笑顔がまぶしいアミ族の子供達による太鼓楽団の力強い演奏!
こんにちは、台北ナビです。今日は台湾の東部、台東にある小さな部落を紹介したいと思います。台東県北部にある成功鎮は港町として知られていて、台東のシンボルとも言える三仙台もあります。その三仙台すぐそばにある「比西里岸」はアミ族の暮らす部落。若者達がいきいきと暮らす「比西里岸」の太鼓楽団に感動したナビ。この感動を皆様に伝えたい!と筆を執りました♪
「比西里岸」のシンボル三仙台
三仙台を望める場所にある「比西里岸」。比西里岸の住民はその昔、三仙台でヤギを放牧し、珊瑚礁にある海藻や貝類を採ったり、魚を捕っていたそうです。
そのため比西里岸は「ヤギを飼うところ」という意味があるそうで、住民たちは三仙台を富をもたらせてくれる大切な場所と考えていたのでした。現在では風景区となっているため、ヤギの放牧などは行っておらず、定位網漁に頼るのみ。それでも比西里岸部落の人々は「ヤギ」を自分達にとって大切な動物と考えており、部落のいたるところに「ヤギ」の絵やオブジェが置かれています。
定置網は部落から見える位置に!
|
|
翌日定置網へ行く方々を見かけました
|
比西里岸を救うのは子供達!
田舎にとって若者の流出が深刻な問題なのは世界共通。比西里岸の若者たちもどんどん都会へ出て行ってしまっていました。これではいけないと感じた三仙社区発展協會理事長の陳春妹さん。台東に住む芸術家の范志明さんと共に、若者が都会に行かなくても夢中になれるものを、と試行錯誤の末「PAWPAW鼓」を作り出しました。音楽的才能に長けたアミ族の若者はこの「PAWPAW鼓」に興味津々!「PAWPAW鼓」を使って遊び始めると夢中になり、ひとりまたひとりと参加し、「比西里岸pawpaw鼓楽団」が誕生しました。初めの頃は遊びの域を出ませんでしたが、2010年に台北芸術大学の校長などが比西里岸を訪れ、「比西里岸pawpaw鼓楽団」を見て、子供達の才能を確信。すぐさま月に2度音楽を教えることを決めました。正式な練習を始めると子供達の吸収力の早さはすさまじく、先生方の弁にも熱がおびてきます。そして、国際的なレベルへと引き上げるため様々な舞台にも参加するようになりました。一途に努力を続け、勇敢に舞台へと上がる子供達。その姿に鼓舞された大人達は自分の部落を更に好きになり、より良くしていくための努力に真摯に取り組むようになったそうです。
PAWPAW鼓って何?
アフリカ太鼓のような「PAWPAW鼓」は使用できなくなった定置網漁で使用する浮き球(フロート)を太鼓として使用しているんです。なので、PAWPAWとはアミ族の言葉で「フロート」という意味なんだそうです。また、このフロートを支える台座は比西里岸に流れ着く漂流木を使い、アミ族が代々受け継いできた柄を彫刻しているんです。そして太鼓を飾るのはアミ族の織物!アミ族らしさとエコがドッキングしたステキな楽器だと思いませんか?しかも、太鼓の音がフレッシュで力強く、迫力満点!生命力に満ちた音なんですよ。
このフロートを使用しているんです
|
|
劇場の横ではPAWPAW鼓が作られていました
|
肩からかけて演奏します
舞台も手作り感満載
「比西里岸pawpaw鼓楽団」の建物は心のシンボル三仙台が見える場所にあります。漂流木で作ったヤギが目の前に置いてあって、三仙台を見つめているのもいいんですよねぇ。建物の1階には舞台と椅子、そして楽団グッズなどが売られているのですが、飾り気はほとんどありません。天井に視線を移すと、漂流木や定置網漁で使った網で作ったランプシェードが飾られていました。「あんまりお金をかけられなくて、あるもので作ったらこんな風になったの」と団員さんは語りますが、自然にあるものを使っていて温もりを感じるのでナビ好みです。2階は風が通るように壁の大部分を取り払った大胆な造り。ここにいると海風を感じ、とても清清しい気分になります。ずっとぼぉ~っとしていたいと思わせてくれるような気持ちのいい場所です。しかもここは食事が出来る場所になっているんです。三仙台や海を見ながらお食事できる場所は早々ありません。
質素だけれど快適な場所
|
|
ヤギの置物もたくさん置かれていました
|
カウンターからは三仙台が!絶景かな~
原住民食にする?それとも軽食??
風味餐350元
風に吹かれながらのパンはおいしい!
せっかくだからこちらに来たら演奏を聴く前にお食事をいただきましょう。団員などもお手伝いをして作る風味餐350元は予約制。特製ちまきや6種類のおかずがついていました。アミ族の方々は野草への理解も深く、普段から野草をよく食べるそうで、もちろん風味餐にも上手に使われています。食べたこともない味付けのお料理もありましたが、なぜかどれもおいしいんです。一見すると少ないかなと思いましたが、食べてみると満腹!軽食のパンも自家製です。なかなかのお値段だと思いましたが、パンの大きさとお味で納得!もちもちの食感とバジルの味がアクセントとなっているフォカッチャ(佛卡夏)120元、チェダーチーズとハムの入った巧巴達(チェダー)160元、記者達に一番人気だった手工麵包(手作りパン。この日はチョコレートパンでした)150元。特にフォカッチャに手作りジャムをつけると甘さと塩味がマッチし、病み付きになっちゃいます。
あなたはどれがお好み?
|
|
カット前のパンはおみやげにしてもいいかも♪
|
リハーサルも自分達の手で!
お腹も満たされたところで1階に下りてきました。すると、pawpaw鼓楽団の子供達がリハーサルをしていました。リーダーが仕切り、遊びたい盛りの子供達を束ねている姿にビックリ。「この歌の時はどんな隊形だった?」「笑っている場合じゃないよ」「もっと真剣に!」次々に厳しい言葉が飛び、落ち着きのない子供達もどんどんリハーサルに集中していきます。家でゲームをしたり、外で遊びたい年頃の子供達ですが、自分でこの楽団に入ると決断し、夢を追いかけている姿を見ただけで、ナビちょっとうるっときてしまいました。原住民の部落は経済的には貧しいのですが、頑張った子には奨学金を送る制度があったり、ショーが認められて海外での演奏チャンスに恵まれたりと、楽団に入っていなければ体験できないことも多いので、自分の可能性を広げてくれると思っているんだとか。
ナビはメディア向け取材で訪れたのですが、リーダーの「是非とも写真をいっぱい撮ってください!そして、たくさんの方に『比西里岸pawpaw鼓楽団』を広めてください」という言葉から始まった舞台。子供達のキラキラ光る笑顔、真剣なまなざし、力強い太鼓の音色、美しい歌声にカメラマンはこれ以上ないというほど写真を撮り、記者は食い入るように見守りました。何曲か披露してくれたパフォーマンスですが、最後に演奏してくれた「比西里岸の海」をモチーフに作ったパフォーマンスがナビの心に残り続けています。朝の静かな海、陽が昇るにつれて波が激しくなり、台東名物の飛び魚が波にぶつかり飛び跳ねる・・・、そして夜にかけて波が静かになる・・・そんなストーリーが伝わるパフォーマンスで、この部落の方々がどれだけ自分の部落を愛しているのかが伝わってくるんです。圧巻のパフォーマンスを是非ひとりでも多くの方に見てもらえればとナビは思います。
リーダーの彼女の言葉に・・・
|
|
カメラマンたちもいい写真を撮ろうと必死!ナビ、ここまで必死になったカメラマンさんを初めて見ました♪
|
これが漂流木でつくられた毛毛兔
この「比西里岸」町歩きの魅力を盛り上げてくれるのは、台湾の絵本作家「ジミー」のイラスト。「比西里岸創意工坊」の代表漂流木アートである比西里岸大羊を見て感動したジミーは彼の絵本「森林裡的祕密」の中の「毛毛兔」を再現すれば、絵本から飛び出したようになるのではないか・・・と思いつき、「比西里岸創意工坊」とのコラボが決定!その作品は台東美術館で展示されました。その後比西里岸の理事長が作品を引き取り、比西里岸部落に展示しています。そして、毛毛兔ともうひとりの主役である女の子がワンちゃん(阿吉)と一緒に部落を巡っているようすが11ヶ所書かれているのですが、これはイラストを探しながら部落を歩き、巡って欲しいとの思いが込められているそうです。
しっぽもかわいらしいのでお見逃しなく!
|
|
本来は頭に女の子の像が乗っているのですが、この日は台風が近づいていたため避難していました
|
部落の中で一番高価な物で作られたんだとか・・・何だと思いますか?これは台湾ビールと保力達の瓶でつくられているんです!
|
|
家の前にたくさん積まれた保力達の瓶
|
よく見てみると・・・
|
|
砂でつくられていました
|
そのため強度はかなり低いそう |
こうやって石を固めているのをよく見かけました
|
|
定置網で使用した網をリサイクル!
|
団員が道案内してくれます!
一定の人数が集まると比西里岸pawpaw鼓楽団の団員が自分達の暮らす町を原住民の言葉を交えて詳しく案内してくれるツアーがあります。このツアーにはアミ族の伝統的なお餅をDIYでき、小米酒も振るわれます。もし、人数が集まらなくても先ほども述べたように部落の地図があるので、自分でブラブラ歩いてみるのもいいと思います。また原住民の方は家の中にいるのを好まず、外でおしゃべりをされているので、出会ったら「こんにちは!(アミ族の言葉でライホー)」と声をかけてみると笑顔で返してくれます。実際歩いてみると、台北よりも3倍くらい生活のスピードが遅く、ゆったりしています。決して経済的には裕福ではないけど、豊かな生活をしていると感じられるのがいいですね。ちょっと肩の力を抜いて過ごそう!そう思わせてくれる場所でした。
地図がわかりやすい!
部落が経営する民宿は劇場のすぐ横!
|
|
壁にはヤギの絵と漂流木でつくった置物が!
|
直接色々教えてくれるんです
|
|
自然と笑顔がこぼれちゃう
|
演奏終わりにはナビたちを陽気な「さようならの歌」で送り出してくれた子供達。こんなにサービス上手だとまた来ちゃうよ!一度行けば、帰ってきたくなる温かい気持ちが詰まった部落です。子供達の勉強の都合などで、毎日少人数でも開催できるというわけではないのが残念ですが、もし台東に行く機会があれば、だめもとで部落に連絡してみるのもいいかもしれません。他に予約者があれば比西里岸pawpaw鼓楽団の演奏を生で聴くことができますよ。
以上、また訪れるよ!と約束してきたからには必ずまた遊びにくることを心に決めているナビがお届けしました。