80年の時をを経て生まれ変わった林百貨。台湾のMIT商品、文創商品など、台湾の「今」を代表する品々が勢ぞろい!
みなさんこんにちは、台北ナビです。
2014年6月14日の林百貨リニューアルオープンのニュースは日本でもマスコミで報道に取り上げられるなど、海を越えて話題となっています。今日はその林百貨をすみからすみまで、たっぷりとご紹介しちゃいましょう!
創立者は日本人実業家、林方一氏
外にはたくさんの人が集まっていました。
林百貨(ハヤシ百貨店)の歴史は、1930年代台湾の近代文明の幕開けと共に始まります。この頃の台湾は電気、鉄道、水道などインフラ設備が整い、大正デモクラシーの自由な風潮のもと、ファッション、音楽、映画などの文化芸術が発展している時期でした。そんなモダン最盛期である1932年、山口県出身の実業家である林方一氏が、台南市末広町二丁目(現在の台南市中西区忠義路二段付近)に林百貨店を創立します。
林方一は明治16年(1883年)生まれの山口県出身、幼い頃に両親を亡くし、若い頃から家を離れ多くの仕事を経験した苦労者でした。林氏は明治45年(1912年)4月に台湾に渡り、持ち前の経営力と鋭い洞察力を活かし、呉服店「日吉屋」の店主、馬場徳次郎の協力を得て、小さい商店を開業することになります。
4階の林咖啡。レトロな雰囲気が漂います。
お店の経営が軌道に乗り、その後新たに2つの店舗を開業、さらに4つの会社への投資が成功したことで莫大な利益を上げました。
そして、昭和7年(1932年)12月15日、ハヤシ百貨店は、通称「銀座通り」と呼ばれていた台南一の目抜き通りであった末広通りに南台湾初の百貨店としてオープンし、「七重天」と呼ばれていた台北市栄町の菊元百貨店と並び、南北二大百貨ビルとして注目を集めました。しかし林氏は百貨店オープン直前に病で倒れ、自らハヤシ百貨店のオープンを見ることなく、1932年12月10日に台北で亡くなりました。
ハヤシ百貨店の設計者は、当時台南州地方技師兼台湾建築会台南州支部長だった梅沢捨次郎。
関東大震災を契機に増えた鉄筋コンクリートにより造られました。その当時はむき出しのコンクリートが一般の人々に受け入れられず、壁面に石やタイル貼りを使って、石とレンガの模様に似せる工夫をしたそうです。リニューアル後の建物にも、当時のタイルをそのまま残している部分があるので、どこにあるか店内をよ~く観察してみてくださいね。
昔の床タイル(右)と新しいタイル(左)の模様がちがうのがわかりますね。
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6階屋上の壁には空襲の爆撃跡が残されています。
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そしてこのハヤシ百貨店の建物は、当時台南で最も高いモダンな建築で、地元市民の間では俗に五棧樓仔(Gō͘-chàn-lâu-á,ゴーツァンラウアー、5階建てビルの意味)の愛称で親しまれていました。
実はこの建物は当時台南で最高層だった6階建てなのですが、最上階の面積が小さく5階建てに見えることからこう呼ばれたんですって。またこの建物は当時の台南において唯一近代的エレベーター(台湾語:流籠)や手動式のシャッターを備えていた建物でもありました。
敗戦により廃業~そして今、ふたたび歴史が始まる。
6階屋上には神社や空襲の爆撃跡が残されています。これは、エレベーターを上から見下ろすことができる所。取材時は閉鎖されていました。
太平洋戦争中、ハヤシ百貨店は市の中心地であったため米軍の空爆を受けました。今でもその空爆跡が残る外壁を見ることができます。そして敗戦によりハヤシ百貨店は廃業。終戦後は国民党政府の台湾製塩総工場や塩務警察総隊の事務所として使用され、屋上は防空軍備用に使われていましたが、その後事務所の移転により1980年代以降は空きビルとなっていました。それから時を経ること1998年の6月26日、ハヤシ百貨店は市定古跡に認定され、2010年1月より台南市と文化部が8000万台湾元(約2億7000万円)かけて修復作業を行うこととなりました。この修復作業に関しては、米軍によって爆撃された跡や当時のままの床材の一部などを残しつつ創業当時の姿を再現、そしてついに2013年1月に完成したのです。
修復工事完成後、台南市政府文化局により経営業務委託運営業者の公募が実施され、2013年7月に台南市のファッションビルFOCUSを運営する高青開発股份有限公司が委託経営権を取得し、同ビルを賃貸することが発表されました。
そして最初の開業から81年を経た2014年6月14日、ついにハヤシ百貨店は文化クリエイティブ販売施設「林百貨」として生まれ変わり、新たな歴史の一歩を歩み始めたのです!
お待たせしました!店内をご案内しましょう!
このように時を越えた歴史物語を持つ林百貨は、台湾各地のご当地グルメや台南地元のファッション、ギフトなど、MIT(メイド・イン・タイワン)の文創商品(クリエイティブグッズ)を中心に取り扱っており、これまでの百貨店とは一線を画した内容となっています。店内は「百貨店」といっても現代の百貨店に比べて面積は広くありません。そのためお客さんの人数規制を行なっており、ナビたちが訪れた時はオープンからすでに2ヶ月程たっていた平日だったのですが、夏休みということもあって入店するのに少し並びました。
さあ、前置きはこれくらいにして、早速1階からご紹介しましょう!
1階は台湾各地のご当地グルメが集まるフロア。台南の地元名物はもちろんのこと、台湾各地の厳選された名産品が並べられています。その一つ一つどれもがパッケージもおしゃれで洗練されています。また中には林百貨でしか手に入らない限定パッケージのものもあって、ばらまき土産にしてはもったいないかも・・・思ってしまうほどのかわいさ。
フロアの隣には京都の抹茶専売店宇治‧三星園 「新町 稻荷」があり、店内の雰囲気作りに一役かっています。
店員さんおすすめ「府城鹽咖啡」は人気だそうですよ。
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台南の老舗「萬川號」の碰餅。ギフト用の箱入りもあります。
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ナビが気になったのは、「愛玉」と「山粉圓」の実。自宅で愛玉ゼリーが作れちゃうんです!
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昔の人が飲んでいたという健康食品「麵茶」。いろんな種類の穀類を混ぜて粉末状にしたもの。
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さて、これが人気のエレベーターです。
当時台南の人たちとってエレベーターは大変珍しく、話題の観光スポットとなっていたそうですよ。「さあ、今日は家族みんなでエレベーターに乗りにいくぞ!」なんて言ってたんでしょうね~。時代の流れを感じますが、そんな当時の人々に思いをはせるように、みんなこのエレベーターに乗るために並んでいます。エレベーターは6人乗り。お時間がある方はぜひ!
昔ながらの針式の階数表示板がかわいいです。
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階段壁に丸い穴が開いているのは、エレベーターの空気穴だそう。
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台湾のデザイナーズブランドグッズ、文創商品(クリエイティブグッズ)、台南で有名な奉茶カフェのフロア。
ブランドは台南地元のブランドが中心に出展され、そのほか台湾各地で活躍する著名なクリエイティブデザイナーのグッズもずらり。また林百貨と各ブランドのコラボ商品や林百貨オリジナルグッズはここでしか手に入らないレア商品。とにかくどれもセンスが良くてみているだけでも楽しいのです。これらすべての商品のデザイン性の高さには驚くべきものがあるなあ…と、ナビは見ていておもわず感心していました。
迪化街の民藝埕のグッズ。
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昔なつかしのドーナツ盤レコードをモチーフにした時計。凝っていますね。
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台湾の古いお家にある網戸を模ったはがき。
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木の温かみを感じますね。
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洋服、ファブリック、アクセサリー、台湾コスメなど流行ファッショングッズのフロア。こちらも台南発ブランドのショップが多く出店しています。また林百貨と各ブランドのコラボ商品や林百貨オリジナルグッズもあります。
「Kan's」はおしゃれなドレスが揃います。
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元気な女の子をターゲットにした「&by TAN&LUCIANA」
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こちらは台南の老舗レース屋さん「明林蕾絲」。
今回林百貨のオープンに先立って店内に飾られているレースカーテンの製作を担当しました。白いレース地に台南市花であるホウオウボクをあしらった絵柄は林百貨のコンセプトである「鳳凰絹地」を表しています。その当時林百貨の周りはホウオウボクがたくさん咲いていたそうですよ。
そのほか、アクセサリー、台湾コスメ、台灣茶奶茶4℃カフェがあります。
4階 台南好文化
カフェ、CDショップ、書店、美術骨董品、展示スペースのフロア。
林咖啡は台南の「正興咖啡館」により運営されており、おいしいコーヒーがいただけます。広々とした空間で一息つきましょう。
「風潮音楽」は台湾の民間音楽やヒーリング音楽などを製作するレコード会社。今回は林百貨の店内オリジナルBGMを手がけたそうです。書店にはかわいい葉書、台湾に関する書籍が、また美術骨董品を扱う「森古典雅集」も一見の価値ありです。展示スペースでは作品展示や月に1度、各界著名人を招いて講演会が催されています。
展示スペースでは展覧会や講演会が開かれます。レトロな床タイルがすてきでしょ。
5階 台南好美味
5階はレストランフロアです。
高雄を拠点に店舗を展開している「大手焼き居酒屋」、カフェレストラン「cocorico」があります。大手焼き居酒屋はおでんのお店、ビールや日本酒もあります。そしてcocoricoは洋食レストランのお店。
店内に入ってみると右奥に黒い鉄の階段がありました。これは6階屋上に登るために当時使われていたそうですよ。
6階 台南好風景 デパートの屋上に神社が!
林百貨に来たら必ず6階の屋上まで上がってみてください。この6階こそが林百貨の歩んだ長い歴史を最も感じることができるフロアなのです。
6階屋上に登ると台南の街の景色が望めます。
6階には当時の米軍の空襲を受け壊れた壁が保存されています。また地面からつきでている棒のようなものがあるのですが、それは戦後防空軍備用として使われていた時の銃の射撃台でした。そして、奥に進むとそこには神社「末広社」があります。神社本堂は新しくつくられたものですが、その周りに置いてある黒っぽい石は当時のまま。祭られていたのは商売繁盛の神様であるお稲荷様だったそう。
当時6階は一般客への開放はしておらず、関係者のみがこの神社へ参ることができたそうです。そして神社横の突き出た建物は、エレベーターを上から見ることができるそうですが、残念ながら立ち入り禁止でした。日本時代から現在に至るまでの様々な歴史の痕跡を目の当たりにして、歴史の流れを感じますね。6階にはそのほかオリジナルグッズショップ「HAYASHI Shop」もあります。
1945年3月1日に本町(現民権路)と末広町(現中正路)一帯が米軍の空襲を受けたそうです。
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6階からは台南の市街が見渡せます。1930年当時はここから安平の海岸が見えたそうですよ。
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ここはエレベーター機械室。透明ガラスでエレベーターが眺められるそうですが、残念ながら入れませんでした~
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「HAYASHI Shop」ではオリジナルグッズや台湾みやげを販売しています。
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歴史と文化を感じる林百貨。
いかがでしたでしょうか?林百貨は過去の歴史と新たな歴史を繋ぐ新しいスタイルの百貨店。これから台南の新しいランドマーク的存在になること間違いなしです!
また林百貨には台南の人気デザイナーズショップのテナントが数多く出店しているので、あちこちのお店を回るのが面倒なナビには、とりあえず林百貨に行けば合成帆布 蘑菇 layoo・・・なんでもある!というのが便利だったりもします。なので日帰り台南観光でショッピングにあまり時間が取れないという方にもおすすめですよ。
以上、台北ナビでした。