70年以上の歴史ある食品商店で高品質なお醤油や梅ジュース、豊富な中国茶まで、日本統治時代のノスタルジックな背景とともに楽しんでしまいましょう
こんにちは、台北ナビです。
台湾にきたら、からすみや中国茶はお土産ショッピングには欠かせないマストアイテムですが、ナビはいつも違うお店で別々に購入していました。が、一軒で両方、良質の品物が手に入るお店を発見しました。からすみで有名な「伍中行」が永康街エリアで茶行をオープン。70年の老舗の食品業者が営むお茶屋さんは、一体どんななのか、期待に胸を膨らませ、潮州街へGO!
最近の潮州街
観光客で賑わう信義路側の永康街を、真っ直ぐ師範大学にむかって入ってゆくと、潮州街にたどり着きます。この辺りは金山南路のバス通りから車で入れるので、ある程度の交通量はありますが、渋滞することも無くとても静かで、附近に中国茶を扱う茶行が増えてきています。MRT「古亭」駅と「東門」駅からも徒歩でぶらぶらと散策できる距離ですし、新しい小さな店構えもよく目にします。この潮州街でも、特に最近ちょっと目立つ存在の、木製の門構えに赤い文字がよく映える「伍中行」をご紹介します。
「伍中行」ってあの伍中行?
歴史あるお店の看板です
この店名、二二八和平公園近くのからすみで有名な「伍中行」を思い出しませんか?ナビも真っ先に思い浮かんだのは衡陽路の伍中行でした。
社長の呉傑熙さんにお聞きしてみると、衡陽路の伍中行はもともと呉さんご家族がオーナーで、今は手放してもとの従業員さんたちが引き続き商売を営んでいるとのことでした。なるほど、です。
僅か30年で老店(老舗という意味の中国語)といわれる台湾で、この年月色あせずに光を放ち続ける「臺灣伍中行」、いったいどんなお店なのでしょう。期待は膨らみます。
お店の歴史
「伍中行」は、ナビが20年ほど前に台湾に来たときには、既にすごーく歴史のある存在でしたが、呉さんにお聞きしてびっくり、なんと創業は1945年。70年もの歴史がある老舗なのでした。
前身は、日本人の西村氏が日本時代に開いた食品を貿易する会社だったそうですが、終戦後、5人の台湾人がお店を引き継いだので、5人の中国人で「伍中行」という名前にしたそうです。そう言われてからお店のロゴをみれば、5つの中が円を描いています。すごくわかりやすいロゴに納得です。
それに、伍中行と言う名前になってからが70年なので、前身である西村商店時代を合せると、更に長い歴史のある名店になります。
日本人には、からすみで有名になっていますが、伍中行はもともと食品一般を貿易、販売していたので、お醤油、米、干し大根、缶詰等の日常食品、そして沢山のお茶も扱っていたとのこと。ここ潮州街の臺灣伍中行は、初代オーナーのお孫さんである呉さんが、この歴史ある伍中行の今までの物を整理し良い物を世の中に出していこうということで、もともとのお仕事を辞めてオープンしたお店なのです。
店内はいいものの宝庫
足を踏み入れると、まずは木製のカウンターがあり、食品を販売しています。そして、お店の奥行きの深さに驚かされます。間口が小さいので、こんな大きな奥行きを期待していなかったのです。
木製のカウンター。食品はこちらで。
|
|
奥行きがあって、広い内部
|
入って直ぐのカウンター周辺には主に食品が置かれています。有名な天然モノからすみだけでなく、お醤油、食用油、濃縮ジュース、干し大根などもあります。主な商品をざっとご紹介しましょう。
野生のからすみ
~からすみ~伍中行といえば、日本人にとってはやっぱりからすみ。ところが、他のお店と一線を画す潮州街の臺灣伍中行のからすみは、なんと100パーセント天然物。少しお値段は張りますが、野生のボラからとるからすみは、養殖ものとはお味が全然違います。お土産にも、頑張ったご自分へのご褒美にも、是非どうぞ!
~お醤油~まず目に付いたのは、お醤油。寝かせの長さによってお値段も違っています。お味見をさせていただきました。お醤油をこんな風に味わうのはあまり無いことですが、ひと嘗めして納得。ナビがお店の人なら、お客様に是非ひと嘗めしていただきたいと思わずにはいられない深い深い旨みです。
たまり醤油と普通のお醤油の中間くらいで、癖は無く、濃厚ですが後味すっきり。煮物ではなく、つけたり上からかけたりして直接味わいたい感じです。ナビは焼いたお餅に、カメラマンさんは冷奴に合うと思いました。お醤油大好きな方には、きっと喜ばれると思います。ナビは自分に一瓶即購入しちゃいました。
~フルーツジュース~いわゆる新鮮果実ではなく、味付けし保存食のようにしたものを長時間煮出し煮詰めるという方法で作られた梅ジュース。ナビは麻辣火鍋店なや屋台などで同じようなものを飲んだことがありますが、その違いにびっくり!こちらも深―い味わいです。
水割りやロック、若しくはお酒と割っても美味しそう。お子さんにもよさそうです。悪いものが入っていない、天然自然な濃縮ジュースです。また、スターフルーツジュースも非常にイケました!
~干し大根~台湾料理でナビの大好物、菜脯蛋に入っている干し大根も、作りたてではなくじっくり寝かせた年代モノ。こっくりと濃い色に変わった様をみて、ナビは思わず、「大丈夫なんでしょうか?」といってしまったのですが、オーナーはにっこり笑って「これ美味しいんですよ!」とおっしゃいました。まろやかで角が取れてとても美味しくなっているのだそうです。
伍中行ノスタルジックワールド
お店の奥に入ると、そこにはお茶ワールドが広がっています。棚いっぱいにディスプレイされた茶壺は、社長の呉傑熙さんの小さい頃からのコレクション。先代のものもあるそうですが、大半はご自身のものだそうです。先代、お爺様の影響で、小さい頃から茶壺(急須)を集めていたのだそうです。なんて渋い趣味のお子さんだったのでしょう。でも、そんな小さい頃から、台湾の食文化、お茶文化に天然自然に慣れ親しんできた呉傑熙さんの知識や味覚、茶器を見る目は確かです。
茶器がディスプレイされているガラスの小さなショーケースは、なんだかどこかで見たことがあるなと思っていたら、日本の昔のガラスケースでした。木製の枠にガラスがきれいにはめ込まれています。日本時代に残されたものが、大事に今ここにあるのですね。ちょっと感動を覚えました。
老舗の実力 お茶がすごい!
お店には、老茶がいっぱい。
他では手に入らない、貴重品です。しかも、売れてしまったらそこまで。品物の補充はありませんから、まさに一期一会のお茶との出会いが期待できるのです。十数年前から老茶が価値のあるものとして市場に出回り始め、偽物まで出現するほどの人気です。伍中行のお茶は正真正銘、古い年代のお茶が良い保存状態でそのまま残されています。
奥のカウンターでお茶をいただきました
とっておきの老茶をいただく
ナビとカメラマンがお茶好きと聞いて、呉さんはとっておきの老茶、70年前の緑茶を入れてくださるとのこと。
一体、悠久の時を経た緑茶はどのようになっているのでしょう。さすが、時代を超えたお茶のワンダーランドのような伍中行、のっけから凄いものを出してくださいます。
70年物の陳年緑茶は何ともいえない外観!風化したプーアール茶のようです
70年緑茶をサイフォンで
穏やかで現代風におしゃれな呉さん
社長の呉傑熙さんが自ら淹れてくださるそうで、期待は膨らみます。どんな茶器を選ぶのかと楽しみにしていたら、なんとコーヒー用のサイフォンを使って淹れるとのこと。
呉さんによると、保存状態の良い高級茶ではあるけれど、長年置いてあるため古い臭いがついてしまっているので、サイフォンで対流させながら散熱を促し、余分な古い臭いを飛ばして美味しい部分だけを残して味わう、という方法が、このお茶には一番適しているのだそうです。
淹れあがったお茶は、色味的にはまるでプーアール茶です。ナビは、70年前の緑茶、しかも散茶状なので、寝かせがすぎて味が残っていないのではなどと想像していたのですが、これがなんともこっくりとした深みのある味わいで、飲んだ後に微かに緑茶の名残ともいえる爽やかな香りが口に残ります。これは美味しい!と思わず絶賛。
若いお茶と違い、飲んですぐに感じる活発な爽やかさや香りではなく、じっくりお口の中で転がして、ゆっくり飲み下してから暫くして段々とわかってくるスローなよさがありました。これは初の体験です。
見た目の濃い水色に驚きますが、とても味わい深く、口に含んで暫くしてから感じる味香りが素晴しかったです
このほかにも、貴重な老茶がいっぱい。新竹の芎林の老茶は、メディアでも取り上げられた事のある、有名な老茶で、1940年代のものだそうです。マニア垂涎の逸品です。
新竹の芎林の老茶は愛好家の間でも有名
|
|
民国84年ものの小紅袍は100g小分けパックで
|
高山紅茶をいただく
次は、高山紅茶を淹れてくださるとのこと。最近よく出回るようになってきた高山紅茶ですが、紅茶としてはお味がやさしすぎるので、もの足りなくかんじてしまい、あまり好きではなかったのですが、先ほどの70年緑茶が予想外の美味しさだったので、こちらも期待大です。
水色は外国の紅茶ほど色味が赤くなく、オレンジ色がかっています。そして、味香りは意外にも福建省の紅茶にとてもよく似ていて、ナビは、どことなくカカオを連想させるような香りがあると感じました。これも美味しい!さすが農業王国台湾、高山紅茶も進化しているのだなあと思いました。
それにしても、珍しいお茶が豊富にそろっていて、うれしくなります。自分の茶畑で作っているという高山茶をはじめ、ウンカに噛まれた茶葉で作った球形茶、貴妃茶など、売っているお店はあっても、それらが一同に会しているお店はあまりありません。
種類豊富で小分けが嬉しい
伍中行の高山茶 雪頂翠 3500元
歴史あるお店のストックとして大事に保管された数々の老茶はとても魅力的ですが、お値段がはるので沢山は買えません。伍中行のお茶は、小分けで売られているので、色々なお茶を少量買って楽しめます。
また、老茶のみならず、現代のお茶も充実。合歓山に自分の茶園を持っているという伍中行ですが、そこで作った高山茶は自慢の逸品です。
武夷黄奇、烏崬山黄枝香 各1500元
また、さすがは食品貿易商。
大陸のお茶も、驚くほど充実しています。最近、中国のお茶は高騰し、とても高価になってしまっていますが、小分けで少量試してみるなら、伍中行の小さめパッケージはとても適していると思います。
断捨離とはいうけれど
本日ここにお邪魔し、一番思ったのは、物をきちんと手入れし、長くとっておくということの意義でした。
日本人で昭和生まれのナビは、気がつけば物が溢れた世の中になっており、他の人と同様に、如何に物を減らし、省き、破棄するかという課題に、個人的に何十年も取り組んできましたが、台湾に来てからは、台湾の人々が、日本の以前のものにとても親しみを感じ、火鉢や茶箪笥など、色々なものをとても大事に長いこととっておいてくれているのを身近に感じ、驚きを隠せませんでした。そして、ここ伍中行も、日本の物のみならず、お祖父さんの時代からの商品の在庫やコレクションを、大事にとっておいた結果、今貴重なものとして世の中に受け入れられているのです。
整理整頓、シンプルに暮らすことも大事ですが、物を大切に、以前のものに愛情を注いで使い続けてゆくのも、いいものだなあ、としみじみ思うナビでした。
お茶の取材のつもりでお邪魔した伍中行でしたが、お茶にとどまらず、色々な意味でとても楽しく奥深い取材となりました。皆さんもぜひ、台湾にいらしたら伍中行に行かれ、美味しいお茶やお醤油、天然のからすみを手に入れ、台湾の思い出を増やしてみてはいかがでしょうか。
以上、台北ナビがご紹介いたしました。