都会を飛び出してのびのびと魅力を感じてきました~
こんにちは、台北ナビです。
台湾南部の嘉義県は名峰・阿里山が聳える自然豊かな場所として日本人にも有名なスポット。森林鉄道に乗って阿里山登山を楽しんだり、嘉義市内を探索したことのある人は多いと思いますが、そのほかの場所だって魅力がたっぷりなんです!
今回は阿里山の中腹にある梅山郷と田園地帯である大林鎮を訪問して、スロートリップを楽しんできました!
阿里山森林鉄道の秘境駅で森林浴
まずやってきたのは、梅山郷にある阿里山森林鉄道の「梨園寮」駅。高鉄「嘉義」駅からは車で1時間30分の場所にあります。嘉義駅から31.4kmの地点にあり海抜は904m。無人駅でいわゆる秘境駅なのですが、なぜこの駅を訪れたかというと、阿里山鉄道の中でも指折りの美しい無人駅として知られているんです。
今でこそ無人駅になっていて、乗客が手を挙げない限り、列車は減速するものの停車はせず通過してしまうのですが、かつては周辺住民の通学や行商に利用され、賑わっていたそう。
一番美しい時期は毎年2~3月の桜のシーズン。秋から冬にかけても常緑樹がいきいきと緑の葉っぱをつけているので、それもまた風情があります。
阿里山ならではのヘルシー高山野菜料理に舌鼓!
駅の近くにある「華姐野菜舖子」で昼食です。ここではお店の裏手にある畑で採れた高山野菜をメインにしたヘルシー料理で有名です。都市部ではなかなか出回らない食材も多いので、ぜひ挑戦してみてください。
特筆すべきはこのお店のスタイル。外観は至って普通の農家で、しかもトタン屋根がある超開放的な庭先で食べるんです。かなりディープですが大自然を全身に感じながら食べる山の幸の味は格別!
そして日本人の方なら大部分の方がビックリしてしまうだろうと思うのが、こんがり揚がったハト。中国やフランスではごく一般的な食材ですが、台湾の山間部でも比較的食べられる食材です。
少し硬いのですが鶏肉と似た味がします。皮がカリカリになったフライドチキンが好きな方は抵抗なく食べられるはずです。香ばしいのでビールに合わせたら恰好のおつまみになりそう。ぜひみなさんも試してみては!?
華姐野菜舖子
嘉義縣梅山鄉太興村溪頭9號
(0912)752-391https://www.facebook.com/iamherehuajie/
大自然を見ながらお茶を飲むのはいかが?
続いてやってきたのは華姐野菜埔子から歩いて5分の場所にある「山野炊煙生活茶空間」。仕事を退職した詹豐成さんと奥さんの2人が、約10年前から何もなかった場所を切り開き茶室として整備した場所です。
手作り感満載の空間ですが、居心地の良さを追及し、一度席に着いたら帰りたくないと思わせる場所なんです。暑い日には冷たいコーヒーや水出し茶を。少し肌寒い日には、ホットで体を温めて……。優雅なひとときが過ごせます。
ナビのお薦めは、石の浴槽を使ったスペース。座るというよりも寝転がる姿勢で目前に広がる大パノラマを見ながらお茶が飲めます。椅子と違い、体の半分が浴槽の中に隠れ、背もたれにしっかりと体を預けることができるので、高いプライベート空間が保てて、とっても安心感があります。
気持ちよくて、ついついそのままお昼寝してしまいそう。日頃の悩みも疲れも吹き飛んでしまうかも。
時間を忘れてウトウトしていたその時、奥さんが大きな声を上げました。「アマサギが飛び立ったわよ。14時だから時間通りね」。
阿里山周辺はこのアマサギの生息地帯にあたるのですが、この地では毎日14時になると上昇気流が強まり、その上昇気流に乗ってアマサギが飛び立つんだとか。何度もなんども旋回しながら高度を上げるその姿は、優雅ささえ感じられました。こういった動物の生態も見られるはやはり自然多い阿里山ならではですね。
山野炊煙生活茶空間
(0972)279-220
阿里山というと、森林鉄道に乗って登山道を歩いて神木を見に行くというちょっと心の準備が必要な行程を思い浮かべる人が多いと思いますが、実はいたるところに親山歩道と呼ばれる比較的難易度の低い歩道が設置されていて、気軽に自然と触れ合えます。
海抜850メートル地点にある全長650メートルの「太興岩歩道」もその一つ。茶畑が広がる場所では山岳地帯の絶景が見渡せるほか、手付かずの自然が残る森の部分では南国だけあって、日本の山岳地帯では見られないスケールが大きな植物が出迎えてくれます。
また、「野薑花溪步道」では、その名の通り、毎年夏になると白に薄い黄色が混じった自生のジンジャーの花が咲き乱れ、あたり一面に甘い香りを漂わせ、訪れる人を楽しませます。
日頃の運動不足解消にもなりますし、台湾の動植物への認識を深めることになるので、ぜひ歩いてみたいものです。
歩道を歩いたらお腹が空いたので阿里山で食事をしましょう。これまでにもナビで何度もご紹介したことのある「茶壷餐廳」にお邪魔します。
阿里山の交通事情が悪かった頃、多くの行楽客や登山客がここで足を休めたという由緒正しき老舗で、地元阿里山を中心にした嘉義産の食材をふんだんに使った料理が自慢です。
梅の蜜漬けやドライフルーツ、特製唐辛子ソースなどオリジナルの商品も扱っているのでお土産にしてもいいかも。
茶壺餐廳
嘉義縣梅山鄉瑞里村100-6號
(05)250-1806
きょうは阿里山で一泊します。やってきたのは「夜宿瑞里:野薑花民宿」。さきほどご紹介した野薑花溪歩道からすぐの場所にある木造建物が目印の民宿です。
客室も木材がふんだんに使われ、ぬくもりを存分に感じられる空間です。かといって古臭さは全く感じずにお洒落で清潔。特に水周りもしっかりとしているので、衛生面が気になる方でも安心です。
因みに一番近いコンビニへは車で30分。決して便利な場所とはいえませんが、台湾の田舎の暮らしを味わうのも大切ではないでしょうか。木のぬくもりを感じながら、虫の声を聞きながら、お茶を飲みつつまったりと過ごす夜はいいものです。
夜宿瑞里野薑花民宿
(05)250-1095 http://www.ruili.tw/
日本と深いつながりを持つ「上林集落」で絞り染め体験!
さて、2日目は阿里山から下山して、大林鎮にある上林集落にやってきました。実はこの地は、戦後の日本と深いかかわりがある集落なんです。
日本統治時代からサトウキビ栽培が盛んだった上林集落。ただ、戦後間もない時期は働けども働けども、貧困から抜け出すことはできなかったそう。そんな時に舞い込んだのが、当時アメリカ統治下にあった沖縄県南大東島への出稼ぎの話でした。
敗戦で台湾を失った日本にとって、砂糖の確保は重要課題。南大東島では砂糖の増産が急務となりました。しかし、日本の農家はサトウキビ栽培に不慣れ。そういった経緯で台湾の農民に白羽の矢が立ったんです。経験豊富な台湾からの出稼ぎ農民はとても重宝されたんだとか。しかも日本の物価で給料が支払われることから、貧しい台湾の農家にとっても非常に魅力的な仕事だったそうですよ。
ただ、出稼ぎに出かけたのは大半が女性。言葉や文化の違う場所で、家族を置いての仕事は想像以上に過酷だったそうです。
集落では、この時代の出来事を語り継いで、近年台湾で増える外国人労働者が置かれている環境や、社会問題をみつめるきっかけになればと考えているんです。
出稼ぎから帰ってきた人は、日本の果物や医薬品を持ち帰ってきて、家族に分け与えたそう
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パスポートのコピーもありました。米国占領下の沖縄に行くとあってビザ手続きも複雑だったようです
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さて、今では黃梔子と呼ばれる「クチナシ」の栽培が盛んな上林集落では、「絞り染め」体験ができます。
日本でもお馴染みのクチナシですが、沢庵の黄色はこれからできる染料で染められているってご存知でしたか?染め上がりは鮮やかな黄色になるばかりでなく、天然の着色料なので体や環境にも優しいんです。
絞り染めのやり方は至って簡単。ビー玉や木の棒を布で包んで輪ゴムでしっかりきつく縛ります。どんな仕上がりになるのか全く分からないですが、あれこれ想像を張り巡らせるのはとても楽しいもの。
思い思いに縛り終えたら……
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煮えたぎるお鍋の中にドボン!約20分煮込みます
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出来上がりをまっている間には、やはりクチナシで着色した「粉粿」をトッピングしたかき氷で小休憩です。「粉粿」とは、キャッサバの粉を固めたゼリーのようなもので、豆花やかき氷の上のトッピングで見たことのある人もいるのでは?黒糖で色をつけるタピオカよりも柔らかくてプルプルした食感が楽しめます。
写真映えしそうなマンゴーやパンナコッタは乗っていませんが、懐かしい味わい。これぞありのままの台湾!
かき氷機で氷を砕いて
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粉粿を好きなだけ乗せちゃいましょう
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シロップをかけたら出来上がり
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炒った小麦粉の「麵茶」を振りかけると風味UP
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食べ終わった頃にはちょうど絞り染めが出来上がっていました。布を縛っていた輪ゴムを丁寧に外して、乾かせば完成!お土産になるし、とっても気軽にできるので小さい子供がいる家族旅行にはピッタリかもしれませんよ~。
滋養強壮に効く絶品のチキン漢方スープを味わおう
ニワトリまるごと1匹が入った豪快スープ
お昼は大林鎮にあるレストラン「秀花大林狗尾雞王」でいただきます。こちらの名物は「狗尾雞」と呼ばれるエノコログサをはじめとした漢方とニワトリ1匹を大胆に煮込んだスープ。咳を止め、利尿作用があり、胃腸の働きをよくしたりと滋養強壮に効果があるとされています。
漢方独特の臭みがあるのですが、ご安心を。自家製の「豆腐乳」をつけて鶏肉を食べると、臭みが消えてまろやかになって食べやすくなります。
そのほかのメニューも嘉義産食材を使っていて美味!次から次へと箸が進みました。
エビは大きくてぷりぷり。食べ応えがありました
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嘉義は牡蠣の産地でもあります。カキフライは香ばしくてジューシー!
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ノスタルジックな大林の古い町並みを歩いてタイムトラベル
お散歩の起点は大林駅から
お腹がいっぱいになったら大林の町を散歩します。大林鎮は今でこそ鄙びた農村といった趣なのですが、かつては製糖業が盛んだったほか、軍の基地があったことで多くの人で賑わっていたんだとか。かつての繁栄は過去のものになってしまいましたが、歴史の移り変わりを知ることができます。
日本的な情緒は少ないのですが、過度にレトロさをアピールするのではなく、飾らない自然な古さが地方都市ならではのノスタルジックの雰囲気を醸し出しています。
こぢんまりとした駅前
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古い建物を発見。瓦が日本でよく見かけるものと違うのが分かりますか?台湾の古い民家によく見られる形だそう
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もう何年も人が住んでいないであろう民家。でも味があります
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結婚式や宴会が開かれた高級レストランもすでにもぬけの殻
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そんななか、「泰成中藥行」は、この大林で古くから営まれている漢方薬屋さん。普段我々が服用する漢方薬はすでに粉末になっていることが多いですが、こちらでは展示のためにそのままの状態でならべられていて、さながら標本館の様相。動物や昆虫を原料としているものはちょっとグロテスク。でも、自然界の存在するもので体の状態をよくするという漢方の基礎が理解できます。良薬は口に苦しとはよく言ったもので、見ているだけでも苦そうだと思えてしまう漢方薬の世界の奥深さが分かりますね。
最近ではかつてほど漢方薬を飲む人が少なくなってしまいましたが、漢方薬の歴史や大林の生活を伝えようと、お店の隣に資料館である「泰成中藥文物館」を開いています。
精製や調合のために必要な道具は、理科の実験室にありそうなものばかりで、意外と親しみがわきます。ちょっと漢方薬に挑戦したくなるかもしれません。
日本統治時代に建設された建物も残っています。特筆すべきなのは、大林のこれらの建物は、道路に面した部分が台湾らしいごく普通の平屋で、中庭を挟んだその奥が日本統治時代を感じさせるレトロなデザインになっているということ。台北などそのほかの都市で見る日本統治時代の建物のデザインとは少し異なっています。
最近まで修復作業が行われていたので、今は懐かしさを感じさせる文物を集めた資料館になっていますが、今後かき氷屋さんをオープンさせる計画があるんだとか。楽しみです。
かつて大林が賑わっていた時代に、市民の娯楽として大人気だった映画館の建物も保存されています。
「萬國戲院」は、2019年に台湾で大ヒットした国産映画「返校」のロケ地にもなり、今イチ押しのスポット。
台湾ではごく最近まで映画上映前には全員起立した上で中華民国国歌が流れていたのですが、娯楽施設である一方で、国民教育の場であったこともわかります。
今でも時折映画上映イベントが開かれていて、その際には駄菓子を売る売店も営業。懐かしさを存分に味わえる場所です。
予想を裏切る楽しさ 「卡羅爾銅管樂器觀光工廠」で管楽器の製造ラインを見学!
最後に訪れたのは大林のハイテク工業地帯にある金管楽器工場「卡羅爾銅管樂器(キャロルブラス)觀光工廠」。実は、台湾で作られている楽器は世界的に高い評価を受けていて、世界中に輸出されているんです。
因みに、嘉義市は毎年「国際管弦楽フェスティバル」を開催していて、音楽との造詣が深かったりもします。
「キャロルブラス」は1989年の創立以降、トランペットやコルネット、トロンボーンなどの楽器を皮切りに、世界に通用する楽器を製造。有名メーカーへ楽器本体やパーツの供給も行っています。担当者によると、日本の自衛隊音楽隊への納入実績もあるんだとか。不勉強のナビ、全く知りませんでしたが、こんなところにも台湾と日本のつながりがあったんですね。
楽器を見学するだけじゃありません。実際に金管楽器を吹いてみるミニミニ演奏教室もあります。口を横一文字にして唇からブブブブブと息を吹き出すわけですが、原理が分かったとしても実際に音を出すのは本当に難しいです。
1時間もレッスンすれば最低限の音階を奏でるまで成長できるようですが、ナビは頬の筋肉と腹筋が筋肉痛のような痛みに見舞われたため早々と断念。マーチングしながら演奏する人たちの凄さを身を持って体験しました。
卡羅爾銅管樂器觀光工廠
嘉義縣大林鎮大埔美園區二十路3號
(05)295-3688
http://www.carolbrasstourismfactory.com/
台北や台南、高雄とは違った魅力がたくさんある嘉義。自然や歴史文化だけでなく、豊富な食文化やハイテク技術にも触れられる充実した旅が楽しめます。台北からなら台湾高鉄に乗って約1時間30分~2時間で到着するので、想像よりも近いと感じられるはず。次の台湾旅行では嘉義にお越しください。
以上、台北ナビがお伝えしました。
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2019-11-22