日本人の間で、あまりに有名な和昌茶荘。質の良い茶葉や茶器、内装、お客様まで、徐々に失われつつある古きよき台湾が、ここには文字通り、そっくりそのまま残っています。
こんにちは、台北ナビです。
日本人の特に観光客の皆さんの間で、おそらく知らない人はいないのではないでしょうか。日本だけでなく、台湾のメディアでも頻繁に紹介される台湾茶の名店「和昌茶荘」をご紹介します。
賑やかな東区の一本内側は、懐かしい台湾
こう見えても60歳過ぎてます。
忠孝東路そごう付近は、台北を代表する賑やかな通りの一つ。そごうの裏は、あまり入ったことはありませんでしたが、今回訪れてみて、意外に昔を保っているのに驚きました。きっとこんなに賑やかになる前から、ご商売を続けているご近所さんが、そのまま残っているのでしょう。
そんな巷に、緑色の明るい看板が目立ちます。解りにくいというご意見もありますが、そごう側の大安路を市民大道に向かってはいり、2本目の巷を右折し進むと、右側に緑の看板が見えてきます。入り口にいる赤いオウムの「ハローくん」が目印です。昔ながらのとなり近所は、皆親しい知り合いだそうです。
いつも必ずお客さまが
人の集うところは、良い気が漂い、更にまた人を寄せるのでしょうか。「和昌茶荘」にお邪魔すると、いつも必ず何人もお客さまが座ってお茶を飲んでいます。
そして、オーナーの張正忠さんが、いつもどおり立ったままで、エネルギッシュにどんどんお茶を入れています。ナビがお邪魔したのは午後2時ごろでしたが、既に2~3組のお客さまが、お茶を飲みながらマッタリなさっていました。食後に立ち寄られたのでしょうか。
2つあるテーブルのうち、入口側の席では、数人の台湾の常連さんが、いつものように集って午後のおしゃべりを楽しんでいます。奥のテーブルで接客中の張さんも、たまに台湾語のおしゃべりに参加なさいます。
生前お店に来た日本人に、日本語で昔の台湾のことを語ってくれた先代の張慶さんからのご友人が、今もこうして集って、おしゃべりに花を咲かせるそうです。
試飲大歓迎
「和昌茶荘」の茶葉の品揃えは、台湾茶が中心です。オーナー張さんは、「試飲したいものはありますか?遠慮なく!」と常に声をかけてくださいます。一人がリクエストすると、そこにいるほかの人も、試飲のご相伴に預かれますが、興味のあるものがあったら、積極的にリクエストしてみましょう。
立ったまま、エネルギッシュにお茶を入れ続ける張さんは、ひっきりなしに動いているので、なかなか写真に捉えることができません。(笑)
驚くほどの抑え目価格
どれをリクエストしようかと緑色の価格表を拝見すると、その価格の抑え目なところに驚きました。張さんにお聞きしたら、立地は地価が高いエリアでありながらも、お店は自分のものでお家賃がかからないこと、茶葉は、球型茶はほぼ親戚関係がやっている茶園から、ほかのものも、昔から関係の深い茶園から買っているので、今でも仕入れ値は大して変わらないこと、
そして何より、昔からの常連さんが沢山いるので、時代の流れだけに乗って、むやみに値上げをしたら、その方々に申し訳ないと思うから、とのことでした。
先代から引き継がれた張さんのお人柄でしょうか。人情味溢れる、ほほえましい理由ですね。
和昌のお茶を試飲
早速、試飲させていただくことに。緑色のオーダー用紙に書かれた値段がかなり控えめなので、「和昌茶荘」のお茶はどんなお味がするのか楽しみになってきました。ほかのお客様も一緒なので、皆さんに交じって、色々なお茶を試して見たいと思います。
●台湾茶代表格、烏龍茶
今や台湾のお茶といえば、高山茶。海外でもその名をとどろかせています。どの茶行でも、必ず扱っている高山茶系をまずは手始めに試飲させていただきました。緑の茶葉メニューのなかで、高山茶のリストの中では、高いほうから2番目の、阿里山冠軍100g/400元をリクエストしてみました。
ほかのお店のものと比べると、発酵がしっかりめです。焙煎もややしっかりめで、甘みが豊富です。このお値段で、この美味しいさとは、正直驚きました。お茶殻も、高山茶らしく瑞々しく戻っていて、弾力と厚みがあります。
次は、
文山包種茶をリクエスト。文山包種茶の大きな茶缶に、「文山清茶」と書かれた古いラベルが。昔は、包種茶を、その香りの軽やかさ清らかさから、「清茶」と呼んでいたことがあったそうで、お店の歴史を感じます。
雲霧100g/160元を淹れていただきました。このお値段で、文山包種茶の特徴である軽やかな花香とふんわりとした味わいが良く出ていて、とても良いとおもいました。惜しげなく毎日沢山飲めるお値段で、この味と香りです。嬉しくなってきました。
●張さんご家族とともに歩んだ香片(ジャスミン茶)
香片が、緑の価格表の真ん中に載っていて、三等級もそろっていることと、茶名が「毛峰」とか「銀針」のように大陸茶のようであるのに興味を挽かれ、お聞きすると、ここの香片は台湾製で、和昌茶荘が昔から手がけている伝統茶の一つだそうです。
多くのお店で、香片は値段表の端っこに一種類だけというのが多いので、これは、期待が膨らみます。ちなみに、茶名は先代がつけたものをそのまま使っているそうで、ちょっとノスタルジックなネーミングなのかもしれません。
毛峰100g/160元を淹れていただきました。やかんで沸かした高温の湯でいれているのに、渋みがなく、却ってまろやかで美味しいと思いました。
ジャスミン茶は、苦く渋くなりやすいのですが、かなり美味しいです。けっして淡く淹れているわけではなく、かなりしっかり濃い目なのですが、やわらかで甘みがあります。刺激が強めに出がちの最近のジャスミン茶の傾向とは、少し違っているようです。
茶葉は彰化県産の緑茶を使い、台湾南部で採れたジャスミンの花のみで薫花を施しているのだそうです。ジャスミン茶は、本来なら薫花(生花を使った香り付け)を5~6回繰り返し行うのですが、大陸産のものが多い現在では、全てジャスミンの花で行わず、うち何回かを香りの強い別の花で行って薫花の回数を減らし、コスト削減を図ることがあると聞いたことがあります。
ジャスミンの花100パーセントで、しかも六薫(生花を使った香り付けを6回)しているという贅沢さ。美味しさには理由があるのですね。
香片は、台湾のお茶の歴史、すなわち和昌茶荘の歴史と深く関わっているお茶で、張さんご家族の家業は、今のお店を台北に開く前は、ジャスミン花の栽培と卸、そして、薫花(生花を使った香り付け)だったそうです。
以前台湾では、香片の生産が大変盛んで、台湾産の香片は沖縄に大量に輸出されていたそうです。40年程前までは、沖縄で飲まれていたさんぴん茶の9割は、台湾から輸入したものだったそうで、そのころはなんと、中国大陸にも輸出していたそうです。
以前、台中に住んでいた張さんご家族は、当時、ジャスミンの花を台中から台北の迪化街に車で運んで、薫花をするお仕事をしていたそうで、すごい重労働だったとお話ししてくださいました。台湾のお茶の歴史を感じますね。ところで、沖縄のさんぴん茶って、「香片(シャンビェン)」が語源だったそうで、勉強になりました。
●焙煎強めの球形烏龍茶
次に、黒烏龍茶の紅水烏龍100g/267元をお願いしました。球型烏龍茶は、殆ど張さんのご親戚が作り、焙煎もしているそうです。この黒烏龍茶は、昔のままの炭焙煎の技術で、焦げて苦くならないように低温でじっくり焙煎してあります。
体を冷やす性質を落とし、刺激を抑えて、胃に優しく、消化を助け、食事の後などに口の中がさっぱりするよう、強めの味と香りに仕上げてあります。水色は暗め。でも、意外と口当たりはまろやかで、培煎茶好きにはたまらぬ香ばしさです。
高山茶に押され気味ですが、培煎烏龍茶ファンにはたまらぬお味、木柵鉄観音も外す事ができません。
木柵鉄観茶100g/133元は、昔と変わらぬ、力強さとまろやかさを兼ね備えた美味しさでした。同じ焙煎強めの球形烏龍茶でも、黒烏龍とは少し違って、木柵鉄観音特有の、フルーティーさと木の実っぽい香ばしさがあります。それにしても、このお値段。改めて驚きです。
●蜂蜜の香り、白亳烏龍茶(東方美人茶)
白亳100g/267元を淹れていただきました。このお店の白亳烏龍茶の中では、3ランクの内一番お安いものでしたが、お味はなかなか美味しかったです。
白亳烏龍茶の特徴である蜜香とともに、発酵が高めのお茶特有の、フルーティーな熟香もあります。以前、お値段の安い白亳烏龍茶をいただいたら、パンチのない紅茶のような味がしたことがありました。和昌さんの白亳は、そんなことはありません。これなら、とっておきの存在だった白亳烏龍茶を、デイリーに楽しめます。
●歴史ある台湾紅茶
もう既に、かなりの種類を飲ませていただきましたが、張さんは、それでもどんどん進めてくださいます。エネルギッシュに「紅茶を試してみたら?!」と、阿薩姆(アッサム)紅茶150g/50元を淹れてくださいました。
え!?と耳を疑うほどのお手ごろ価格。これはさすがに…どうなんだろう…という思いがよぎりましたが、「うちの紅茶はとってもいいんだから!」という張正忠さんのお勧めのことばで、紅茶を味わってみました。こっくりとしたピュアな濃さが魅力的な味でした。濃く出すと、渋味がきつく、全発酵とはいえ刺激が強いものもあるのですが、これは濃くまろやかです。
ナビが十数年前に台湾に来て間もない頃、慣れないながらも茶行に入り、他のお茶ともに、大きな缶に入った紅茶を、なんで台湾なのに「阿薩姆」なのだろうと疑問に思いながら、恐る恐る試飲させていただいたときの、あの味と香りがそのまま蘇ります。
当時、自分の知っている海外ブランドの紅茶とは違った、台湾の紅茶の味と香りを不思議に思ったものです。「阿薩姆」は茶樹の品種の名前ですが、日本統治時代の日本人が、インドのアッサム地方から大葉種の茶樹を取り寄せ、栽培に適した土壌と気候の南投縣日月潭、魚池あたりで栽培して紅茶を作り、成功したそうです。
ですから紅茶は、台湾茶の中でも古い歴史を持ったお茶なのです。茶葉のままでも良いですが、ティーバッグにも同じ茶葉が入っていて、便利です。
和昌茶荘のティーバッグ3種
和昌茶荘には、香片、烏龍茶、紅茶の3種類のティーバッグがあります。お客さまからのリクエストが途切れると、張さん自ら「ティーバッグも試してみて!」と積極的に紹介しています。50パックで180元というお値段に、またまた驚かされますが、職場にお土産で配ったり、会合にも気前よく持参して振舞ったりできるお値段だと思います。
張さんいわく、「これはお店の名刺代わり。店名も住所も電話も、包装に全部載っているから」!
以前、桃園国際空港から直行でお茶を買いに来たお客様は、運転手さんにこのティーバッグを一つ渡して、「ここに連れて行ってくれ」と言って、空港からタクシーで乗り付けたそうです。良い物は、人を惹きつけるのですね。普通の名刺より、効果的かもしれません。
いろいろ試飲した後の総合的な感想は、価格を超える質の高さに尽きます。
製茶方法は、市場の好みや売り手のセールスポイントによって、年々少しづつ変化してきているように感じますが、和昌茶荘のお茶はどれも、以前味わった昔ながらの味と香りが守られていました。
お店の通りに面した棚には、お手ごろな茶器や茶道具が無造作にディスプレイされています。あまり内装に気をつけていないところがまた、和昌さんの魅力でもあるのです。
超お買い得3点セット 1200元
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これもお買い得セットで、200元。どれもほしくなってしまいます。
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台湾のツウは、気に入ったものを単品で少しずつそろえて、最後に自分のセンスで組み合わせる人が多いです。 セット買いも便利ではありますが、色々見立てて、自分流がかっこいいのです。 |
どれも、普段使いには十分です。じっくり使い込んで、可愛がりたい親しみが持てる茶器たちでした。