ルカイ族が多く暮らす台湾コーヒーの一大産地で原住民文化に触れよう
こんにちは、台北ナビです。
台湾原住民ルカイ族の人々が多く暮らす屏東県霧台郷にある霧台集落は、高雄市中心部から車で約1時間30分の距離ですが、自然豊かな茂林風景管理区の中にあり、独自の原住民文化が残っているだけでなく、雄大な大自然に触れられます。高雄からの日帰り旅行だって可能なので、原住民文化を知ってみたいという人にお薦めの観光スポットですよ。
スレート造りの建物に桜が名物 日帰りできる台湾原住民の集落です
霧台集落を回るなら、タクシーチャーターが便利です。公共交通機関なら、まず台鉄(台湾鉄道)などで「屏東」駅まで行き、そこから1日に3本しか運行されない屏東客運8233に乗り換えて約2時間でたどり着きます。
ちなみに、先日お伝えした神山集落と霧台集落はお隣同士の集落で、スケジュールの組み立て次第で2つの集落を一緒に回ることも可能です。
途中、検査場を通るのですが、ここで入山申請が必要となります。申請用紙に氏名、住所、パスポート番号などを記入します。無料で、しかも5分もかからず申請ができ、却下されることはほぼないのでご安心を。2019年現在、この入山申請の廃止が検討されているようなので、今後は必要なくなるかもしれません。
霧台集落は海抜約900メートル。5つの地域があり霧台郷最大の集落で、アワやトウモロコシ、モロコシのほか、タロイモ、サツマイモ、キヌアなどの栽培が盛んです。伝統的なスレート造りの家屋が多いだけでなく、桜の名所としても知られ、観光産業も盛んです。
ちなみに、1999年の八八水害では、屏東県中心部へ抜ける道路が複数個所で寸断され、生活に大きな影響が出ましたが、一部を除いてインフラ面ではほぼ復旧しています。
霧台集落からさらに先に阿礼集落があるのですが、道路復旧が完了しておらず、住民や関係者以外の通行はご遠慮くださいということで、我々が行けるのはここまでです
台湾コーヒーの故郷
あ!コーヒーの実を発見!コーヒーは傾斜地の段々畑にタロイモと一緒に植えられていていました
実は霧台には隠れた名物があるんです。それはコーヒー。台湾では日本統治時代に南部と東部で大規模なコーヒー栽培が行われ、一部は皇室にも献上されていたことをご存知の方も多いかと思いますが、霧台でもコーヒー豆が栽培されていたんです。
杜俊文さんの農園で栽培されているのは、日本統治時代に日本人が植えたとされるアラビカ種の子孫。聞けば、戦後に日本人が引き揚げてからコーヒー栽培は衰退し、切り倒された木も多いんだそうですが、ここでは、約15年前から残ったコーヒーの木を挿し木で増やし、栽培規模を大きくしてきました。
こちらは収穫までもう少しかかりそう
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ヘタに近い部分まで真っ赤になっていると収穫の合図
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杜さんによると、赤くなっている実は、そのまま食べられるんだとか。霧台の子供は、遠くに遊びに出かける時、野生化したコーヒーの木に生った実をもぎ取って、おやつとして食べていたんだというから驚きです。
というわけで、ナビも実際にコーヒーの実を収穫して味わってみることに。実の収穫自体は、硬いデラウエアを房からもぎ取るような感じ。風にあおられて何かとぶつかり、表面が黒くなってしまったものも収穫して大丈夫です。なぜなら、本当に大切なのは種の部分だから。
で、肝心の実の味なのですが、まさかまさかのさくらんぼのような味がしました。フルーティーでえぐみは感じられず、おやつとしていたのにも納得です。種が大きく、皮が厚く、果肉が少なく、甘さが強いのがおいしいコーヒー豆ができる条件なんだそうですよ。
見晴らしのよいレストランで原住民風ランチを
収穫が終わったところで腹ごしらえをしましょう。ちょうど霧台集落を見渡せる見晴らしの良いレストランで原住民風ランチをいただきます。
朝は台湾式の朝ご飯屋さん、ランチとディナーは原住民料理のレストランとして営業していて、地元の人もよく利用している模様です。
掘っ立て小屋感満載。だがそれがよい
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看板ネコがお出迎え
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原味套餐350元
台北や高雄など大都市ではなかなか食べる機会のない原住民料理。山に入ったら必ず楽しみたいグルメです。原住民料理というと、一品料理をたくさん頼んで大人数で食べるようなイメージがあるのですが、こちらの名物は原住民料理で構成された1人前の定食。これは小人数での旅行で嬉しいポイントです。
写真だけを見ると小ぢんまりとして、これでお腹がいっぱいになるかなと心配になったのですが、実際に食べてみるとボリューム満点。お肉類が多くてスタミナもつきそうです。そして中華料理と違って、味付けは塩と胡椒が中心で意外とさっぱり。辛かったり油っぽかったりしないので、想像以上にヘルシーかも知れません。
さて、この記事の中で何度も言及しているスレート家屋ですが、実際はどんなものでしょうか?実は、近代化の中で本当に伝統的な家屋というのは数が少なく、残っていたとしても現役で家屋として使われていて、一般には開放されていないことがほとんどなんです。
ところが、杜さんの親戚が観光用のために建設したというスレート家屋が、ちょうどお客さんがいないからということで、特別に見学させてもらうことになりました!
建物は基本的に平屋。日本統治時代より前は、防衛の観点から、天井が今より半分近く低かったそう。中は床も壁も椅子もすべてスレートです。スレートが濃いグレーなので、建物全体がキリリと引き締まって見えます。入ってすぐの場所は今で言うリビングダイニングになっていて、大体12畳ほどあるでしょうか。壁には狩りで得た動物の骨のほか、衣服や狩猟の道具などが掛けられていて、収納も兼ねています。
その奥に小上がりで4畳半程度の部屋が3つ並んでいます。ただ、この3部屋は隣り合う部屋との間仕切りはあるものの、リビングダイニング側にはドアはおろか仕切りもありません。申し訳程度にカーテンがかかっていますが、これは現代風にアレンジされたものです。
トイレと台所は一番端にあり、かつてはトイレと豚舎が直結していたんだとか。
霧台集落の上の方は特にスレート家屋がたくさんあり、霧岩板巷(スレート路地)という愛称がついています。
どこもかしこも、岩、岩、岩。緑が茂る山に佇むグレーの建物群は台湾の平地ではなかなか見られない光景です。
崖のすぐ近くにあるカフェでは、パッションフルーツやキンモクセイシロップのかかった愛玉のほか、色合いが美しい愛玉ドリンクを販売。軽食のセットもあり、ツーリングに来たライダーたちが足を休めていました。
地元のランドマークになっているプロテスタント教会
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スレート家屋の屋根はこうなっています
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霧台コーヒーの焙煎体験もできます フルーティーな香りと味を堪能!
さて、午前中にコーヒー豆の収穫を終えたナビ。まだ肝心のコーヒーを味わっていませんでした。
そこでやってきたのが霧台の広場で阿桃さんが開いているコーヒー店のテント。生のコーヒー豆をフライパンで煎って、コーヒーの試飲ができるんです。
ちなみに、コーヒー豆を煎るのは凄く簡単。弱火で焦げ付かないようにかき混ぜ続けるだけ。豆を煎って5分もしないうちに、豆のいい香りがしてきます。ただ、少なくとも20~30分間はかき混ぜ続けないといけないので、実は重労働。秋の訪れを感じさせる爽やかな天気だったのですが、たちまち額に汗が浮かんできました。
阿桃さんは、霧台で行われる台湾コーヒー大会で1位に輝いたことのあるコーヒー職人さん。霧台のコーヒー豆については、とってもフルーティーな香が特徴的だから、浅煎りと中煎りの中間くらいが美味しいとのこと。
初めはこんな色
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黙々とかき混ぜ続けます。それにしても手が痛い
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そして阿桃さん、特別に乾燥させたコーヒー豆から剥いだ薄皮を集めて作ったお茶を出してくれました。
色はまさに高山烏龍茶。ですが、飲んでみると韓国などで有名なコーン茶に近い味と風味がしてグッド!思わぬ副産品ができたのはとってもおもしろいですね。
戦後一度は途絶えてしまったコーヒー文化が再び独自の進化を歩み出した一面が垣間見られましたよ。
ルカイ族の人々が、日本や漢民族の文化の影響を受けながら、独自に進化してきた姿を見ることができた屏東県霧台郷。日本人観光客がまだまだ少ない場所なので、新たな発見があること間違いなし!高雄空港を発着する日本路線も増えているので、ぜひ次の台湾旅行で原住民集落を訪ねてはいかがですか?詳しい情報はFacebookページ「
霧台社區發展協會」からご覧くださいね。
以上、台北ナビがお伝えしました!