友達と人生最後に2人で出かけるというもの。各地で織りなすドタバタ劇が見もので、当時の台湾文化も見られました。声は聞けますが、映画の場面繋ぎが今のようにスムーズじゃないところが、ちょっとチャップリン映画みたいでしたね。
アメリカの空爆が来たときに、通知する機械もありました
昔の映画館に欠かせないのは、お菓子売り。
当時は各家庭とも子供が多かったので、子供たちが小遣い稼ぎで、箱を肩にかけ、映画館内を走り回っていたそうです。
今後は台南の観光ツアーにも組み込まれるという「全美戯院」。陽気な呉マネージャーの人柄もよく、次回は上映中の映画を見る目的で、また来たいと思ったナビです。