「2013戦地秘境遊程」メディアツアーに参加してきました
こんにちは、台北ナビです。
飛行機に乗って約1時間で到着する金門。たった1時間なのに台湾本島とは全く違う景色や文化が残る離島です。今回は、命がけで台湾本島を守り抜いた金門の「戦地」を感じることができる秘境を見て回りました。
アモイから約2キロ。地理的条件から軍事的な働きを担ってきた金門
1949年以降、金門では「古寧頭戦役」「八二三砲戦」など、台湾海峡を挟んで中国大陸との戦いがあり、拭い去ることのできない歴史の痕跡と戦いの爪痕を残しました。
国共内戦で劣勢となった蒋介石率いる国民党政府が台湾に部隊を撤退し始め、1949年10月1日には毛沢東が北京にて中華人民共和国建国を宣言。中国人民解放軍(中国)は西へ西へと権力を拡大し、福建省対岸に位置する金門に駐屯している国民党軍(台湾)から金門を奪うため、1949年10月25日から3日間「古寧頭戦役」と呼ばれる戦闘が繰り広げられました。
この激戦は国民党の勝利となりましたが、翌年から中国大陸と台湾の間で軍事的緊張が高まり、砲撃戦も少なくありませんでした。1958年8月23日に中国人民解放軍(中国)が砲撃を開始し、1カ月にも及ぶ実質的な戦いが行われた結果、中華民国軍(台湾)が金門を死守。その後1979年になるまで建前上の砲撃が定期的に行われていました。この頃は台湾本島の観光客は金門に足を踏み入れることすらできませんでしたが、今では台湾本島はもちろん、中国大陸からの観光客や外国人も観光に訪れることができ、中国大陸と台湾を結ぶ場所として注目されています。
台湾男子共通の話題「兵役」
金門や馬祖に行くと必ずと言っていいほど耳に入るのが「どこで兵役についていたの?」という台湾男子の会話。初対面の台湾男性でも兵役の話題になると途端に話がはずみます。1949年12月28日から始まった兵役ですが、昔は兵役年数も長く厳しいものだったそうです。
今では兵役は1年、内容も緩和されたと聞きますが、いまどきの若者にとってはつらいもの。年代や兵役場所が違ってもあの日々を共有し合える仲間と話しているかのように話してしまうのでしょう。その中に金門や馬祖で兵役についたという者がいたら、話の食いつきもより一層すごいことになります。こうなるとおしゃべり好きの台湾女性もお手上げ。「また話しているわ。兵役のことを話しだすと止まらないのよ…」と冗談で言いながら、優しい目で見守っています。日本で生まれ育ったナビにはわからない感覚ですが、台湾の方々にとって兵役というものは生活に息づくものなんだと思います。
2013年10月4日~11月30日限定の一般開放!
台湾人にとっても秘島である金門には、観光客へ公開していないスポットもまだまだ多いのですが、2013年10月4日~11月30日の期間中、火・木・日曜日限定で「光華園」「金東戲院」「擎天水廠」「柳営業歩兵軍事體驗園区」を一般開放しています。というのもこの期間中は「2013金門戰地觀光藝術季」が開催されており、その一環として特別開放されます。上記の4つのスポットと「老兵故事館」でスタンプを集めるスタンプラリーも開催されていますので、戦地金門を体感しつつプレゼントももらっちゃいましょう。
また、スタンプラリー以外にも坑道の反響音を利用してクラシック音楽の生演奏を楽しむなど独自のイベントが盛りだくさん!この時期に金門を訪れる方は金門の公式サイトからイベントスケジュールを確認してから予定を組まれることをオススメします。
スタンプラリーポイント:「光華園」「金東戲院」「擎天水廠」「柳営業歩兵軍事體驗園区」「老兵故事館」
スタンプラリーカード受け取り場所:「柳営業歩兵軍事體驗園区」
プレゼント引き換え場所:「老兵故事館」
開放時間:
「柳営業歩兵軍事體驗園区」09:00~12:00
「光華園」「金東戲院」「擎天水廠」「老兵故事館」14:00~17:00
スタンプラリーに参加される方は下記の①~⑤の順序どおりに移動されるとスムーズに移動できます。移動はバスでも可能ですが、金門観光局の方はレンタカー使用を強く勧めてらっしゃいました。
今回はこのイベントを紹介するメディア取材にナビも参加させていただき、スポットを巡ってきました!
①ゲーム感覚で軍事体験ができる「柳営業歩兵軍事體驗園区」
金湖鎮尚義村郊にある「柳営業歩兵軍事體驗園区」は敷地約13ヘクタールの大きさを誇ります。元々は基地として使われていたのですが、今では軍事体験をバーチャルで楽しむことができる場所として生まれ変わりました。「軍人武徳」と書かれた入口から入ると右手に武器が展示されています。かなり近くで見ることができますよ。
武器に夢中になっていたのですが、ふと下を見るとコンクリートの細い道が2本伸びていることに気が付きました。これはコンクリートが貴重だった時代、車が通る道としてタイヤの幅だけコンクリートを流して作られたために、こんな風になったんだとか。
トラベルインフォメーションセンターでスタンプラリーのカードをもらい、射撃訓練館へ向かった一行。ここでは射撃の練習ができます。パソコンのスクリーンに向かってバーチャル的に射撃練習をするので、ちょっと物足りないと感じているナビを横目に、台湾メディアのみなさんは点数を競い合いながらワイワイ楽しんでいました。その後奥へ行くと別の迷彩柄の建物が見えてきます。ここでは「雷射迷宮館(レーザー迷宮館)」と「室内攀爬場(室内ロッククライミング)」を楽しむことができます。
雷射迷宮館はレーザーをよけながら出口に向かうというもので、難易度を上げると地べたを這いつくばったりしなければレーザーに当たってしまうくらいの難しさです。ナビは映画「エントラップメント」を思いだしてしまいましたよ。室内攀爬場は強力磁石を用いるロッククライミングが体験できるということで、さながらスパイダーマンのよう。あれ?ここは台湾の戦地を味わえると聞いていたのに、なぜだかハリウッド映画を体験できる場所になっているような…。その奥には「槍擊訓練館」があり、レーザー銃で戦うゲームを楽しめます。入口からは想像できないくらい現代的なゲームがいっぱい!午前中のみの開放ですので、興味のある方は午前中に訪れてくださいね。
柳営業歩兵軍事體驗園区
金門県環島南路三段(尚義村から成功方向への道上にあります。大きな門があるのですぐわかります)
開放:
10/4~11/30の火・木・日
9:00~12:00(11:30までに入場してください)
電話:082-324-174
迷彩柄の建物
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スクリーンに向かって…
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発射!
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射撃訓練館 |
この入口から入ります
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レーザー光に当たったら減点!
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上級編になるとこんな風に匍匐前進しなければいけないんです
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雷射迷宮館(レーザー迷宮館) |
若い男性も…
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マラソンで鍛えている彼女も…
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年配の方も…
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みんなでスパイダーマン体験!汗だくになっていました 室内攀爬場(室内ロッククライミング) |
やるき充分☆
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いざ開始!
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いろんなところからレーザー光線が飛んできます
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槍擊訓練館 |
②風船は戦争をとめる?「光華園」
入口
戦争と言えば爆撃などを想像しますが、金門と中国大陸は距離も近いため心理戦も繰り広げられました。心理戦として一番に思い浮かぶのはテレサ・テンでしょう。中国大陸に向けてテレサの歌やメッセージを大音量で流し、敵軍などの士気を低下させていたのは有名です。ナビが訪れた「光華園」は1969年に作られ、主に風船を中国大陸へ飛ばし、心理作戦を行っていました。うん?風船??そうなんです。この風船に中国大陸へのメッセージや物資、テレサのテープなどがつけられて飛ばされていたんです。台湾から始められたこの取り組みですが、後に中国大陸からもメッセージが飛ばされるようになりました。風の影響を受けるため風船を飛ばすことができたのは4~11月に集中し、相手からの攻撃を回避するため夜の11時~翌朝6時に放たれました。
飛ばされる風船は小さいものから最大400ポンド(約180Kg)の物資を搭載できる大きさのものまであり、最大の風船を用いれば2万部のメッセージを一気に運ぶことができたそうです。大きな風船だと高度20,000~25,000㎞、飛行速度は30~100㎞/hという速さで飛んでいったんですよ!最近台湾本土では熱気球が流行っているけど、「光華園」は流行を先取りしていたねと解説員の方は茶目っ気たっぷりに語ってくださいました。
ここから風船が飛ばされていました
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高梁のミニミニ甕も!
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入口入って右手にあります
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足元には充分御注意を!
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機械はまだ残されていました
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気球充気機房 |
「光華園」は大きく2つに分けられ、一般的に下廠(下工場)と呼ばれる長さ150メートル、幅6.2メートルの坑道では、風船を作るための空気を貯蔵したりしていました。現在では光華酒窖(光華酒蔵)として1000㎏を貯蔵できる甕が最大1216個保管することができ、120万強リットルが貯蔵できる酒蔵として再利用されています。温度や湿度が一定なため熟成速度が速いと言われる坑道では、入口に立つだけで酔っ払ってきそうになるほど高粱酒の香りが充満しています。もうひとつは上廠(上工場)と呼ばれ、地上にあり、風船を飛ばしたり、官舎や仕事場をして使用されていました。もちろん、この上下廠は地下坑道でつながっていて、人はもちろん空気の運送もパイプを通じて行われていました。今は心理戦の資料館として利用されています。
光華園
金湖中学校と中正公園の近く
開放:
10/4~11/30の火・木・日
14:00~17:00
電話:08-232-4174
資料館
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中には写真と文字でわかりやすく心理戦についての説明があります
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戦地となった金門において娯楽施設といえば映画館しかないと言われています。金門の中でもっとも早くに栄えたのがこの金東電影院です。金門らしく軍人さんはチケットが安く、チケットが買えないちびっこは軍人さんと一緒に中に入らせてもらっていたそうです。開演時間は14:00、17:30、19:30と決まっていましたが、射的場がある碧山の近くにある金東電影院では映画を見に来る民衆が弾に当たってしまいケガをしたことがあるそうで、射的練習がある日は開演を遅らすという決まりがあったんだとか。館内は出来る限り当時の状態で保存されています。こんなに完全な状態で保存されている映画館はそうそうないそうですよ。また、台湾本土では1960年以降になってからはじめてアメリカ映画を見ることができるようになりましたが、実は金門ではメトロ・ゴールドウィン・メイヤーや20世紀フォックスなどが製作した映画を見ることができたそうです。当時は字幕などもなかったので意味がわからないながらもアメリカ映画を楽しんで見ていたんだとか。
金東電影院(金東戲院)
金門県金沙鎮光前里陽翟
開放:
10/4~11/30の火・木・日
14:00~17:00
電話:08-232-4174
チケット代や放映時間は手書き
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当時のままを保存しています
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白のペンキで書かれた座席番号が渋い!
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座り心地はそれほどよくなさそう…
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金東電影院の向かい側には昔の趣きをそのまま残した通りがあります。ここで映画の撮影などもできるんじゃないかなぁとナビは勝手に想像してしまいました。看板の文字は右からはじまっていたり、イラストもかわいらしい!写真を撮り甲斐があるので、カメラッ子は映画館を訪れたついでに寄ってみてくださいね。