魯凱族(ルカイ族)の暮らしをのぞこう!見事な「石板屋」や素朴な人々との出会いに心が温かくなりました!
こんにちは、台北ナビです。
今回は茂林で紫斑蝶(ルリマダラ蝶)を見た後、車で30分ほど移動してやってきた「多納集落(村)」を紹介したいと思います。ここは台湾原住民・魯凱族(ルカイ族)が暮らす村。そして、ルカイ族の生活様式がかなり残されていると言われている集落でもあります。
また、2009年に発生した莫拉克颱風(モーラコット台風)により発生した八八風災で大きな被害を受けました。渓谷沿いの温泉として人気だった「多納溫泉」は、現在復興の見込みはありません。昔使っていた道が使えなくなったなど、被害は大きいのに、それに負けず元気で明るい多納の人々!そんな陽気な方々の中でも、とびきりパワフルなイップルーさんに多納村を紹介してもらいました。
ルカイ族の村
こんなふうに門の近くに百歩蛇のモチーフがあれば、それは頭目や貴族の家だという目印!
2019年5月現在、現在台湾政府が認定している原住民は16民族。そのひとつがルカイ族です。中央山脈南部の東西両側に住み、高雄市、屏東縣、台東縣に集落があります。ルカイ族の特徴と言えば、まず挙げられるのが「階級制社会」であること。頭目、貴族、平民に分かれていて、家の装飾も階級により異なります。
貴族の石板屋(スレート家屋)にはみんなが集える広場、木彫りなどの置物や装飾が必ずないといけないというようなルールが決められ、今でも厳格に守られています。
トンボ玉のように色づけられていました
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ルカイ族の象徴がいっぱい!
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また、守り神は百歩蛇で、村を歩いているといたるところで見かけます。壺や甕、琉璃珠(トンボ玉)も多いし、木彫り・石彫りの技術も長けているように見えます。村を歩けば歩くほど、思う……ルカイ族の文化は排灣族(パイワン族)に似ている、と。
しかし、ルカイ族、そしてここ多納だけの文化もあるということなので、少しずつご紹介していきたいと思います。
多納について短時間でまとめて学べるのが「魯凱亭文化咖啡館(酋長的店)」。旅で困った時に助けてくれる「借問站(まちかど観光案内所)」の役割も果たしています。
お店の奥には、多納村の様子が写真を多用して紹介されているので、理解を助けてくれますよ。
魯凱亭文化咖啡館(酋長的店)
住所:高雄市茂林區多納里3鄰47號
電話:0956-580-766
トンボ玉をモチーフにしたオブジェが目を引きます
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借問站ですよ~
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「黒米」が多納らしさ!
さて、多納村巡りを始めましょう。交通の手段は自らの足。歩いて、見て、文化を感じるという趣向です。
最近は「小米束」をお土産に買っていく観光客も多いそう!
まずナビが気になったのは、カラフルな糸で束ねられた小米(アワ)や黒米。これは小米束や定情束と呼ばれます。
男性が黑米祭に意中の女性に送るもので、受け取った女性は、家の軒先にかけておくという風習があります。そのため小米束が多く飾られているということは、それだけモテることの証にもなります。
「実は愛の告白を受けてOKだった時にだけ飾る」という話も聞きました。そのため、小米束を女性に送ったのに、いつでたっても家の前に掛けてもらえない男性はがっくり肩を落とすのだとか。
小米束
この昔からの風習は今でも続き、多納の若者は告白やプロポーズをする時には、花束ではなく小米束を送ります。またこの小米束は大きければ大きいほど財力があるという証明にもなります。
黑米で作った定情束
11月に行われる黑米祭(搭巴嘎饒望)はここ多納村だけのお祭りで、意味合いとしては先祖や土地に感謝し豊作を祈り祝う豊年祭と似ています。
黑米とは外の殻が黒色をしたもち米で、以前は主食としていました。いくつかの言い伝えがありますが、共通するのは神様が多納にもたらしてくれたお米だということ。そのため、多納村では「黑米」を重視するのです。
ぶらぶら歩いて行くとイップルーさんが何やら民家に入っていきます。なんとここはイップルーさんの自宅。この日は特別にイップルーさんの自前民族衣装を貸してもらえたのです。赤、緑、青とカラフルな衣装!ちょっと暑いのが難点ですが、華やかになっていいものです。
頭につけているのは百合の花。ルカイ族にとって百合は神聖なものとされ、女性なら純潔を、男性なら狩猟能力の高さを意味しています。ルカイ族は階級制社会であることは前出しましたが、家の装飾だけでなく、身につけられる衣装もその階級によって決まっています。この百合の花をつける位置などを見れば階級がわかってしまうそうです。
イップルーさんおすすめの写真スポットでおすすめのポーズを決めてみました!
アートのように美しい「石板屋」
もうひとつ特徴的なのが「石板屋」。これは、黑頁岩や黑灰岩といった堆積岩の一種で作られた家です。イップルーさんの家もこの「石板屋」。冬はあたたかく、夏は涼しくて快適なようですが、ちょっと暗いのが難点かなぁと思いました。でも、快適でしかも美しいなら、もう素晴らしいですよね。
基本的には釘やコンクリートは使わず、石を積み上げているだけです。そのため、たまにぐらぐらしている石があったりしますが、丈夫だといいます。ほとんどの石板屋は平屋建てですが、なんと4階建ての石板屋があってビックリ。この石板屋には鉄筋が使われています。「ルカイ族も進化している」と笑いながら語るイップルーさん。文化保存と生活、どちらが大切なのか……。少し考えさせられました。
見事に積み上げられています
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4階建ての石板屋は集落の中でも断トツの高さ!目立ちます
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石と石の間に何やら土のようなもので固定されている家もありました。これは早期の建て方で、この土には牛の糞を混ぜていたとか
素朴な人々に出会える「接待家庭」
今回ナビは数時間のツアーでしたが、集落を歩いていると、様々な方に会いました。お年を召している方は、日本語を懐かしそうに話してくれます。何でも、この村を気に入って毎年のように遊びにくる日本人がいるそうですよ~。それくらい虜になってしまう人がいるのですね。
ナビは10分ほどしかおしゃべりできませんでしたが、別れ際におばあちゃんが「いつか私のところへ泊まりにおいで!もっといっぱいお話しよう。」と人懐っこく声をかけてくれました。超短時間のふれあいでしたが、ここは飾り気のない温かな心に触れ合える集落だなと感じられました。
そんな集落を感じるには宿泊体験が一番!ですが、民宿のような場所はあまりありません。そのかわり、一般の家庭にお邪魔するという「接待家庭」方式をとっている家が多くあります。最近はそういった場所に宿泊体験する人が多いそうです。どの家庭もお客さんがきたら夜ご飯はバーベキューと決まっていて、夕方になると道に人が出てきて、にぎやかになるんだそう。ナビもいつか体験してみたいなぁ……。
イップルーさんがおすすめだという原住民料理屋さん「滿香樂餐飲店」へ行きました。ここの売りは薪で火を起こし、石板で焼くお料理!ほかにもルカイ族の女性達が豪快に次々と作る料理には、原住民料理ならではのスパイスが使われていたりして、病み付きになる味です。
大勢で1テーブルを囲むタイプのお店なので、自由旅行者にはハードルが高そうに思いますが、パクパクいけるメニューばかりなので、石板で焼いた肉料理と野菜にご飯を注文すれば2~3人くらいでも楽しめると思います!
滿香樂餐飲店
住所:高雄市茂林區多納里48號
電話:0988-756-899
香腸(台湾ソーセージ)
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このおいしそうなテカリを見て~!
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ここは面白い景色が見えるよ!とやってきたのは集落から車で移動して10分ほどの場所で、「龍頭山」がよく見える階段でした。龍頭山は、その名の通り龍の頭のように見えることからその名前がつけられました。想像力を膨らませると巨大な龍が珠を吐いているように見えるといいます。(ナビには見えず!!残念。)
またそこから下ったところには「多納高吊橋」がありました。このつり橋は元々日本統治時代に作られたもの。その後修繕を幾度も行い、現在の橋は2015年2月に完成しました。ここに住む人々にとってこの橋を渡るというのは、この集落を出ていくこと。昔なら再び集落に帰って来られるという保証はなく、永遠のお別れになるのを覚悟しなければならなかったそうです。
そんな話を聞きながら、イップルーさんとここでお別れ。半日だけしか一緒にいなかったのに、気の合う友達になれたようなナビは、しんみりしちゃうくらい寂しかったです。
アクセスは?
ルカイ族の村「多納部落」。公共の交通機関を利用するなら、旗山轉運站からH31(
http://www.kbus.com.tw/bus_info.asp?id=126)に乗ればアクセスできます(約90分)。平日、休日ともに1日3便ですので、ご利用は計画的に!高雄駅から旗山轉運站や美濃站行きのバスが1時間に1本出ています。タクシーやチャーター車だと1時間半ほどで高雄駅から到着できるので、タクシー利用が無難かなと思います!
フレンドリーで陽気な多納の人々。八八風災で失ったものは多いだろうに、それにも負けず明るく元気に過ごす強さを感じました。いつか黑米祭に来られたらいいなぁと思うほど、ここ多納部落が大好きになりました。
以上、台北ナビがお届けしました。