2泊3日で雪山に登ってきました。3月は比較的雨が多い季節。さて雪山はどう迎えてくれたのでしょうか?!
(画像提供:葉錦成氏)
雪霸國家公園マーク。書かれている魚は貴重な絶滅危惧種・タイワンマス。現在は雪霸國家公園にしかいないそうです。
こんにちは、台北ナビです。
台湾には3000m級の山が268座もあり、最高峰は玉山(3952m)というのは、知っている方も多いはず。
では、その次に高い山をご存じですか?
それは雪霸國家公園の中に位置する雪山(3,886m)。その名のとおり雪が降る山で、台湾第2の高さ(3,886m)を誇ります。かつて日本が統治していた時代、玉山は「新高山」という名前でした。新高山の次に高い山として「次高山」と呼ばれていましたが、現在は雪山という名前になっています。富士山が3,776.12mですから富士山より高い山なんです。
野訊國際登山旅行社のツアーを利用しました。
バス車内
雪山は玉山と同じく国家により「山地管制地域」に指定されているため、許可無く入山することはできません。日本から独自に行くことはなかなか難しいと思われます。今回ナビは台湾で登山を専門に扱う野訊國際登山旅行社のツアーに参加しました。ナビは中国語をほとんど話せませんが、山登りで必要なことは世界共通なので、ジェスチャーや英語でガイドさんたちと意思疎通できます。野訊國際登山旅行社ならひとりひとりにスケジュールブック(中国語)も作ってくれますし、手続きも簡単なので、いつもお世話になっています。
2泊3日のツアーは、18時にMRT「古亭」駅出口に集合。ここから専用バスで宜蘭―武陵―登山口まで向かいます。
今回の参加者は16名。リーダーの林さんを入れて4名のガイドさんがついてくれます。今回女性の黄さんという可愛らしいガイドさんがいました!とても優しいチャーミングな方です。細やかなお世話をしてくださいました。
雪山登山口管制哨で入山チェック
夜23時、やっと雪山登山口管制哨(2300m)まで到着しました。ここで個人IDや登山装備のチェックを行い、入山許可をもらいます。外国人はパスポート、台湾人はIDカードの身分証を提出します。
3月までは雪期のため、装備としてヘルメット、ストック、10本爪アイゼンを持つこと、登山者5名に1名山岳ガイドをつけなくてはならないといった規制があります。国家として厳重に登山者の安全管理と自然保護を行っているのですね。管理室で雪山の自然や山小屋の使い方の案内ビデオの視聴も義務になっています。
雪山登山口管制哨建物の前
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自然保護のビデオを視聴しました。
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深夜1時間20分の歩行
登山口管制哨のチェックを終え、23:15、いよいよ登山口から歩き始めました。真っ暗闇の中、ヘッドランプをつけて登っていきます。深夜疲れているところに歩くのはちょっと辛い!!登山口から2㎞にある七卡(シチカ)山荘(2463m)までガンバレ!と自分を励ましながら登ります。高低差163mです。
シチカ山荘室内
24:35到着。各人に寝袋が配布されます。台湾の主な山小屋には基本的に寝袋が設置され宿泊者は借りることができます。
すぐに就寝。明日はどんな道が待っているのでしょう。
七卡(シチカ)山荘
朝7:30起床。昨夜は暗くて様子がわからなかったのですが、建物全体が見えました。入口から左右に大きな2段の寝床部屋。主建物の裏に炊事棟とトイレ棟があります。トイレは水洗で、山の水を使っています。
炊事棟で朝ご飯。おかゆ、マントウ、煎り卵、その他漬物などを自由にいただきます。
建物前広場には、タイヤル族の狩場であったことや動植物の生態の説明板がありました。
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シチカ山荘の位置図
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昨夜登ってきた道が右手 今日は左手の道を登ります
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標識
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リーダーの指示と準備体操
身支度を整え、建物前で準備体操。
朝は雨が降っていたのですが、出発時間の8:30には止んでくれました。ラッキー!
しばらくひたすら登ります。休憩時、可愛い鳥さんに遭遇!
登り始めました
さほど急ではありませんがずっと登り。ゆっくり登ります。ガイドさんが皆の様子を見ながらペースを考えてくれます。
はじめに15分くらい登ったところで、衣服の調節がありました。歩き始めたら体温が上がるからです。登るのに夢中になっていると忘れてしまいがちなあれやこれ…すべてプロの方にお任せしているので、安心して登れます。
登りはじめて1時間半くらいの場所で休憩していたら、可愛い鳥が2匹いました。人間をまったく怖がることなく近づいてすら来ます。名前は「金翼白眉」とガイドさんが教えてくれました。確かに白い眉がみえます。癒されま~す。
哭坂前瞭望台で昼食
その後も登り続け、哭坂前瞭望台で昼食となりました。ここでガイドさんが温かいコーヒーをサービス。
景色の良い場所のはずですが、あいにくの曇り空。景色が望めないのは残念です。
このような眺望があるはずですが、、、。
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リーダーの林さん。今日の夕食の野菜を担いでおられました!
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シャクナゲの蕾
「哭坂前瞭望台」の「哭坂」って漢字で想像できるように、「哭く坂(泣く坂)」=厳しい登りっていうことなのです。瞭望台からも急な登りが見えています。「ここが一番厳しいポイントだ。ガンバレ!」と言われ、しばらく急な登りを喘ぎ喘ぎ登ります。
苦しい道ですが、周囲には冷杉の大木やシャクナゲが蕾をつけているのが見えます。花期は5月後半でしょうか。
雪山東峰(3201m)に到着!
12:45、雪山東峰に到着しました。少し陽も差してきて周囲の山も見えてきました。
道の先には広大な笹原があり、今晩の宿・三六九山荘が見えます。かなり高山になってきたということです。
頂上で記念撮影。少し周囲の眺望も見られました。
雪山東峰でしばしの眺望を楽しんだ後、笹原や植物の間を抜けながら約1時間半、三六九山荘まで歩きます。
玉山圓柏です。和名:ビャクシン(ヒノキ科)。長い間の風雪に耐え不思議な形をしたものが多いです。
三六九山荘(3100m)に到着!
三六九山荘が近づいてきました!
14:30、三六九山荘に到着しました。雪山主峰に登る最後の山小屋です。
主建物は七卡(シチカ)山荘のように左右に大きな2段の寝床がある大部屋の造り。炊事棟とトイレ棟はそれぞれ別にあります。
高山は水が豊富にありません。トイレは自然の力で分解するシステムを使っています。さほど臭いはしません。とてもきれいに使われています。
ナビの夕食。上はスープ。ショウガ味でした。
3000mを超える山小屋ですが夕食はとても豪華。スープも入れて7品作ってくださいました。キャベツや白菜、ニンジン、ソーセージ、ベーコン、豚肉の角煮もあります。スープもカワイイ。
夕食スープ。動物形のクルトンが浮かんでいます。
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夕食を各自取り分けます
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夕食後、高山の雲海を見ました。あまり夕焼けは出ていませんでしたが、静かな山の夕暮れです。「星が見えたら明日は晴れるよ」と誰かが言いましたが、星は見えませんでした。明日は朝1:00起床です。
雪山主峰に登る日は雨
起床時間になり、大きな雨と風の音に驚きました。山特有の風鳴り。雨もどんどん降っています。
朝食をすませ、午前2:00出発。もちろん真っ暗。防水ジャケットを着て登ります。ともかく暗く様子が良くわかりません。涙…。
真っ暗・・・涙
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朝食に出された黒糖とショウガのドリンク。これで元気をつけて行きます!
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「黒森林」といわれる辺りに入ったとき、たくさんの冷杉(モミの木)の姿がヘッドランプに映りました。針葉樹の良い香りがします。標高は3,200mくらい。
下の写真は以前同じ場所で撮影したものです。
案内板に雪がこびりついて掃えません。
さらに歩いていくと雨が霰に変わりだしました。
「ゆっ、雪ですか?」近くを歩いていた台湾人の青年が聞きます。
台湾の方には雪はたいへんめずらしいものです。さらに歩いていくと霰は確実に雪に変わっていきました。道にもうっすら雪が積もり始めました。どんどん雪は多くなります。5:00ごろ、雪の中で休憩。ゴーッという風と雪。
この時点で登山口から10㎞の場所です。雪山主峰が10.9㎞ですので、あと900m。しかし、これ以上登ると危険とリーダーが判断し、引き返すことにしました。
ここで休憩しました。
(画像提供:葉錦成氏)
下ること30分くらいの地点が「圏谷」というカール(かつて氷河が削った谷)で休憩しました。少し明るくなりうっすら尾根が見えます。
台湾の皆さまは、雪や風にもめげず雪合戦などしてキャッキャッと声を上げて楽しんでいました。
(画像は以前撮影したものです。昼間晴れていれば、このような景色です。)
来た道を戻ります
8:30少し前に三六九山荘に戻ってきました。濡れた服を着替え、簡単な麺料理をいただき、休憩後、9:00に登山口に向けて出発しました。
来た道を戻ります。雨は少し小降りになりましたが、その後はかなりしっかり降っていました。岩や木の根が濡れていて足を載せると滑るので下りは慎重に歩きます。
雪山登山口管制哨まで戻ってきました!
14:00頃、やっと登山口の管制哨(管理棟)まで戻ってきました。
一昨日の深夜、周囲はまったく見えなかったのですが、ログハウス風の素敵な建物です。隣に貯水池がありました。雨にも関わらず登山者のほか、観光客もたくさんいて賑わっていました。カップ麺をいただき専用バスで帰途につきました。
(画像は以前撮影したものです)
管制哨建物。晴れていればこんなに美しい景色が最後に待っているのですが、、(画像提供:葉錦成氏)
雪山の感想
三六九山荘からの遠景
初日、深夜に七卡(シチカ)山荘入り、最終日も午前1時から行動、しかも大雨と吹雪に遭い、とかなり厳しい山行でした。頂上にたどり着けなかったことも心残りです。しかし、自然の息吹を肌で感じることで心とアタマを十分リフレッシュできました。
日本とは違う国の登山。そこには現地のガイドさんや参加した登山者との出会いがあり、ちょっとした国際交流の場でありました。
いつか、雪山頂上への再チャレンジを誓います! 季節は、花がきれいだという5月か秋がいいかも。
以上、台湾の山大好きナビでした。
(取材日:2017年3月24日‐26日)