万年筆好き必見!日本人が創めた文房具屋さんが台湾人の手に引き継がれ、台湾ブランドに成長。台湾で長く愛用されているボールペンもこのお店から!
こんにちは、台北ナビです。
台湾のお土産に文房具屋さんをのぞく方も多いのではないでしょうか?今回ご紹介するのは、高雄で歴史ある旧市街「鹽埕區」にある「SKB 文明鋼筆股份有限公司」。ナビ編集部員が高雄へ旅行した時に偶然見かけて、お土産にボールペンを買い求めたんです。とっても気に入ったので、より深くSKBのことを知りたくて、取材してきました!
MRT「鹽埕埔」駅からすぐのところにあるこのお店、外観がスタイリッシュで新しいので、最近できたお店?と思ってしまいますが、実は長~い歴史があるんですよ。
ちょっと敷居が高い??
入り口は二箇所あります
MRT「鹽埕埔」駅出口1を出て左手、駁二芸術特区と反対側の方向へ進むと交差点の左側に高いビルが見えてきます。ここが「SKB」。白と黒を基調にしたスタイリッシュなビルはお店の入り口を見ると、ちょっと高級そう。外のガラスから中の商品をのぞいてみると、値段も書いていないので敷居が高く感じますが…。外でガラスを拭いている店員さんが「請進(どうぞ)~」と笑顔で声をかけてくれたので、不安をよそに入ってみることに。
中に入ると…外観とは全く違ったポップでおしゃれな文房具が目に飛び込んできました!しかもシンプルなボールペンの値段を見てびっくり。ボールペン7元!? 驚きの値段です。そんなナビを見て、經理(マネージャー)の林冠宏さんが「安いでしょ?私達の文房具屋は大手で、生産量が多いこととコストに気を配っているからこそ、この値段が実現できるんですよ。」と説明してくれました。1972年に誕生した「202秘書原子筆」は、なんと昔から40年以上値上げせず、ず~っとこの値段なんだそうです!
店先に置いてある機械に引き付けられたナビ。それをじっと眺めていると、林冠宏さんが「それは昔工場で使っていた機械ですよ。
店内にまだまだ骨董品があるから紹介しましょう」と奥へ案内してくださいました。
店内はまるで博物館!
こちらが店内の地図です
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裏には近くのお店のマップがあります!
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まずいただいたのはお店の中の案内図。まるで博物館のようにコーナーが分かれています。そして所々に収蔵品があるんです。
それでは、大勇路側の入り口近くから見ていきましょう。入って正面に見えるのがべスパのバイク。中国語では「百吉發」と書きます。1970年から1980年にかけて大流行しました。「SKB」ではこれで営業したり、商品を運んだり、集金をしたりしていたんだそう!おしゃれですよね~。業務用バイクがべスパだったなんて、きっと注目の的だったに違いないです。
おしゃれなバイク
続いて窓ぎわに展示されているのは巨大な万年筆の模型!1960年代の22型の万年筆を再現した模型です。木に金属が組み合わさって本物感が出ています。成績優秀な小売店に贈られ、展示されたものなんだそう。インテリアとして全く違和感がありません!
次のコーナーへ行ってみましょう~
次のコーナーは芯に関係のある機械が二つ置かれています。
一つ目は、芯の量を計算する「筆芯計算工具」という道具、二つ目は芯をテストする機械「古董試寫機」です。
この機械、まだ動きますよ~
この「古董試寫機」は1970年代に工場でインクの出方やどのくらい書けるかなどを測定するために使われていたという機械。すごいのはスイッチを押すと今も動くこと!
今回特別にそのテストの様子を見学させていただきました~。
この箱、何が入っているかわかりますか?
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実はボールペンの先の部分!以前はこのように箱にいれていたんだそうですよ~
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今度は更にお店の奥へ。ここはナビが最も気に入ったコーナー。昔の石造りの階段がそのまま残されています。この階段を見るだけでも昔にタイムトリップしたかのような気分になります。
こちらが万年筆を買うともらえる石鹸!!
横の棚にはレトロな昔の箱が展示されています。林冠宏さんが真ん中の赤い箱を開けて、台湾語で「肥皂(sat-bûn)ですよ。」と紹介してくださいました。
これ、実は当時万年筆を買ったお客さんにプレゼントしていたんだそうです!「今でも香りがするけど、たぶん使えないよ。」とのことでしたが、レトロな雰囲気がとってもすてき。これほしい~!と思ってしまいました。残念ながら今は非売品です。
この後ろのショーケースに展示されているのが1970年代に発売されたボールペンやマーカーペンなど。展示を見ていて、ナビも子供の頃、父がまさにこのマーカーセットを買ってきてくれたことを思い出しました。当時は日本でも高価な品だったと思います。とても嬉しかったのを今でもよく覚えています。柄の部分に色だけがついているシンプルなマーカーです。今は、この柄の部分に絵をつけるようになったんだそうです。
ここが昔の店舗だった部分
最後は、歴代の万年筆が飾られているコーナー。隣の部屋へと進みます。
創業当時は、お店はこの場所だけだったんだそうです。今の半分ほどのスペースで、昔は販売コーナーが小さかったことがわかります。
1959年に「SKB」の自社ブランドとして初めて販売された830型シリーズを始め1960年に最も売れた22型など歴史ある万年筆が壁のガラスケースの中に展示されています。当時の公務員のお給料が300元だった時代、万年筆はなんと75元だったんだそう!かなり高価ですよね。1971年にボールペンの製造をはじめ、次第に大衆的な文具の製造へと拡大していったのだそうです。
こちらも展示品ですが、買うこともできます!
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販売コーナーの細かな飾りもかわいいです
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前身は日本時代に!
お店ではこのようなスライドも放映されています
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レトロなポスターも
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「SKB」の前身は日本時代に荒川五郎氏が開いていた「緑屋文具店」。このお店が台湾人の盧榮火氏に引き継がれ1951年に「文明書局」となりました。当時は日本から書道の筆などを輸入して販売したり、紙などの文具を主に販売していたのだそう。その後1955年に万年筆の販売を開始。店名も「文明鋼筆股份有限公司」と改められました。
ホームページを見ると、途中万年筆の製造を中止した時期もあるよう。不思議に思って、どうしてですか、と尋ねると、社長が将来ペンを使う習慣が変わり、マーケットも変わるだろうと考えて転換しようと思ったとのこと。しかし、店名はずっと「文明鋼筆」のままなので、万年筆はないの?とお客さんから聞かれることもあり、2012年に製造を再開したのだそうです。
今はパソコンやスマホを使う人が多く、文字を書く機会も減ってきています。そして万年筆って高そうだし、使うのが難しそう、と考える人も多いですよね。
「SKB」では、そんな溝を埋めようと、どの万年筆でも試し書きできる、カートリッジをつける、アフターサービスをする、などと努力しています。
文字入れもできますよ~
選り抜きの万年筆はガラスケースに!
次に店長の林姿吟さんが商品を詳しく紹介してくださいました。
レジを取り囲んでいるのが、選り抜きの万年筆コーナー。このコーナーのものはほとんど文字入れが可能なんだそうです。材質によってレーザーで文字入れをする場合は工場に持って行くため、すぐにはできないそうなんですが、お店の機械で文字入れすることができる材質のものはお店でできるそう。時間も一本15分~20分で出来上がります。プレゼントにぴったりですよ~。
こちらが文字入れの機械
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こんな感じに出来上がります
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すてきな万年筆です~
店長の林姿吟さんおすすめで、特別な逸品が真鍮の万年筆。長年使い続けると、酸化したり、手の油によって、世界にひとつだけの色になるんだそうです!林冠宏さんが「これは「養筆」という概念ですよ」と紹介してくださいましたが、筆を育てていくなんてすてきですよね~。
ナビがふと手に持った白い万年筆、店長の林姿吟さんによると、「これ、日本人に大人気なんですよ~!」とのこと。お値段も1000元とお手頃です!駁二芸術特区が近いので、日本人のお客さんも来店するそうです。60%が外国人観光客、40%が台湾のお客さんだそうです。日本でも万年筆ブームなので、台湾オリジナルの「珍珠奶茶」「龍虎塔」「國旗」などのデザインのものはお土産にもおすすめです。
笑顔のすてきな店長です!
店長の林さんはもとダンサー。香港ディズニーランドの舞台で踊っていたこともあるそう!
「紙の上で踊る万年筆は、ダンスと共通点があるの」と話していました。すてきな言葉ですよね。
不定期にボールペン作りイベントもあります
このイベントはフェイスブックで告知されるので要チェック!
不定期に行われているイベントがボールペン作り。今回特別にナビも体験させていただきました。
まずは芯にインクをいれるところから始まり、空気を抜く、部品を選んで組み立てる、という順番で作業が進みます。キャップなど三つ好きな色を選んで組み合わせることができるので、いろいろな色のパターンができて楽しいです!
「SKB」は万年筆だけでなくてボールペンも有名。万年筆の型がボールペンの技術にも応用されているんだそうです。アクリルを使って透明なボールペンを作ったのも「SKB」。長年支持されてきた理由の一つによく書けることがあります。形にもインクにも、細部にわたってこだわりがあるんですね。
歴史ある万年筆です!
日本人が始めた文房具屋さんが台湾人の手で、愛され続ける台湾ブランドを売る文房具屋さんへと成長していった「SKB 文明鋼筆股份有限公司」。お店の方々が自社の歴史と商品に熱意と深い愛着を持って紹介してくれる姿に胸が熱くなりました。
日本時代から大切に引き継がれる歴史と商品をナビも多くの人に伝えていきたいと思い、お店を後にしました。
以上、台北ナビ(湯山千里)でした。