モリを振りかざし海中のカジキを突く!伝統漁法を守り続ける港町を巡りました
こんにちは、台北ナビです。
台湾東部と言えば山と海があり、景色の美しい場所として人気ですが、その中でも今回は台東の成功鎮という町にスポットを当ててみたいと思います。成功鎮と言えばカジキが有名。伝統漁法である突きん棒漁を目の当たりにして、なぜかナビの血が騒ぐ~!台湾一おいしいというネーブルオレンジの郷としても有名です。
アミ族の町
人口15000人、そして人口の5割がアミ族と言われる成功鎮。文字を持たなかったアミ族は歴史が書き記されていなかったため、成功鎮の昔の姿は詳しくはわかっていないそうですが、考古学的には「麒麟文化」又は「巨石文化」と呼ばれる文化が今から3500年~2000年前にはあったと言われています。
その後300年ほど前に花蓮靜埔や台東卑南のアミ族が成功鎮に移住してきたことが「蕃社案内」という書物に書き記されています。やはり昔からアミ族あっての町だったんですね。
三仙台にかかるこの橋が美しい!
台東空港から車で約1時間のところに位置しますが、台東のシンボルにもなっている三仙台があるのもここ成功鎮です。
三仙台は見てみるとどうってことないのですが、手前の8つの雲の様に見える橋と一緒に写真に撮ると見違えるほど魅力的!
台湾東部最大の漁港!
カニの手みたい!
台湾の東海岸と言えば、海岸線が美しいことで有名ですよね。その中でも成功鎮は東部最大の漁港として名を馳せています。
カニの手のような形をしている成功漁港ですが、これは自然に形成されたそうで、1800年代には中国の船が自由に出入りしていたんだとか。この自然の港を日本統治時代の1929年~1932年に大規模なものへと整えました。
まず線路をひき、トロッコ列車で土を運んでいたそうで、工事は難航したそうです。その後何度かの改築を経て今の漁港となりました。今では漁船の形をした建物が目印となり、海の上からでも目立っています。
漁港ではカツオ、カジキ、シイラ(ハワイではマヒマヒと呼ばれます。中国語では鬼頭刀)、マグロなどが主要に水揚げされています。
毎年3月~6月の漁産が豊富で、10月頃東北季節風が吹き出すとカジキの季節となります。成功鎮に来たら是非新鮮な海鮮を食べてくださいね!
競りが間近で!
漁港といえば「競り」も見もののひとつ!
13時から小型魚の競りが行われ、一段落したところで14時半から大型魚のみの競りが始まります(夏は1時間ほど遅くから始まります)。そのためカジキの季節には、14時過ぎに漁港に到着すればカジキ船からカジキが揚げられる姿も見ることができます。
カジキの競りはカジキ達人「林寶山」の出現で空気が一変します。彼はパっと見ただけでどのカジキがいいのかわかってしまうということで、彼の選ぶカジキは最高級のものばかりだというのです。その彼がどれくらいの値をつけるかはほかの買い付け人にもかなりの影響を及ぼすそうです。
カジキ達人「林寶山」
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この年季の入った計器で重さを量ります
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カジキ競りの前に港をテクテク歩いてみたナビ。知らない魚ばかりで見て回るだけで楽しいものですね。
奥に行くとシイラが束になって売られています。束になっている魚は練り物の材料にされるそうです。
セリ人の凛々しい顔つき
さて、お待ちかねの競りが急に始まりました。
野菜市場での競りしかテレビで見たことがなかったナビにとっては生で見る初めての体験!日本の競りであるような独特な「符丁」は一切なし。しかも人によっては台湾語で値段を叫んだり、ジェスチャーで「来い、来い!」と表してみたり…自由すぎ!これをひとりで仕切るセリ人とその補助役の2人でどんどん値段が決められていきます。
何をしゃべっているのか、一体何元の値がついたのかはわかりませんでしたが、そのスピーディーさと駆け引きの様子にどんどん惹きこまれてしまいます。値付けした後は女達が勇ましく魚を奥へ運んでいきます。男は海で、女は陸で助け合って過ごしているんですね。
買い付け人だけでなく、色んなひとが見守るのが成功漁港の特徴!
買い付けが終わったらこの紙を貼って運ばれるのを待ちます
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女性もたくましいのです!
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カジキってマグロじゃないの?
「カジキマグロ」と呼ばれる「カジキ」ですが、実はマグロではないというのをご存知でしょうか?ナビは同じものだと信じ込んでいて、「カジキってなんでマグロの味がしないのかなぁ……」なんて思っていたのです。
が、カジキはマグロとは一切関係ないそうで、上あごが長く伸びているのが特徴的です。高速で泳ぐし、どちらも高級魚であるという共通点があるのでカジキとマグロを混同してしまったのかもしれませんね!
突きん棒漁
カジキ漁には色々ありますが、成功鎮で古くから行われているのが鏢旗魚(突きん棒漁)。
ほかにも餌をつけた縄をつなげて魚を獲る「延縄(はえなわ)」、魚が通過するであろう場所に網を張る「刺し網」、沿岸海域に迷路のように網を張る「定置網」などでもカジキを捕獲しますが、突きん棒漁で捕れたカジキは傷の少なさと捕獲してすぐに瞬間冷凍することで新鮮さを保てることから高値で取引されます。
延縄(はえなわ
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刺し網
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定置網
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画像提供:東鯨学堂 |
突きん棒カジキ漁を間近で!
前日漁港にカジキ船がつけているのを見て、そのかっこよさに惚れ惚れしていたナビ。朝5時起きにもめげずに元気に遊艇碼頭遊客服務中心(東鯨学堂2階)へやってきました。
なんとこの日は特別にカジキ漁遊覧船に乗せてもらえることになっていたんです、ラッキー。
ではまずここで鏢旗魚(突きん棒漁)とはどんな漁の方法なのかを説明しておきましょう。
一番特徴的なのは船の先端に頭架を設置していることでしょう。ここに觀魚手と呼ばれるカジキを自分の目だけを頼りに探す人が頭架に立ち続けます。觀魚手がカジキを見つけると船は黒い煙をあげ、頭架の最先端にある鏢魚檯(突き台)へ正鏢手(モリを突き刺す人)が移動。
そして、カジキを捕らえます。
船長さん
ゆっくりと船が出発してから20分も経たずに、ガイドさんが大興奮!
「11時の方向の船から黒い煙があがったぞ!ほら、モリをスタンバイしだしただろう?」と言うのですが、こんな岸の近くにいるわけない!と思うナビをよそに、周りの方達は「カジキが見えた!」と大興奮。ナビもよく海を眺めているとカジキかどうかはわからなかったけど、魚が飛び跳ねています。
「ここにカジキはいる」と確信し、その時を待ちましたが、様子を察知したカジキ君は逃げ果せたようです。
この後にも3時の方向の船もカジキを発見したものの、捕獲には至らず……。約1時間の航海でしたが、2回も逃げられてしまいました。残念がるナビでしたが、この日は波も穏やかでカジキ漁に不向きな天候だったにも関わらず、2回も見られたということはラッキーだったんだそうですよ。
釣りも漁もしたことがないナビですが、カジキの突きん棒漁を見ているとなぜかナビの血が騒ぎだしました。陸地では普通のおやじさんが船に乗るともう格好よくて!!
己の眼力と体力、バランス力、そしてモリを投げ込む正確さ…何かひとつが劣っていても漁は成功しないというまさに乗組員全員のポテンシャルで捕らえるカジキ…。あぁ、海のロマン!
今回ナビが乗船した「晉領號」は6~9月は鯨ウォッチングが可能です。またカジキ鑑賞体験は20人以上の参加者が必要です。費用は089-851-408までお問い合わせください。
カジキを祀る廟
カジキ漁の虜になったナビに成功鎮の方がもうひとつ面白いところがあるよと連れて来てくれたのが「萬善廟」。ここにはカジキが祀ってあるんです!カジキの町として栄える成功鎮ならではですよね。
漁に海へ出て無事に帰って来られますように、そしてたくさん大きなカジキが獲れますようにと願いを込めてカジキの神様が祀られています。が、そこは台湾!神様の頭をなでれば頭脳明晰になり、身体を撫でれば健康に…などなどカジキ漁と関係のない方にもご利益をもたらしてくださるそうです。
また、旗魚祭(カジキ祭)にはカジキの神様が町を練り歩き、カジキ文化の繁栄とカジキ漁の無事&大漁を祈ります。
そして一番の見どころだろうとナビが思うのは元宵(旧暦1月15日)。台東で元宵のお祭と言えば「炮炸寒單爺」という神輿に乗った青年に爆竹を投げつけ厄祓いをするというのが有名ですが、成功ではこのカジキ様がその青年の代わりとなるそうですよ!また、お店の方はいい運がくるようにとお年玉をカジキ様の口にかけるんだとか。
カジキを食べるならココがオススメ♪
小指の第一関節の厚さ!
せっかく成功鎮に来たのなら、おいしい海鮮、特にカジキを食べたいと思う方も多いと思います。
そこで、先日行われた「東海岸旗魚祭&臍橙節」で政府のお墨付きをもらったレストランの中から厳選した2軒をご紹介します。ちなみにカジキは中国語で「旗魚」。この表記を探して注文してみてくださいね。
そして成功鎮の方は「成功鎮のお刺身は分厚いよ!これは新鮮な証。」と口を揃えて言います。ナビは適度な厚さがいいのにと思うのですが…。日本よりもかなり大ぶりなお刺身は3回に分けて食べるのがオススメ。1口目はお醤油もつけずそのまま食べ、2口目はお醤油を、3口目はわさび醤油で食べてみてくださいね。
紅蟳冬紛はMUST食べ♪
まず1軒目はローカルなたたずまいながら、出てくる海鮮すべてがうまい!と台湾人メディアも大絶賛だった「富祥小吃部」。
台東らしく1品が多いので4名以上で旅行されている方にはこちらのレストランをオススメします。カジキチャーハンもオススメで、その他カジキ料理ももちろんおいしいのですが、こちらの看板メニューは「紅蟳冬紛」。カニビーフンとでも訳すこのお料理は胡椒が効いていて濃い目の味付け。ビーフンに絡んだスープはカニのうまみがにじみ出ていて、おいしい。
富祥小吃部
住所:台東縣成功鎮中山路68号
電話:(08)985-1071
三杯旗魚肚
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旗魚炒飯(カジキチャーハン)
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カジキちゃん
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味は本格的! |
よだれが…
もう一軒はカジキ達人「林寶山」の息子さんが経営する「佳濱旗魚」。もちろんこちらで扱うカジキはすべて達人が競り落としてきたものです。
こちらの売りは超低温急速冷凍が可能で、一年中カジキが楽しめるということ。しかもこちらのカジキは日本の高級レストランやホテルへ輸出もしているそうで、台湾政府のみならず、日本の料理人達のお墨付きなんです。また、個人旅行客でも訪れやすいように「カジキづくしセット(旗魚套餐)」650元が用意されています。
お刺身3種盛り、カジキしゃぶしゃぶなどの4種類のカジキを味わうことができちゃいますよ。そしてこちらのもうひとつの謳い文句が「カジキとコーヒーを一緒に味わってください!」しかも今年からカプチーノも始めたそうです。いやいや、コーヒーと刺身はちょっと…と思ったのですが、試してみると、案外合う~。予想外の相性の良さにビックリ!
佳濱旗魚
住所:台東県成功鎮大同路65之1号
電話:(08)985-4899、(093)239-6089
営業:販売9:00~20:00/お食事ランチ11:00~14:30、ディナー17:00~20:00
カジキづくしセット
カジキを使ったお菓子だって~?
カジキケーキ(成功餅)は名前も縁起がいい!
新鮮なカジキを持って帰ることはできませんが、お菓子にしていれば持って帰れますよね?
そこで変わり種お土産をご紹介。
お店の看板上には「モニパン」という文字が見られ、ここが日本統治時代からのお店だということが伺える「味芳餅舖」。お菓子はもちろんパンも売っています。そしてこちらのいちおしがカジキを使ったお菓子類。カジキケーキとカジキエッグタルトです。どちらも新鮮なカジキを餡に混ぜて作ってあって、甘さのなかに塩っ気があり、案外イケる~。話のネタにもオススメです。
ナビが個人的に気になったのが葱パン15元。この安さにノスタルジーなお味!これ、ハマりました。もうひとつ買おうと思ったのですが、売り切れ。お腹が空いた時はここの葱パンを覚えておいてください。
※パンなどが焼き上がる14:30~16:00が狙い目です☆
味芳餅舖
住所:台東県成功鎮中華路133号
電話:(08)985-1838
営業:8:00~22:30
休み:各週月曜日
この看板いい味出しているでしょ?
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時間が止まったままのような入口
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これがカジキ餡!このまま食べてもおいしそう~
11月限定!ネーブルオレンジも栽培されています
ネーブルオレンジ達人の林さん
ネーブルオレンジは底の部分におへそのようなものがあるため、おへそという意味のネーブルがつけられています。中国語でもへそオレンジと直訳する「臍橙」と呼ばれています。台湾でも南投の水里や台中の東勢などで栽培されていますが、台東成功鎮の地質には石灰岩が豊富に含まれているため、成功鎮産のものは特に品質がいいんだそうです。
日本統治時代に台湾に伝えられたネーブルですが、地元の方はみんな日本のものより台湾、特に成功鎮産がおいしいよ~と言うんです。ここは日本代表のナビが実証してみよう!と一口食べてみると…あんまり違いがわからず。どちらも同じくらいおいしい気がするんだけどなぁ。と思いながら気づけば、あと一口、あともう一口と手が伸びる…。どうやら成功鎮産ネーブルオレンジは後を引くうまさのようです。
台湾でも成功鎮産ネーブルは手に入りにくいので、食べたい方は11月中旬~終盤に成功鎮を訪れてみてくださいね。もし台湾に住んでいらっしゃるなら宅配便をお願いすることもできますよ。
オレンジ畑を見せてもらいました
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一面のネーブルちゃん
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今回はカジキを中心にご紹介しましたが、成功鎮には三仙台や卡片教堂、滝がキレイな彩虹瀑布、太鼓演奏が有名な原住民の部落「比西里岸」など見どころはまだまだあります。台東に来たなら、ゆっくりと時間を取ってじっくり成功鎮の町を巡ってみてください。きっと、この風景が気に入るはずです。
以上、台湾東部大好き!葱パンも大好きなナビがお届けしました。