台湾には4つのビール工場と9つの酒工場があります。飲みやすい紅麹葡萄酒があるのは、ここ「林口酒工場」だけなんです。
こんにちは、台北ナビです。清酒製造をする台北市の華山酒場、紹興酒と黄酒の板橋酒場、紅麹酒の樹林酒場が合併してできたのが、「林口酒工場」です。3工場は一度に移動してきたわけではなく、1987年から住宅事情が厳しい台北の樺山(現在の華山文化園区)から徐々に移動を始め、1990年3件の移動終了、「台北酒工場」と看板に掲げます。1992年、政府の元に置かれていた「公賣局」が台湾菸酒股份有限公司という名前に変更したのを機に、「台北酒工場」の名前も「林口酒工場」へと変更したのです。
台湾、酒の歴史
「公賣局」というのは、日本統治時代に政府が酒たばこ(当時はアヘンやマッチ、石油なども)を取り扱った機関であり、いわゆる専売公社「台湾専賣局」。国民党時代になって、「台湾専賣局」の名が「公賣局」に変わったのです。この時代、「公賣局」は賄賂や汚職の温床場となり、1947年2月28日に起こった「二二八事件」も、闇タバコが発端となっています。台北市の南門近くにある「公賣局」の建物は、赤レンガの大正2年に建てられたもので、当時の面影を漂わせて残っています。
1900年代から、台湾専賣局が取り扱ったお酒の商標が、すべてここの壁に紹介されています。白鶴、泡盛、焼酎…この時代は日本のお酒も多く、なかなか興味深いものがあります。国民党「公賣局」時代になって、ジンやウォッカなどの洋酒が輸入され始めたのがわかりました。
名産中の名産
「林口」の酒工場では、他の工場にはない名産がいくつかあります。その代表的なものが台湾語で「Anka」と表示されている「台酒紅麹養生薄餅」(紅麹クッキー)で、1箱400元(12個パック入り)。1997年、林口特産の「紅麹葡萄酒」を製造している過程で、紅麹が沈殿したのを取り出し乾燥して、ビスケットに練り混ぜて使ったのがこの紅麹クッキー。ちょうど台湾の健康食ブームの波に乗り、今でも年間12億~15億元の営業利益を上げているそうです。2007年~2008年は、原料の麹が足りなくなり、一時生産休止に追い込まれるほどの売れ行きとなりました。時期をずらして発売となった「台酒酒粕養生薄餅」も好調の売れ行きで、台湾人の健康志向には歯止めがかかりません。紅麹はクッキーから始まって、麺やら味噌などいろんなものに練りこまれ、ここ「林口酒工場」が製造元になっています。工場敷地内には製品開発・研究室があります。
展示センターの入口には販売所があり、紅麹ソーセージやアイスクリームメニューもあります。
紅麹ソーセージは、1本25元。ジューシーで甘みがありました。紅麹アイスクリームは15元、他にも麹貢丸湯が3粒入ったスープが25元でした
清酒も特産
先ほど、各酒工場で特産品があると書きましたが、林口は玉泉清酒、という清酒も生産しています。展示センターの中には、清酒の製造過程のくわしい説明があり、この日林士傑工場長の説明もありました。まずご飯を炊く、寝かせる、発酵開始、もう一度蒸す、さらに発酵、泡が出てくる…2週間後くらいに、ほぼお酒の形が出来上がります。最初ナビは壁下のガラスケース内の米は、サンプルかと思っていたのですが、全部本物!でした。ガラスがあったかいでしょと言われ、手を置いてみると、発酵状況が肌に伝わってきました。
販売センターの中にある「紅麹」の説明下のガラスケースに収められている「紅麹」、これも本物でした。リアルなので、色の変化の違いだけでなく、ほのかに漂ってくる香りから、製造過程が手に取るようにわかります。
精米工場に案内されました
一般の観光客も工場内見学はできますが、必ず案内役について回ることになるので、事前予約が必要です。この日は、まず、米の種類の紹介から始まりました。清酒用は7成白米が使用されます。ここでは、実際機械が稼働していました。音と機械の揺れがものすごい迫力、震動が間近に見えて感じられます。ここを管理している人は、稼働中の騒音から耳を守るため、常にイヤカバーをつけています。
ここで、きれいなお米だけが最終的に振り分けられます。
|
|
ツルツルとした艶が見えます。これが清酒の原料。
|
まずは発酵から
ここから、清酒が造られている過程を紹介してもらうのに、巨大な機械が並ぶ工場内に入って行きます。最初に発酵室の方を見せてもらいました。ここでは、まだ原型をとどめている米がフツフツと蒸しあがってきています。蒸気でかなり温度も上がっていて、入口にちょっと顔を近づけただけで、発酵中のふわっとしたいい香りがしました。発酵は違う機械も使用され、2回行われます。
酒母室に移動します。ここでは、40個の大きな酒母タンクがあり、内部の気温はちょっと低め。タンク内も厳重な温度管理がなされています。ここで、林工場長がタンクを一つ開けて、ナビたちに見せてくれました。中を見るなら、香りも嗅ぎたくなるのが、ここまで見学に来た者の真情というもの。まず顔を入れたナビ「う!」、どうしたのかなと続く2人のナビ「ウウウウー!」、キーンと鼻をつく、かなり強烈な匂いに皆倒れそうになりました。こういう匂いを経て、おいしいお酒が出来上がるんですね…。不思議です。
次は酵母室に入ります。ここでは、白いものが綿のように盛り上がってきているのが見えました。さっきよりもっとすごい匂いがするかもしれないと、ここでは呼吸を止めて、目だけで見ました。ここを過ぎると、日本酒でいうなら仕込みの段階に入り、発酵を経て、蒸留の過程に入り、お酒としての製品完成に近づきます。
お酒の製造過程で、移動に利用される巨大パイプが工場間にまたがっています。
酒工場に回収された状態のいい酒ビンのみ、再度洗浄殺菌がなされ、再利用が行われます。殺菌包装室は、一般の人は入ることができず、かなり厳重な管理の元におかれていました。
包装がされて、出荷待ちの倉庫
|
|
お酒が眠っている巨大なタンク
|
ここに来る目的は買い物
酒工場で、製造過程だけを見学して帰るなんて、と思いますよね。ここまで来る目的は、もちろんお買いもの!という人がほとんどでしょう。ここまで来た甲斐があって、スーパーやコンビニではない、ここだけにしかない、しかも安く買えるものがたくさんあります!それでは!
酒の販売コーナーの品ぞろえは豊富
|
|
ここでしか買えない、林口酒工場の紅麹葡萄酒
|
林工場長は、台湾酒にかけては博士のような方でした。ナビのうちに民国70年代のコウリャン酒があるという話をすると、それはぜひとっておきなさいと。コウリャンは年代を経るにつれて、その価値も出てくるのだそう。また、今からお酒を収集するなら、マオタイ酒を買いなさいとすすめられました。マオタイは今後生産量が減ってくるので、その価値はどんどん上がってくるんだそうですよ。皆さんも今後の家宝の一つとして、マオタイ、いかがでしょうか?
以上、台北ナビでした。