竹山伝統の竹産業を守る竹山生まれの職人さん、と思いきや実は宜蘭生まれ、竹山に魅せられて定住を決めちゃったんです!
こんにちは、台北ナビです!
今日は台北を飛び出して台湾中部の南投へやって来ましたー!台北から台湾高速鉄道(新幹線)に乗って1時間、台中駅から車で20分も走ればもう南投県に入ります。
今日の目的地は、そこからさらに南下して、南投県の一番南に位置する「竹山鎮」。ここは、その名が示す通り、日本統治時代から台湾でも有数の良質な竹の産地として知られています。台湾新幹線の駅のすぐ近くから高速道路に乗り、竹山まではあっという間。竹山のお隣りは、台湾大学の広大な実験林が広がり森林浴のメッカとしても知られる渓頭、風光明媚な観光地として知られる日月潭、原住民文化と遊園地が融合したアミューズメントスポットの「九族文化村」などがあり、見どころもたくさんです。
ナビは竹山を訪れるのは初めて。街の中心部には名産の竹を用いた観光工場がいくつか立ち並び、なかなかの賑わいですが、そこを抜けると美しい緑が広がる広大な田園が目に飛び込んできます。高台から見渡す竹山鎮は、まるで緑の絨毯のようです。そして、そこかしこに点在するのが竹林。今日お邪魔する取材先は、竹山の竹産業に貢献している職人さんたちなのです。
試作品が山積み!
まず最初の取材スポットは「竹采芸品有限公司」。この工房を主宰する林群涵さんは、様々な竹製品を斬新なアイディアで生み出して、数々の賞を受賞している職人さんです。
工房にお邪魔すると、テーブルの上には試作品や完成した商品の数々が雑然と積まれていて林さんも苦笑い。
どーん!
工房に足を踏み入れてまず目を奪われるのが、竹で作られた「台北101ビル」。高さは2メートルくらいあるでしょうか。
竹は、まっすぐ上に伸びる性質があることから、中華圏では繁栄の象徴とされ、実際に台北101ビルのデザインは、竹がモチーフになっています。その、竹をモチーフにした台北101ビルを竹で作ってしまうとはさすが。数年前の展示会の際に制作したそうですが、林さん曰く「2日で完成させた。あんまり難しくなかった」とサラリ。
工房の中には至るところに竹が使われており、林さんの竹に対する愛着を感じます。林さんや私たちが座るイスも竹、テーブルの下にも竹、いつもデザインの作業をする机も竹、ドアも竹、そして神様をお祀りする「神卓」にも竹が!全部林さんのデザイン、手作りだそうです。天井もすべて竹に張り替える計画があるそうなのですが、さすがに忙しすぎて手が回らないとか。
林さんがなにゆえこれほどまでに竹に惚れ込んだのか伺うと、以外にも林さんは竹山出身ではありませんでした。林さんは台湾北東部の宜蘭の生まれ。台中にある国立中興大学に入ってからずっと森林学部で学び、修士も博士も森林を研究。博士論文のテーマに選んだのが竹の青さを保持するための研究だったことから、台湾初の「竹博士」と呼ばれているとか。卒業後には、愛着のある竹山に住居を構え、今では工房も開くようになりました。
テーブルの上に雑然と置かれた試作品は、どれも林さんオリジナル。特に、自身で研究開発した、竹の青さを保持する技術を使って、竹の瑞々しい青さを生かした商品をいくつも開発されています。
林さんの作品をご紹介~
どっちがお好みですか?
ナビがまず目を奪われたのはこちらのペン。まさに竹の青さと自然な節の風合いを生かした作品です。節の部分をひねることで、芯の出し入れが出来ます。この、竹を乾燥させた後も、元々の青さを失わない技術は林さんが独自に開発したもので、他の工房ではまだ使われていないものだとか。後ろにあるのは、乾燥させた竹の色を生かした万年筆。こちらも風情がありますね。
台湾の形をしたケースをくるりんと回転させると、出てくるのは印鑑。印材も竹製です。玄関に置いておいて、宅配便が来たらサッと取り出すのはいかが?
繊細な造りになってます
そしてiPhoneケース、いくつもの小さな竹片を重ねあわせて作られていますが、まるで継目を感じさせません。ナビ愛用のiPhoneにもぴったりフィット!この商品はアジアよりもむしろ欧米で人気があるそうです。
林さんが商品に使うのは必ず竹山産の竹。現在では中国からも材料の竹が輸入されていたり、工場が中国に移ったりしていますが、なんといっても竹山の竹は弾力と粘りが違うとか。そのため、デザインの幅にも影響し、竹山の竹でなければ表現出来ない形やデザインが出てくるということです。大量生産される製品であれば、多少品質の劣る竹でも問題ないそうでうが、細かいデザインや耐久性を考えると、竹山の竹に勝る材料はありません、と断言していました。
青々しさをかなり残した試作品
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いたるところに竹製品が置かれています
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実は林さんは大学を卒業後、一年間サラリーマンを経験しています。ただ、その間も自分の大好きな竹の研究のことが忘れられず「一日中、製品のデザインや加工をしていても、サラリーマンの仕事をしていても、使う時間は同じ。だったら自分の専門を仕事に使用」と思い立って職人に転身しました。すでに数年にわたる竹との付き合いがあったことから、竹の特性を知り尽くしていたことも、職人として成功する要因になったことでしょう。
ノートにまで竹!
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よく見かける茶道具ですが、青々しい緑が新鮮!
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現在の竹山では、材料を調達し、デザインから加工まで自前の工房は減ってきています。大量生産する工場はすでに中国へと移転してしまい、小さな工場でも、加工は外注に出してしまうなど、林さんのようにイチからすべてを取り仕切る職人さんはだんだん少なくなってきているとか。とはいえ、林さんにとって竹はもはや人生のパートナー。幸い、林さんのオリジナル商品は人気が高いようで、このまま愛する竹に囲まれて好きな製品を作っていければ幸せ、と笑顔で語っていました。
隣りの工場をちょっと見せてもらいましょう。
所狭しとたくさんの竹が並んでいます。竹は数種類あり、大きさもまちまちです。日本でもポピュラーな孟宗竹や、人面竹という奇妙な竹、合板に加工された竹板や、燻製処置が施されてものまで。こちらは台湾での華道でよく使われる花瓶に生まれ変わるそうです。根の部分をそのまま生かしているのが斬新ですね。さらに、竹の青さと節の部分を生かした柄杓も人気の商品。ひとつひとつ風合いが違うのは自然の材料ならでは。
ひとくちに竹といっても、私たちがよく目にする本体の部分だけでなく、根の部分や、土中に隠れていてあたかも根のようになった先端の部分など、林さんが商品に使う材料は竹全体に及びます。形を生かしたドアノブや、節の部分を利用したライトなどはその典型といえるでしょう。
お手製の竹デスクでデザイン中
竹を愛するがゆえに、竹の特性を熟知した林さんだからこそ生み出せる商品がこれからもどんどん現れてくることでしょう。
愛することを仕事にできる、そんな姿を心底うらやましいと思ったナビがお送りしました。
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