日本語でサポートができるボランティア制度を導入、リタイア後、外国での長期滞在を考えている日本人を歓迎する準備を着々と進める埔里からのレポートです。
ロングステイ誘致進街、埔里
日本人のシルバー世代のロングステイを全面的にサポートしよう、という町が台湾にもあらわれました。それが台湾のへそともいえる場所にある山間部の町、埔里。日本語ができるボランティアも数多くそろえて、受け入れ態勢が始まりました。
自然たっぷりな環境です
タイのチェンマイ、マレーシア・ペナン、フィリピンのスービックのように、シルバー世代のロングステイの受け入れ先が東南アジアに増える中、台湾にもその拠点を作る動きが始まっている。候補地としては埔里が選ばれた。南投県の中規模の町で、私たち日本人にとっては「台湾大地震の被災地」といえば覚えている方もいるかもしれませんね。ちょうど台湾の島の中間地点にあたる「台湾のへそ」にも当たる場所が、どうしてロングステイに適しているのか、その理由を、交通部観光局でこのプロジェクトを推進している洪文能さんに語ってもらったところ「埔里郷は気候も穏やかで水もおいしく、お年寄りの住みやすい環境にあります。さらに医療施設や買い物などにも困ることはない規模の町で、ロングステイの条件は満たされています。さらにこちらの郷長がこのプランに熱心で、予算を投じてくれていますし、民間レベルでも日本語を話せるボランティアがすでに50人登録されるなど、地元住民の期待も高まっているのです」とのことでした。
台湾にもひとつくらい、日本人が超短期で滞在できる町があってもいいと考えていたナビは、とてもそのプランに期待しているのですが、そんな矢先、観光局の洪さんから「視察に来る日本の方が来るので、ぜひ埔里にいらしてください」とのお誘い。埔里の町がどんなふうに盛り上がっているのか、さらにロングステイ希望の方は埔里にどんな印象をもつのか、訪ねてみることにしました。
「台湾の心」ロングステイ指定店も次々
「埔里は4つのWがありまして…」と、なにやらスピーチのお手本のような出だしで始まる、埔里自慢があります。そのWとは「Weather・Water・Wine・Woman」。つまり「気候・水・酒・女性」が素晴らしい、ということ。大地震という悲劇はあったものの、台風などの自然災害の影響を受けにくく、農産物はサトウキビ、イチゴ、タケノコ、バナナはじめ、品目も多く豊かな土地柄、水脈も多く、ミネラルウォーターのブランドが定着するほど、水がおいしく、そのうまい水を使った紹興酒が全国的に有名で、そんな環境だけに美しい女性も多い、ということですが、この豊かな環境に根ざした蘭などの花の栽培、養蜂、和紙、瓷器づくりなども観光資源提供に一役かっています。
沿路にはイチゴ畑が広がります!
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紹興酒工場は観光名所にもなっています。
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埔里の名前を冠したミネラルウォーターも多いのです。
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美人が多い、ということも街の自慢!
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とまあ、埔里の見どころについては別の町歩きレポートに譲るとして、ナビは、この町のロングステイ受け入れ状況を知るべく、郷公所(町役場)にやってきたのでした。
馬郷長、自ら広告塔に!
さて、役場の前にやってきてビックリしたのが、等身大のたて看板。「台湾の心」とある。そして日本人が安心して利用できる特約店には鯉のぼりをあしらったパネルも立てかけられるそうです。そして現地の案内役の、観光課の卓さんの案内で役場の中に入るなり、「郷長としばしお話ください」と、郷長室に通されたのでした。そこには、立て看板にあった女性その人!「馬 です。ロングステイは私が陣頭になっているし、金城(武)くんにする予算もないので、思いっきり私が宣伝塔になることになりました(笑)」とジョークをひとつ。とても気さくな方であると同時に、外国にも視察するなど、日本人の心をつかむためにはどんなことをするべきなのか、真剣に取り組んでいる様子がうかがえました。
マンション、民宿、が選べる
生活ハンドブックも作られていました。
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ウィークリーマンションの中はこんな感じです
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埔里は1999年9月21日、大地震に見舞われれから、町の再建が進み、新築の入居者がいないマンション物件がまだ数多くあるとのことです。ハンドブックの中では、その中で一般的な3LDKのマンション物件を紹介していました。広さは99.2?、バスタブつきの浴室、キッチンには冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、食器、調理器具なども準備されているそうです。家具、日本語チャンネルも見れるテレビ、電話など、ホテル並みの設備でした。こんなマンションが日本円で6万円前後で賃貸できる、とのことでした。
さらに、ここ数年のレジャーブームで日月潭や清境農場などのペンションや民宿などへの人気を受けて、埔里の民宿経営者も増えて、近辺には20軒前後の民宿利用が可能。月ぎめだと12000元からととても格安になっていました。これは、個別に交渉するよりは、埔里の観光課やボランティアさんを間に挟んでの交渉が必要と思われますので、興味のある方は、下の埔里の観光課まで連絡をお願いします。
病院、郵便局などの公共設施
シルバー世代のロングステイで最も心配なのが、「滞在中にもしもの事故があったら」ということでしょう。そのため、医療施設がしっかりした場所というのが、キーポイントになっているのですが、8万人の人口を抱える埔里は南投県でも指折りの病院を2つ持っています。基督教医院、栄民医院です。診療所も眼科、歯科なども含めて10数軒はあるので、最寄の場所を利用できるとのことです。もちろん、長期滞在覚悟なら日本では海外旅行者保険をかけてくるでしょうから、病院にかかったら、英語の医療証明とレシートはお忘れなく。
町の生活機能
埔里の町は、台北などの都市部と違って、自転車で1−2時間回ればだいたいわかってしまう程度のコンパクトな町。スーパーには日本の食材もある程度はそろえられていますし、日本料理が恋しくなったら、和食の店もあるので、そこで済ますこともできます。雑貨店、レストランなどもある程度はありますし、都心部とちがって物価もやや安めになっているのもよろしいかと。郵便局や銀行も町の中心部に集中していました。
太極拳などで健康管理もできる
町内の公園では、早朝から太極拳をやって健康をはかるグループもあるほか、日本語でカラオケを歌うグループ、囲碁グループもあったりと、コミュニティ活動も盛んに行われていました。いきなり入っていくのは気恥ずかしいこともあるでしょうから、ボランティアさんを通してグループを紹介してもらったりすることもできるでしょう。私立の体育館にはプールなどもあるので、気軽なスポーツに親しむこともできますよ。
埔里はズバリ「自然」が娯楽の中心といえるでしょう。町をちょっと出て、遠出をしたい場合には、近場では湖畔の景観が美しい日月潭、日本統治時代に開発され、現在も温泉施設の多い廬山温泉、そして標高千mを超える高原地帯、清境農場など、息抜きのできるスポットが点在しています。かつては新高山や周辺に広がる3000m級の山々への入山口としても名の知れた土地でもあるため、登山道なども整備されていますので、登山愛好者にも魅力的な土地といえるでしょう。
さて、埔里で体験訪問をしたシルバー世代のひとりは、もっとも感動したのはボランティアさんたちの献身的な応対だったといいます。「日本語がとても上手なかたも、ややたどたどしい方も、一生懸命に役に立ちたいという気持ちが伝わってきて心を打たれました。さらに、日本のおかげで台湾はこれだけ進んだ国になりました、などと日本のことをほめてくれるのを聞き、改めてかつて日本統治時代の先達たちが台湾に残した文化について考えるいい機会になった」と話していました。さらに「ボランティアさんの年齢も20代から70代まで散らばっているのにも好感を覚えた」との感想もありました。老いも若きも、訪ねてきた日本人を歓迎するムードは、何にも変えがたいもの。こういったソフト面で、よいものをどんどん伸ばしてもらいたいと考えました。ここまで、埔里のよいところばかりを紹介してきたようですが、とはいっても埔里という町を知っている日本人は少ないばかりか、台北や国際空港からは車で2−3時間以上もかかるなど、おせじにも便がよいとはいえない場所。このマイナス面をいかに克服していくか、が今後の課題になると感じました。
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2006-01-23