リネンの編み込みに心も緩く、和らいでいくようです
こんにちは、台北ナビです。
日本統治時代、東部鉄道は海岸山脈と中央山脈の間の花東縦谷という細長いエリアに敷かれました。鉄道によって人や物資の移動が行われたため、花東縦谷は海岸山脈の東側、すなわち東部海岸より栄えてきました。東部海岸は遅れをとり、未だに移動はバスか車になります。が、美しいものが多く残される海岸線沿いには、亜麻線(リネン)を編み込み、素敵なバッグを仕上げる工房とショップがありました。
ナビたちはこの日、花蓮の新社からバスで南下しました。
東部のバスはのんびりしたもので、途中成功港のあたりでお手洗い休憩もありました。乗ってくるお客さんは台東に近づくにつれて増えていきましたが、運転手さんに事前に行く場所を伝えておいたからか、なんとお店の前で停まってくれました。先に向かいの麺の店で昼食を済まし、ごめんください、と入ります。綿麻屋はその店の佇まいからして、心が和む空気が漂っています。
龍惠媚(Nikare)さん
ショップの主は龍惠媚さんで、アミ族の名はNikare。お父様が付けてくれた名の意味は葉の露。ショップを始めたのは2011年からですが、それ以前は台東馬偕紀念醫院で10年間看護師を勤めた後、心臓科の助手として11年、さらに5年は導管を中心にアシストしてきました。今の仕事と全く畑違いのように思えますが、Nikareさん曰く「編む」(縫合担当でした)ことに大きな違いはないとのこと。編むことにかけて特別器用だった彼女は、病院勤めの頃から、趣味で編み物をしていました。2003年には「台灣第一屆原住民工藝大賽」で「編織類」の3位に入賞しています。
ショップを造ったきっかけは、育ての親である父の介護もあったそうです。アミ族の両親のもとに生まれた彼女は、兄弟姉妹が多かったころから、幼い頃に栄民(蒋介石とともに中国から渡ってきた退役軍人)の下に養女として送られました。養父はとても優しく、常にNikareさんのことを一番に考えていたので、その養父の老いに寄り添っていきたいと思ったそうです。
ショップのきっかけ
近所で皆おしゃべりしながら編んでいます
養父の介護のほか、Nikareさんは、アミ族の集落である隆昌部落のためにできることはないかとも考えていました。現在は若い人は45歳、ご年配は87歳まで、Nikareさんが教えた39名のアミ族の女性たちが棉麻屋の製品作成に携わっていますが、当初は彼女一人でリネンを編み込んでいました。
そこに現れたのが「公益平台基金會」董事長である嚴長壽氏。台北ランディスホテルの総裁でもあり、台湾ビジネス界の重鎮である嚴長壽氏が、僻地や原住民部落の婦女の生計收入を助ける公益に援助を行い始めたところ、Nikareさんとつながり、現在の棉麻屋の建物を購入。リノベーションを施した後、Nikareさんに安価で貸出してくれたことで、彼女は周辺の女性たちの作品をまとめて、展示販売するにいたったのです。
ショップの切り盛りで忙しい今ですが、商品の最後はNikareさんが仕上げています。店の片隅には作業台があり、お客さんが途切れた時、彼女はいつもここで手を動かしているのです。
店名は「綿麻屋」とありますが、入口を入ったところは亜麻線(リネン)が中心の商品が置かれています。リネンの材料はフランスから。ショップにはフランスからのお客さんも多く、日本からも最近は増えているそうです。リネン100%のバッグは、最高の質感で、思わず肌を摺り寄せたくなり、大きめのバッグは、結び紐や布の折り込みなどの調整によって、TPOで形を変えて持つことができます。この自然色に惹かれて、ここを訪れる人は日々増加中なのです。
Nikareさんのもとには、台北だけでなく、日本やフランスからも声がかかるそうですが、東河郷隆昌村にあるショップまで、皆が来ることこそがここの経済発展にもつながり、集落の女性たちの助けにもなるから、と今のところ他所に店を出したりなどは全く考えていないとのことでした。
来年の夏には海の浮き玉900個にライトグレーとブルーの色をつけて、海岸沿いのアートを行いたいとのこと。浮き玉900個をくれた漁師さんに感謝しつつ、そのアートを見るために多くの人たちがここ隆昌村を訪れてくれることを願っているとのことでした。
バッグにはちょっとしたマークがあって、どの女性が編んだものかわかるようになっているそう。ご年配の方の編んだバッグは、適度なゆるみと柔らかさがあり、何とも言えず優しい仕上がりで、微笑みがこぼれてきます。87歳のお婆ちゃんが編んだ財布も並んでいます。
この編み目も整然としています
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87歳のおばあちゃんが編んだ財布は、こちらの箱の中にありました
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帽子は2800元~、リネンバッグは小さいものは3500元~。7000元~は少し大きめになり、大きいものは1万元以上になります。Nikareさん曰く、ほとんどの方が先にバッグを買い、そして次に帽子を買いに来る、とのことでした。
帽子の棚。左はコットン、右はすべてリネン製
コットンの部屋
建物の中央は綿製品が中心で、こちらのバッグはリネンではなく、綿65%、ナイロン35%とのこと。リネンと同じ細やかさですが、バッグは少し重みがあります。が、コットンの醸し出す雰囲気にも頬がゆるみますね。
奥の部屋
ショップの後方の部屋では、リネンの小物入れが、団子のように並んでいました
買い物に訪れるなら…
ナビもバッグと帽子を購入しましたが、支払いは現金のみ。毎週水曜日が女性たちの給与日で、少しでも生活の足しにでもなればいいなと現金で渡しているからとのこと。近所にはATMもないようなので、購入目的で行かれる方は、現金を忘れずに携えていってくださいね。
以上、台北ナビでした。