若手デザイナーが創り出す洗練されたデザインと実用性を兼ね備えた新しい竹製品
こんにちは、台北ナビです。
本日ご紹介する「Tek-sià設計工作室(現在は「Drii design 三點水文化創意」に名称変更)」は、竹の素晴らしさを台湾のみならず、世界へ発信している若手デザイナーグループです。
本日は、そのデザイナーのお一人である林桓民(Camo)さんが、ナビオフィスまで作品を持ってやって来てくれました。早速、お話を伺ってみましょう~!
ヤングデザイナーは先輩後輩コンビ
オフィスに颯爽と現れたCamoさんは、拝見するところとてもお若いご様子…失礼ながら年齢を伺ってみると、26歳とのこと!
本日同席できなかった相方の林文柄さんはさらにお若い24歳(!)だそうで、お2人は台南にある南台湾科技大学で出会った先輩と後輩という間柄なんだとか。ちなみにCamoさんは現在兵役中とのこと。今回は貴重なお休みをナビのために割いていただきました。
台湾で有名な竹の産地といえば、その名もズバリな台湾中部の竹山でが、お2人は台南の出身。竹との接点はどこにあったのでしょうか?
もともとはホームページやグラフィックなどの平面デザインが専門だったというCamoさんですが、大学院の指導教官である王文雄先生(「Tek-sià設計工作室」の総監督)が千葉大学で自然科学を専攻・研究し、竹にとても熟知されていたということから、竹山に行く機会を得たのだとか。そこで竹の魅力に魅せられ、その後毎週末ごとに竹山の工房に通い、1から竹細工の技術を学んだのだそう。竹細工の技術習得は奥深く、1年目は竹を棒状に切り出していく基礎(竹條)などを、2年目は竹を重ね層にして編み上げていく技(積層竹)などを学習。全てをマスターするには4つの段階があるそうですが、コツコツと身に着けていったということです。そして現在は、台南から新たなるアイディアを発信しているそうです。
「伝統的な技法と最新のデザイン性が出会うのは難しい」とCamoさんは言います。しかし、そこに面白さを見出したCamoさんは「Tek-sià設計工作室」を開始。古くから台湾で生活に密着している竹という伝統素材を使って、日常に使える優れたデザインを創り出していきたい、そんな想いがあります。それは作品に如実にあらわれており、世界中で高い評価を得ている所以でもあります。
「Tek-sià」は結成まもないデザイングループでありながら、すでに各国で高い評価を得ています。2008年台湾での「第一代デザイン展」を皮切りに、2009年「香港国際ギフトショー」、2010年「東京インターナショナルギフトショー」、2011年「イタリアミラノファニチャーショー」などなど各種展示・展覧会に参加。さらには、台湾のOTOP大賞や第一代デザイン展などで各種賞を受賞するほどの実力。これからが楽しみなデザイングループでもあります。
竹の魅力
木はおよそ100年をスパンとし成長していきますが、竹は早く3~7年で材料として使えるまでに成長します。そんな竹は古くから台湾生活に密着した台湾文化の象徴でもあり、またどんな形でも形成できる可能性が高いと言います。また、種類がとても多く、それぞれ特徴があり、おのおのの特色を生かした素材選びが作品作りにつながっていくのだそう。ちなみに、日本の竹は柔らかく、中国の竹は脆く、コロンビアの竹は肉薄そう(竹というと、アジアなイメージがあったので驚き!)。その点、台湾の竹は密度が高く変形させやすく、竹細工にとても適しているのだとか。各種竹の特性を生かし、さまざまな作品が生まれています。
魅惑の作品、ご紹介~!
それでは、「Tek-sià」の素晴らしいモダンデザインの数々をご紹介いたします。
<bendboo> 「竹を使った家電」がテーマの卓上ライト。竹の柔軟性を利用した緩やかなカーブが上下にスライド、上部ライトの角度が自由に変えられます。読書の際には上から、部屋を照らしたいときには真ん中あたりに設定して壁へ反射、不使用時には下にスライドして収納、といったように用途に合わせて使える便利モノ。
ちなみに、薄く見える竹部分、切り出したまま使っているかのように見えますが、実は積層竹という技術で棒状の竹を重ね合わせて板状にしているんですよ!
<竹包管卓燈>
伝統的な竹椅子から発想を得た卓上ライト。まるでいくつもの短い竹を金具でつなぎ合わせたようかに見えますが、実は長い竹が曲がっているだけ。竹をくり貫き薄くして曲げ、角度をつけてあります。これも竹の柔軟性が成せる技。従来のように90度にコの字型に曲げるのではなく、違った角度をつけ、ねじれたS字のような美しさが出せました。竹本来の節の美も健在です!
<足孔>
「どんなに素晴らしいデザインでも使えないものは残念」という想いから生まれたルームサンダル。輪切りになった竹は、人の体重を支えるため、特に丈夫なものを選んであります。きれいに削られた竹は見た目の美しさだけでなく、足裏のツボ押し効果もあるという一石二鳥。そうそう、昔は青竹ふみってよくやっていましたよね!!履くだけで健康に、歩くだけで美しくなれそうです♪
<BFAN>
モダンデザインがお洒落なシーリングファン。羽は緩やかなカーブが必須ですが、中心と外側とではその角度が微妙に違います。その違いも竹の柔軟さをもってすれば問題なし!積層竹の技術で3層に重ねた竹ですが、しなやかに丸みがでています。4枚の羽が重なる中央部分は花のイメージ。ステキです!
<爆竹>
2011年の「イタリアミラノファニチャーショー」に出展した吊るしランプ。竹の切れ目から見える内部の色と外部の色のコントラストがきれいです。実はコレ、作業中の失敗から生まれたんだとか。竹割り技術を応用して、切れ目を入れていただけだったのが、竹を反らせるとパックリと割れてしまったんだとか。しかし、これが予想外の美しさを生んだことからこの作品に。竹が組み合わさった形もさながら、さまざまな角度の割れ目から漏れる光がより爆竹を連想させてくれます。ピッタリのネーミング!
<balance>
伝統工芸のひとつである、籠を編む技法で作られたブリーフケース。竹を薄く剥いでひも状にし、長い竹を編み、さらに短い竹を重ねているそう。黒い部分は皮で、手作業でひと針ひと針縫い合わせているそう。
<竹包管提燈> 置いても使え、懐中電灯として持ち運びもできるライト。持ち手部分は持ちやすいように薄く削り、また手に馴染むよう丸みがつけられています。この丸み、長い竹を竹筒の丸みに合わせてグッと曲げたもの。竹のしなやかさを感じます。
<弓曲>
2010年「東京インターナショナルギフトショー」出展作品。マッサージ器具です。プラスチックと違い、竹のしなやかさが適度な力加減を与え、ほどよいツボ押し効果が期待できそう!
<鵝卵>
見るだけで、触るだけで癒されるという竹の特徴をさらにパワーアップさせたUSBホットカイロ。自然素材なので肌にも優しくホッと温まれそう~♪
<雨讀>持ち歩いて美しく、使って便利なメジャーです。計測部分は角度がつけてあるため、計る物のジャマにならないのがポイント。 雨のしずくのようなデザインもイイですよね~!
<hanger>
大人の服も子供の服も、滑りやすいキャミソールやスカートだってOK!のハンガー。自由自在な竹の性質が生きています。しかも美しい!
Tek-sià+=竹舎
ほかにも、花の芽のような靴べら「春芽」やマッサージ器具「竹健」など、さまざまな作品があります。また、竹のさらなる可能性を求めて面白い研究・実験も積極的に行なっている彼ら。ペンチの持ち手を作る用法を応用して作られた「夏衣」(マット)や「Blossom」(鉛筆立て)など、デザインの幅は現在も進化中。ただ伝統を守り次世代へ届けるのではなく、伝統を受け継ぎながら、新しさをプラスしてさらなる創意工夫を届けるデザイングループ、それが「Tek-sià」なのです。最後になりましたが、彼らの名前「Tek-sià」とは台湾語で「竹舎」という意味だそう。竹の家という名の工房から、さまざまな作品が世界へ飛び立っていきます。今後が楽しみなグループですね。
以上、台北ナビでした。