時が止まったかのような心地よい空間で、味わい深いお茶と過ごす時間
こんにちは、台北ナビです。
台北旅行でやりたいことの1つ、それは「茶芸館でお茶」ではないでしょうか?ナビもそんな時にはたびたびお世話になっている「紫藤廬」。本日改めておじゃましてみました。
イメージの中の茶芸館
ユニフォームは元スタッフのデザインとか。チャイナ風がステキ!
茶芸館(台湾では茶藝館)を台湾の国語辞典で引いてみると「茶葉販売店とは異なり、お茶を味わうことを専門とした茶店」とありました。簡単にいえば「台湾茶・中国茶をいただくためのティーサロン」といったところでしょうか?
お茶よりコーヒー派が増えた昨今、台湾茶・中国茶を専門的に扱う店はコーヒーショップに押されがち。数少ない茶芸館もどこかカフェ風、喫茶店風の店ばかり…というのがナビの印象です。そんな中、期待を裏切らないのがここ「紫藤廬」。イメージするお庭があって…池があって…畳があって…何より茶芸館選びには欠かせない「ゆっくりとした時間の流れを感じさせる空間」がここにはありました。
長い歴史、サロン的役割担う場所
通り過ぎてしまいそうになる素朴な佇まい。住所では路地内にありそうですが、入口は新生北路に面しています。目印は向かいの龍安国小。タクシーで行く場合も注意して!
昔ながらの佇まいを残すここは1920年代初めに建てられました。日本統治時代である当時は高官の官舎として使われていたそうです。
のちに現店主の父上に当たる財政部税務署長であり台湾大学の教授であった周徳偉氏の住まいに。経済学者であった周教授の元には、多くの知識人や学者たちが集い、討論・研究の場として使われてきたそうです。1975年、周教授に代わり息子の周渝氏が引き継いだあとも文芸家たちのサロン的役割を担ってきたそうで、多くの文化人を世に輩出してきました。その後1981年に茶芸館として出発。
1997年には政府に回収されるという危機にさらされましたが、保存に向け市民たちが陳情し、古跡として指定されました。2008年には改修も済みリニューアルオープン。現在も単なるお茶の飲める茶館としてだけでなく、芸術や茶芸に触れられる空間として機能しています。
門をくぐると緑いっぱいのお庭。池ではたくさんの鯉が優雅に…ではなく、元気いっぱいに泳ぎ回っています。その奥には藤の棚。店名通3~5月にかけて淡い紫色で埋め尽くされるそうですよ。
そんなお庭を抜けてドアを開けると玄関ホール。ここは受付&会計とショップスペースとなっていて、オリジナルの茶葉や品のよい茶器が並んでいます。帰りにお土産を探してみるのもよいかもしれません。
ここから2階へ上がるとオフィス。現在は催し物時の開放を除き一般開放はしていないとのこと。インテリアが気になるところですが、ちょっと残念。
そしてまっすぐ別室へ行くと展示スペースになっていて、定期的にアーティストたちが個展を開いているそうですよ。
ホールを左へ抜けると落ち着いた板張りの空間。
ここはテーブルと椅子が並ぶ喫茶風スペースになっているので、靴を脱ぎたくない、ヒザが痛い、なんて人はこちらをリクエストするとよいかもしれません。
さらに奥へ進むと畳の空間が。
日本統治時代の面影を残す素朴な店内は、当時をしのばせる家具やランプが備えられ、古き良き時代を彷彿させます。リノベーションカフェに見られるような造り込んだレトロさはなく、ただただ時代とともに大切にされてきた物たちがそのまま今もここに残る、そんな雰囲気です。そしてそれが妙にしっくりときていて、ここに来れば心ごとスッとこの空間に溶け込んでしまいそうになる自分がいるのが不思議です。心から落ち着ける、これが「紫藤廬」最大の魅力ではないでしょうか?
お茶をいただきましょう
こだわりが細部にまで行き渡っていることが感じられるのが水。店主がさまざまな地域の水を調査し、最もお茶に合うものを厳選して使用しています。「一般の水と違い、甘みがあり滑らかで柔らかくて、温かい」というそれは烏来のとある泉の水。
茶葉はおなじみの凍頂、梨山、阿里山といった台湾銘茶の産地から、台北近郊の茶処である坪林、木柵、石掟、また素人のナビにはなじみない天梯嶺など台湾各地のさまざまな茶葉を用意しています。ほかにプーアル茶などは中国の選ばれた茶園と契約し、独自のブランドとして提供。このように店主は自分が求める味が出るように常に努力されているようです。各茶葉にはそれぞれ名前がつけられているのも茶葉に対する愛着を感じます。
オーダー時はまずお茶の種類を選びましょう。詳しくなくても大丈夫!メニューには日本語で丁寧に説明が記されています。が、たくさんありすぎて何を頼んだらいいのか困っちゃう、という初心者には以下がおすすめです。
聞香杯にお茶を入れます。茶杯はナビたちの手前にもうあります
紫藤(凍頂ウーロン茶)320元/人店名が冠されたお茶は中部南投県の鹿谷郷が産地です。降水量が多く、年間を通じてよく霧がかかるこの地方の中でも凍頂山一帯の土壌は優れているとか。凍頂ウーロン茶らしさを味わえる最適なお茶です。焙煎もしっかりされているため、深い香ばしい香りが特徴的。6煎めまで味わえるというお茶は、飲むたびに異なる香りと味が楽しめます。中国茶の師範でもあるナビ編集長もおすすめです。
梨山初曉(高山ウーロン茶)350元/人台湾で最も高いとされる海抜1700~2600メートルにある茶区、梨山。その中でも海抜2200メートル以上の高地で栽培されたものがこのお茶です。そのため飲み干したあとも、山頂にいるようなすがすがしさ。すっきりとさわやかで甘さと香りの余韻が楽しめます。お茶初心者のナビでも飲みやすい、そんな茶葉でした。
お茶を煎れてくれたスタッフの劉行中さん。すでに10年以上の経験があるそうです
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1煎めはスタッフが説明を交えながら淹れてくれます。2煎めからは自分でトライして!
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種類は多くないけれどお茶菓子(茶食)にもこだわりがあります。お茶といっしょにぜひオーダーしてみてください。メニューに価格(いずれも60~80元)はありませんのでオーダー時に確認してみてください。また数に限りがあるため品切れの場合もあるそうです。こちらも併せて確認を。
鳳梨酥(パイナップルケーキ)80元スタッフのママが手作りしているというオリジナルパイナップルケーキはかわいい❤型。オリジナルテイスト、包種茶味、紅茶味の3種があります。お茶味は餡にもお茶が練り込まれていてふんわりとさわなかな茶葉の香りが口の中に広がります。お土産に売ってないのが残念!
茶梅(お茶に漬けた梅)80元茶農家の自家製だという茶梅は、甘みと酸みのバランスが絶妙!1粒が大きくて、ほおばるだけで幸せな気分に。こちらはお土産の販売もあり、オーダーを受けてからパッケージしてくれるそうです(80元/袋)。
麻荖(ゴマのかりんとう)80元ちょっと固めの台湾風かりんとう。白ゴマ、黒ゴマがギッシリ。甘くなく、わりとあっさりめ。ポイポイ食べられちゃいます。
茶葉料理もいただけます
ランチタイム、ディナータイムには食事もできます。
メニューは多くありませんが、週替わりセット(月~金)1種と4つのセットメニューがあります(330~380元)。セットメニューは日替わり小鉢、スープ、ご飯、スイーツがつき、2ヶ月に1度更新するそう。今回はベジタリアン・チキン・ポーク(茶葉料理)・魚からチョイスすることができました。ナビは週替わりのセットをいただいてみました。
香滷凍頂牛腱片 330元牛スジ肉の凍頂ウーロン茶漬
柔らかなお肉からはあまりお茶の香りは感じられませんでしたが、八角の風味が香る台湾らしい一皿。また今回は湯葉の煮物・ポテトサラダ・つみれスープ・五穀米・仙草のショウガスイーツがセットに。どれもヘルシーなのがよいですね。さらにサービスでお茶。今日は紅茶に似た風味の東方美人茶でした。こちらは工夫茶ではないので、「茶芸」を楽しみたい方は別途お茶をオーダーしてくださいね。