人気映画監督・吳念真が案内するひと味違った『水金九』
こんにちは、台北ナビです。日本人にも大人気の九份、黄金博物館で有名な金瓜石、名前も聞いたことがなかった水湳洞。この3つの観光スポットを合わせて『水金九』。新北市が「驚艶水金九(驚くほど美しい水金九)」と謳い、今観光に最も力を入れているスポットなのです。今回、台湾の人気映画監督である吳念真が『水金九』を紹介してくれる!というメディアツアーに参加してきました。
吳念真監督って?
吳念真監督は台湾で生活をしたことがある人なら必ず知っている!と言っても過言ではないくらいの有名人。
ナビは黒人歯磨き粉のCMで知りました。他にも「維大力」清涼飲料などなど、台湾語のCMでとても親しみがもてるあの方です。そんな監督の出身地が瑞芳エリア。そう、まさしく『水金九』エリアなのです。監督は脚本家として数多くの作品を世に送り出してきました。侯孝賢監督による「悲情城市」では、朱天文とともに脚本を担当。また、みずから監督となって撮影した「多桑(父さん)」は、自分の実体験を元に描いたストーリーで、数々の賞を獲得しました。そんな地元の事を熟知した吳念真監督が案内する『水金九』は今まで観光客が知らなかった新たな魅力が詰まった場所ばかり。ナビはもちろん、数多くのメディアが参加し、にぎやかな一日となりました。
みんな監督と写真を撮ってもらって大興奮! もちろんナビも♪
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平日でも人の多い九份ですが、いつも以上に人・人・人
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リニューアルオープンした昇平戲院
今回のツアーの目的のひとつでもある「昇平戲院」。九戸茶語のすぐとなりにあります。昇平戲院は1986年にその歴史に一旦幕を下ろしましたが、その後「驚艶水金九」計画の一部として2011年9月16日に改装リニューアルを記念し、開幕式が行われました。この際監督も開幕式に参加し、幼い頃の思い出を語り、「辯士」に扮しました。「辯士」とは映画に音声が入っていなかった時代、アニメのアフレコの様にセリフを言い、解説が必要な個所には解説を!館内アナウンスも辯士が行っていたんだとか。日本統治時代には試験に合格したものだけが「辯士」になれ、スーツを着て舞台袖に上がり、ひとりで何人もの主人公の声を表現しなければならなかったそうです。
監督は60歳にしてまた訪れることができるなんて思いもしなかった…と感慨深く語られました。当時は600席の会場に1500人がギューギュー詰めになって見ていたそうです。「昇平戲院」の館内では土日の午後には無料で、「無言的山丘」「多桑」「戀戀風塵」などの水金九を舞台にして作られた映画を放映するそうです。九份の歴史を見つめ続けてきた「昇平戲院」で水金九の映画を鑑賞する、趣深いですね。
知られざる九份の魅力
九份と言えば豎崎路の提灯が一番の見どころですが、何気なく通っていた場所にも魅力が!監督がオススメするのは輕便路。商売気があまりないけれど、ひっそりとアート感をかもしだしているお店が多くあります。しかも、昔の様子もしっかりと残されているんです。
まずナビ達を案内してくれたのは「古窗」。昇平戲院から歩いてわずか5分ほどにあります。古びた外観からひっそりと見える石造り。ここは炭鉱で栄えていた時代の主要な駅だったそうで、その頃の様子を大事に残しています。歴史は感じますが、きれいに保たれており、雰囲気抜群です。そしてこのお店のテラスは270度のパノラマ景色が堪能できます。もっと早くに知っておけば良かった!!昔は漁業がもっと栄えていたため、夜になると漁船の灯りがとてもキレイだったのだとか…。
店名:古窗
住所:輕便路294号
電話:(02)2406-2289
FAX :(02)2496-5645
営業:平日9:00~24:00 休日9:00~翌朝3:00
この景色を一人占め~~!
素敵写真はここで!
水金九各所にガイドサービスが!
さて、ブラブラ歩いて行きましょう。左右に味のあるお店が並んでいます。陶芸品や民宿、理髪店等々…。新北市はこういったお店の良さを知ってもらおうとブルートゥースやQRコードで各店舗の情報を発信!写真好きのナビはかわいい写真が撮影できるこの道を気に入ってしまいました。お店の壁に描かれている絵はこの街並みに馴染んでいて◎。この絵を見てお店の中を覗きたくなったお店もありましたよ~。
また、奥へ歩いて行くと何軒か見かけた黒い屋根の家。これは屋根に特殊な脂を塗っていて防水をしているそうで、雨がよく降る九份ならではですね!これは1年に1回塗り替えているのですが、もっぱら男性の仕事!雨の少ない冬に行う家が多いそうです。でも、この黒い屋根の家も最近少なくなっているんだとか…。
輕便路の家は海に面しているため、窓からも海がキレイに見えたそうです。監督はここに住んでいた友人に、「家自体は飾りたてて豪華なことはないけれど、トイレですら景色が素晴らしい!トイレから出ていきたくないほどだよ!」と言ってしまったほどだとか。そんな家に住めたらいいのになぁ…。民家に入ることはできませんが、輕便路を歩いて行くと展望台があり、そこからトイレから見えていたのであろう景色が見られます。ここは観光客にもあまり知られていないので、人も少なく海との写真も撮りやすい!!
少し遠いけど、でも緑と海が溶けあういい景色♪
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左を見れば段々になった家が一望できます
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楽しい語り口で思い出を語ってくださる監督
次は「ごばん~」という声が聞こえてきてビックリ。今でも土地の人には「ごばん」と呼ばれているそうです。お父さんが金鉱の鉱夫だった監督。小さい頃一番怖かったのは緊急サイレンが鳴り、「○番坑道で事故がありました」という放送だと言います。坑道の中は、冬は温かく夏は涼しく、かなり深くまで掘られていたそうで、お母さんに頼まれてスープをお父さんへ届けに行った時、200メートルくらいまでは楽しいんだけど、300メートルくらいに達したら何だか怖くなってしまったと笑いながら話してくださいました。地質学者の話では、この辺の山は一見したところ何の問題もないように見えますが、内部はほとんど坑道が掘られていて、少し危険だと言われています。
また、金鉱は炭鉱と違い、金脈に従い手押し車が入る程度の大きさで十分だそうで、九份にある坑道はこの五番坑のように小さなものが多いのだとか。
金瓜石は黄金博物館を見るだけ?
日本統治時代の様子を知ることのできる「黄金博物館」。小豚と大Sが主演のドラマ「轉角*遇到愛」のロケ地としても有名ですね。金瓜石と言えばこの広大な博物館というよりは一大テーマパークのような広さを誇るここが有名。ここを歩いて帰るだけ?それではちょっともったいないよ~とは監督の言葉。さて、どこに魅力が隠れているのでしょうか・・・。
当時の面影を残す老街
九份はにぎやかな街だと語る監督。老街の良さは当時の様子を感じられるここ「祈堂老街」だとのこと。黄金博物館左手の細い階段を下って行くとあるのですが、老街に辿りつく前に日本統治時代の面影が残る階段も味があります。まず、排出溝。道に垂直に取りつけられたレンガがそうなのですが、美しくかつ機能的に作られた溝に、台湾人の記者は感嘆の声をあげていました。また、この階段、段差がとても低いのです。これはきっと着物を着る日本人女性が歩きやすいようにこの段差にしたんだろうと監督は言っていましたが、果たして真偽のほどは…。今となってはわからないそうです。でも、段差が低く、一段一段の面積が大きいので歩きやすいのは確かですね!
段差の低い階段って歩きにくいこともありますが、この階段は歩き易い!
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雰囲気があります
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祈堂老街に到着しました。九份とは違い静かで雰囲気のある老街。昔にタイムスリップしたかのような錯覚に陥ります。それほど大きくないのですが、ゆっくりとしたテンポで歩いて見て回りたい場所です。
新北市の作った水金九のプロモーションビデオにも登場したお店をご紹介したいと思います。オーナーはほぼ台湾語を話していてナビには何を言っているのかわからなかったのですが、学校が終わったちびっこたちが訪れるような駄菓子屋さん。2階は漫画レンタル屋さんでした。懐かしい~。ナビが小学校の頃は足しげく通ったものです。
永遠の平和と回想の火をイメージして作られました。平和を祈り、ここで起こったことを忘れないようにと作られました
祈堂老街をずっと進んで行くと「國際終戰和平紀念園區」が見えてきました。ここは第二次世界大戦時の1942年~1945年の期間、捕虜をここにとらえていました。唯一残されたのは入口の門柱のみ…。その他の物はすべて残されてはいません。多い時で1000人余りのイギリス人、カナダ人、オランダ人、オーストラリア人等々が捕虜として捕えられ、炭鉱掘りを手伝わされていたそうです。ここで多くの方が命を落としました。こんなに多くの人が捕えられていたなんて…衝撃でした。入口から一番奥には捕虜となった方々の国と名前が書かれている壁があるのですが、あまりの多さに愕然としてしまいます。これらは当時の記憶を頼りに名前を刻んだのだそうなのですが、戦争の恐ろしさを感じました。
余談になりますが、ここには台湾人は近寄ることができなかったため「督鼻仔寮(鼻の高い外国人が住む場所)」と呼ばれていたそうです。
唯一残された入口の門柱
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欧米人の捕虜と台湾人がお互い肩を組み合う像
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水湳洞???
水湳洞はあまり聞いたことがないという方も多いかと思います。正直ナビも「水金九」という言葉を聞いてもピ~んときませんでした。水湳洞で一番有名なのは黃金瀑布ではないでしょうか?ナビも最近になって知ったこの滝。でもそれ以外にも見所がありました!
水湳洞一の見どころだとナビが思ったのは、ここ「十三層遺址」。1933年に日本人によって建てられた製錬所です。昔は段々に13層あったのだそうですが、今は最上部のみ原型を留めています。当時、金の採取・選別・冶金・精錬のすべてをここで行っていた一大製錬所でした。今ではその美しさからミュージックビデオ撮影にも度々登場するのだとか。ナビもこの神秘的な雰囲気にシャッターを押し続けました。そのご展望台へと続く階段をテクテク上って行くと太いパイプが山に張り巡らされているのが見えました。これ長仁三號廢煙管と呼ばれ、長さ2㎞、太さ2mにも及ぶ煙道なのです。
大量の黄鉄鉱が含まれているため水も黄土色になっています
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この道を歩いて行けば・・・
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展望台から少し歩くと、山城美館やトラベルインフォメーションがあるのですが、そこから海をのぞくと海が2色に分かれているのです。陰陽海と呼ばれているのですが、これは天然鉱物から成る自然現象だそうです。その仕組みを詳しく教えてもらっても化学が苦手なナビは理解できず…すみません。でも、藍色と黄土色がはっきりと2つに分かれている奇観は見る価値大ですよ~!
今回、駆け足で水金九を見てきましたが、思うことはストーリーに耳を傾けながら見ると、同じ景色でもなぜか違って見えてくるということ。またこの水金九は急ぎ足ではなく、ゆっくり歩きながら雰囲気を味わうのがいいなぁと思いました!
以上、この取材後1週間後に水金九を訪れてしまったナビがお届けしました。