創業100年の人情味溢れるお茶卸問屋で、正統派台湾茶を買ってみたくありませんか?試飲は当然、日本語もOK!
迪化街から横道にそれた、比較的ひっそりとした場所にあります
こんにちは、台北ナビです。
観光の喧騒から少し離れた迪化街の北の方に位置する「王瑞珍茶業有限公司」は、お店そのものが台湾茶の歴史、と言っても過言でない昔ながらの正当な茶問屋さんです。迪化街一段から路地一本入ったところにあるこの老舗の茶行は、今では本当に数少なくなっている昔のままの内装で、近隣の問屋さんに溶け込むように店を構えています。
100年以上、4代続く歴史ある茶行
カウンター奥の缶の中に茶葉がたくさん入った今では珍しいお茶屋さんのスタイルです
こんな見出しを書くと、ものすごい印象を受けるかもしれませんが、実際の「王瑞珍茶業有限公司」は路地に静かにお店を構える、しごく平常心に満ち溢れたお茶屋さんです。
このお店は、今は4代目当主の王静珊さんとご主人の邱佳信さんによって営まれています。 戦後間もない民国37(1948)年の営業許可証が残っていて、それだけでも凄いのですが、お店自体は日本統治時代から営まれています。今でも日本人のお客様が大変多く、一人一人のお客様と心からのお付き合いをしていると聞いて、昔と変わらぬお商売の態度と方針が脈々と続いていることを感じました。
現在のご当主である王静珊さんは、日本語が話せて、しかも気さくで、そしてとてもお綺麗です。正直、老舗の茶問屋の当主というイメージからはかけ離れた見た目のお方なのですが、泡茶台の後ろに座ってお茶を淹れ始めると、たちまちすごいオーラが放たれます。器具を扱う手つき、物腰、表情全てが物語る、深い経験と知識。それもそのはず、若い頃からお茶に関しての経験や知識を現場で叩き込まれたそうで、その時代に培われた嗅覚や舌の確かさは、今に続く商売の繁栄によって証明されています。
邱佳信さんがその日、そっと見せてくださった昔のアルバムのなかには、煤けた焙煎部屋にたたずむ王静珊さんのお写真が。ナビは、思わず「夏子の酒」を思い出していました。
お茶を入れるときは厳し目の表情
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暗い焙煎室で光を放つ当主
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民国41年(1952年)の台北市が発行した営業登録証明を見せてくださいました。貴重です。こんな資料も、このお店の歴史からしてみれば、新しい方だというのが面白いです。また、同時期の店のお写真も。さっぱりした外観で、お空が広く、当時の感じが伝わってきますね。今は、周りはもう少し高い建物に囲まれて、しっとりした感じのご近所となっています。
常連客と強~い絆で結ばれています
ナビが訪れた日は平日午後でした。しかも、お店は賑やかなところから少し奥まって、看板も目立たない控えめな店構えです。にもかかわらず、お話を聞いていた2時間ほどの間には、お茶を買い求める日本からのお客様が、ひっきりなしに訪れるのには驚かされました。
元警察官だったと言う邱さん。どんなに忙しくても笑顔で迎えてくれます
しかも、常連さんといいますか、どう見ても観光客風な方々が、迷いなくお店に入ってきては「こんにちは、ご無沙汰しております」というご挨拶とともに、サクサクと「いつもの」お茶を買い、「ではまた」、とお帰りにになるのです。飲み比べたり、迷ったりすることもありません。もう、買い求めるものが決まっているようなのです。
ナビが滞在していた間、実に5組ほどの日本からの常連さんがお茶を買いにきました。安定の来客ペースに、ナビもびっくり。
そして、その方々は初めてさんではなく、日本からの常連さんで、親子連れがほとんどでした。親御さんの代からこのお店で買っていて、それが子や孫の代にも伝わってゆくという、良い消費者連鎖を垣間見ることができました。
最近のお茶屋さんが、時代の流れとともに内装を変え、代替わりとともに商売の理念も変わってゆくことが多い中、「王瑞珍茶業有限公司」は、オーナーご夫妻がまだ若いこと、そして、昔と変わらぬ正直な商売の姿勢が、多くのお客様を安心させることにつながっているのでしょう。
日本から老夫婦のお客様が、毎回「今年が最後かもしれない」と言いながら、毎年来てくれていたのですが、最近ご主人の具合が悪くなって来られなくなってしまったんですよ、と親身になって心配している邱佳信さん。また、店の前で地図を広げ、しばらく動かずにいた日本人観光客に、愛犬を抱っこしながら日本語で話しかけ、道を教えてあげるご当主王静珊さん。このお二人の人情味が、多くのお客様を引き付け話さないのでしょう。
台湾茶100%
厳選されたお茶ばかりです
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高さ60センチはある大きなパックに入れられた茶葉。なかなかこの大きさのパックは見る機会がないのでびっくり
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「王瑞珍茶業有限公司」で扱う茶葉は、プーアール茶を除いて全て台湾製のみ。仕入先の茶農家とは長年のお付き合いなので、安全な茶葉を安定した量を仕入れることができるそうです。
焙煎については、以前は炭焙煎の炉があったのですが、今では店の奥にある電気焙煎機で行っています。温度や時間は入ってくるお茶の状態で調整するそうで、全ては経験の積み重ねによって得た技術です。お茶の出来に関しては、信頼する茶農家と製茶師に任せ、仕上げは自家で行います。お値段は、品質により違ってきます。4代目当主の静珊さん自身が品茶(聞茶)を行い、等級分けを行います。
奥には二台の焙煎機。これで、仕入れた茶葉を必要に応じて、必要なだけの焙煎をかけます。焙煎技術は経験で培ったもので、とても難しい技術なのだそうです。
この焙煎機は「冰箱」(冷蔵庫、という意味)という通称があるのですが、この辺も、台湾らしい面白さがあると思います。真面目な職場にも、かわいいユーモアが。
焙煎の違いにより、味も香りも違ってきます。焙煎度は清香、中火、濃香の3種類があり、清香は低い温度で30分以上、中火は高い温度で2~3日、濃香は高い温度で3~4日焙煎を行います。元々は福建省出身の王瑞珍茶業有限公司らしく、鉄観音は5年寝かせた茶葉を高い温度で長時間焙煎するという、昔ながらの伝統製法を取っています。
焙煎がかかると色が濃くなって行きます
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深焙煎と中焙煎のお茶
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長い付き合いの、信頼出来る仕入れ先
台湾茶に特化した品揃えは、非常にシンプル。観光地や、お茶屋さんのメッカとなっている永康街などで目にするお茶の品揃えとは一線を画しています。邱佳信さんは、自分たちの目が直接届くお茶のみを売りたいから、とおっしゃいました。
店のお品書きに入っているお茶であっても、納得いかなければ販売を断念することも。メニューの項目をそろえるために、他から調達することもしません。信用で繋がっている生産者とのみお付き合いするという方法を堅持して、扱うお茶のクオリティを保っているのです。
メニューを拝見し、「高山茶」というのを見つけて懐かしく感じたナビ。地名のつかない「高山烏龍茶」という替わりに、素敵な名前をつけて販売するお店も多くなっていますが、昔ながらのお茶屋さんではまだ見かけます。
以前、高山茶の産量がまだ少なく、ざっくりと阿里山茶、梨山茶、くらいの商品名しかなかった頃に標高の高めところで取れたお茶は「高山烏龍茶」という商品名で販売されていました。今のブランド高級高山茶と比べるとずいぶんリーズナブルでなかなか美味しく、ワインで言えばハウスワインのような存在のお茶でした。ブランド茶が増えてゆく中、昔ながらの仕入れ先を大事にしている「王瑞珍茶業有限公司」ならではの品物なのだと思います。
試飲のポイント
どれを買ったらいいかわからないときは、試飲をさせていただきましょう。焙煎があるもの、香り高いもの、まろやかなもの、などの好みがあるときは、それを伝えるとよいでしょう。お茶を選ぶための簡単な日本語なら、ある程度は通じます。
価格一例(150g単位)水仙900元
陳年老茶1500元
鐵觀音400元
鐵觀音(茶王)750元
鉄包種750元
阿里山金萱茶500元
東方美人茶750元
蜜香紅茶400元
文山包種茶400元
凍頂烏龍茶(中火) 250、350元
凍頂烏龍茶(清香) 250、300元
高山烏龍茶(清香) 350、450元
阿里山烏龍茶(清香) 800元
杉林溪烏龍茶(清香) 950元
玉山烏龍茶(清香) 1000元
梨山烏龍茶(清香) 1250元
「王瑞珍茶業有限公司」の魅力
店内のスペースの脇に、大きめの籠が置いてあり、中には当主ご夫妻の結婚式の年から寝かせているお茶が入っていました。秘蔵のコレクション茶(非売品)です。老茶を自分で作っているそうで、娘さんたちが嫁いだ時などの記念日のために寝かせ続けているのだそう。とても素敵な仕込みだと思います。茶行を生業とする、おしどり夫婦のお二人にぴったりのコレクション。落ち着いた女性当主に、茶目っ気あるご主人は、とても素敵なカップルです。
定期的に会いに来たくなるオシドリ夫婦。幸せを分けてもらったような気分になります
扱うお茶の確かな品質と、お二人の人間的魅力が、このお店の人気の鍵だとナビは思います。これだけの魅力があれば、お店の内装のリニューアルなんて、全然いらないです。笑
清朝時代から日本統治時代、国民党政府時代と幾つもの時代を経て、変貌を遂げてきた迪化街エリアも、再び現代のリニューアルの波にのまれつつあるなか、ここだけは、いつまでもこのままでいてほしい、と強く願うのはエゴイスティックでしょうか?そう思うのは、きっとナビだけではないはずです。
以上、台北ナビがお届けしました。
愛犬のケビンも元気です♪
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ひっそりと陳列されているのですが、ドライマンゴーも取り扱っています!
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