台湾で最も古い酒工場である宜蘭酒工場へやってきました。工場内の敷地には、歴史的建造物を大切に残しています!
こんにちは、台北ナビです。今日は台北から1時間ほどで行ける宜蘭へやってきました。台湾では、近年KAVALANウイスキーという、台湾ブランドの洋酒が定着してきましたが、このKAVALANの工場は宜蘭。おいしい台湾ワインが製造されているのも宜蘭。ここには昔からおいしい酒が造れる土壌がすでにあったともいえるんです。というのは、宜蘭の酒工場は、台湾最古の酒工場で、台湾の人たちの台所では欠かせない紅標米酒の里とも言われています。1935年、この工場は、台湾で初めて米酒の改良に成功、品質よく安定した味をもつ米酒を台湾全土に行き渡らせました。
その歴史は・・・
実は酒工場が出来る前に、宜蘭県では、すでに香りよく、芳醇な味をもつ酒「紅老酒」が製造されていました。林青雲氏が、中国大陸の安渓から台湾へ渡ってきた祖父のために、母親が造った酒を「安渓紅老酒」と名づけて売り始めたのが最初だと言われています。1909年、林氏18歳の時に「蘭陽製酒公司」を立ち上げ、現在の「紅露酒」の元になる「安渓紅老酒」(またの名を甘泉紅老酒)を世にとどろかせました。会社は最初一株50元だったのが、絶頂期には1500元にまで跳ね上がり、年配の宜蘭人は、食前に「紅老酒」を一口飲むことができたら、人生最高の享受である」とまで言ったそうです。やがて、林氏は「紅老酒」を「金鶏」と「黄鶏」の2種に分けます。そして、会社は宜蘭各地に支社を設立していきました。
1922年、日本政府は林氏の支店の一つである宜蘭製酒公司を宜蘭製酒株式化会社に改め、樟脳や食塩、タバコなどと同様、酒を国家の専売としました。当時総督府の収入の14%は酒類の専売であったと記録されています。1957年、会社名は「台湾省菸酒公賣局宜蘭酒廠」と国民党に改名され、今に至っています。宜蘭酒廠(宜蘭酒工場)は、宜蘭の住民に就業の機会を与えたので、3代に渡って工場内に勤務した家族もいます。生活、人生そのものを酒工場で過ごした人たちは、退職後も工場内の理髪店や大浴場を利用していたそうです。1999年7月、省政府がなくなり、公賣局は財政部の元に入りました。その後、台湾はWTOに参加。自由化貿易が始まり、洋酒がどんどん国内に入り始めて、酒工場も徐々に変化を迫られていきました。
敷地内を歩く
ここに来る目的は、酒を買うなどのショッピング以外に、古跡の旅を楽しむために来る人たちも多いようです。日本ならすでに改築されていても不思議はないほどの建物が、ここでは、内部はからっぽでも外観はきれいに残されていたり、その時代を代表する建築様式の部分は、しっかりとウォッチすることができます。
100年を越える酒工場内には、歴史的建造物もそこかしこにあり、まず一番古いのは、1926年に建立した「
大禮堂」。ナビが、最初気づいたのは1Fの横からの入口。地下に下がって入っていく形で、変わっています。昔は、地下が紅露酒の醗酵室と圧縮室だったので、人力車での運搬便利のため、ゆるやかなスロープになっているとのこと。地下に入ってみると当時を思わせる柱が建物を支えています。外側から見ると窓枠も洋風。緑に囲まれ、きれいな禮堂だったんだなというのが想像できます。
浴場跡 昔の社員たちは、四六時中酒のでき具合を見守ってなくてはならなかったため、工場内にいる時間に入浴なども済ませました。よくじょうが「とくじょう」になっているのは、ご愛嬌ということで。
総辦公室 1929年設立 外観は当時が偲ばれます。
コンロ室 1944年に完成 煙突は宜蘭のランドマークとなりました。
台湾紅麹館
米朱調合室 1927年の建物で、この中も大きなショップになっています。ここは、調合室だったため、大きな樽がたくさんありました。面白いのは、樽を完全に壊すことなく、内部の販売コーナーの仕切りとしてうまく利用していることということです。
右は1927年、左は1942年設立
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内部はかなり広いです
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2007年小学校の1年生になった子たちを記念して造った酒甕がありました
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うーん、大きくなって、クラス会とかで皆で飲むのかなあ
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いい具合に内装美となっています
紅麹館の中にはもちろん宜蘭のお土産もたくさん売っています。建物の外側からは、色とりどりのパイプが外に向かって伸びています。このパイプの使用はしてなくて、今は単なる建築ア-トの一部となっています。
甲子蘭酒文物館
1935年完成、和洋式の木材構造で、天井はヒノキです。外壁は酒甕で囲まれ、近づくと「紅露酒」の香りがします。1935年に作られたこの建物は、物置き倉庫でした。2Fに登ると、当時の天井がそのまま再現されています。酒が入った甕を運ぶリヤカーもありました。一人が押し一人が引きながら、約10個の甕を運んだのです。2Fには、商標の紹介や製造機械もありました。
紅麹アイスクリームも売られています。1Fは販売コーナー。宜蘭の酒工場ならでは、というのは、以下のものです。
「特級紅露酒」 600cc 145元 紅露酒はもち米と紅麹が原料となり、2,3年寝かしてから飲むとおいしいとされています。他には「老紅酒」 1350cc 1000元。2000年、蓬莱米を原料とした、純米米酒「清香酒頭」が開発されました。「樽蔵金棗酒」も宜蘭ならではです。
酒銀行をご存知ですか?
工場内の方に案内されて、入ったのが銀行。構えも全く銀行のようですが、中に貯蓄されているのは、お金ではなく「お酒」。ここでは、5Lの金雞老紅酒(4000元)と10Lの金雞老紅酒(7500元)をはじめ、コーリャン酒や紹興酒、ブランデーなど50種ほどあります。
ナビたちは、金庫の中に案内してもらいました。特に多かったのが「女兒紅」。台湾では、娘が生まれると、酒甕を作り、娘が嫁に行くときの披露宴で、この甕を割って、皆にふるまうという習慣があります。もちろん、すべての家ではなく、今では伝統的な風習をもつ家庭か裕福な家庭に限られてきたようです。
また、男の子の場合はというと、「状元」と言って、それこそ昔なら科挙の試験に合格したような時と同じような意味合いで、親が皆にふるまったっという酒があります。なので、男の子の場合は、有名校に見事合格したとき!この甕は割られるというわけです。
酒銀行の歴史
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すべて女兒紅
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コーリャン酒も
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金庫の中はぎっしり
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女の子は左、男の子は右です
酒銀行の口座の作り方
さて、口座をオープンするにあたって、まず、買いたいお酒を決めます。金庫の中は女兒紅と状元紅と書かれた酒甕が多いですが、この中身は16年あるいは18年の紹興酒です。
たとえば、5Lの金雞老紅酒を4000元で購入し、そのまま銀行に預けた場合、1年目の保管料は無料。2年目と3年目は、各500元。現在金庫の中は空席なし状態なので、4年目はもう置くことができません。また、コーリャン酒を購入の場合は、3年目までは保管料が無料。4,5,6年目までは、各1000元。7年以上は置くことができません。
ここの銀行は、外国人にもオープンしています。酒甕の大きさは5L、10L、27L。一番小さな5Lなら、購入してもいいかも?通帳には、通帳番号までちゃんと書かれています。皆さんも貯蓄に目覚めてみませんか?
台北ナビでした。