民族衣装工房や染物工房、日本が残したのどかな村には、約700人のアミ族が住んでいます
こんにちは、台北ナビです。
今日は基-哈盟岸(Ci-Hamengan)という集落にある、アミ族の伝統衣装を作る「阿蜜斯工藝坊」という工房にやってきました。ちょうどやって来たのがアミ族最大のお祭り「豊年祭」の時期だったということもあって、工房は大忙しでした。
場所は、花蓮県寿豊郷。寿豊郷と言えば、日本統治時代に豊田村という大きな移民村があったところです。当時の移民村は現在の寿豊鄉豊裡村の一帶ですが、このアミ族集落がある基-哈盟岸(Ci-Hamengan)の集落も、碁盤目に整備された中にきれいにうちが並んでいます。近くの基-阿魯巴嵐(Ci-Alupalan)と基-撒拿賽(Ci-Sanasai)の3つの集落の総称を寿豊集落と言いますが、基-阿魯巴嵐(Ci-Alupalan)には、日本の神社跡が残っています。現在は中山公園と名付けられていますが、階段の雰囲気はまさに神社に向かっていくもの。寿豊集落には、2016年現在、約700人のアミ族が住んでいます。
工房横には、周辺MAP
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中山公園のふもとまで行ってみました
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「阿蜜斯工藝坊」
工房は1998年に設立し、何秀蘭(Dungi)さんと娘さんの李玟慧(O’ol)さんが切り盛りしています。ちょうど一年で最も忙しい豊年祭を数日後に控え、布が積みあがった中から出てきたお2人。
工房名の「阿蜜斯」は、Amis=阿美(アミ)族のことですが、「アミ」とは「北方」を意味し、南方に暮らすプユマ族のアミ族に対する呼称のこと。実は台東のアミ族の自称は「Amis(アミス)」で、花蓮のアミ族の自称は「Pangcah(パンツァー)」です。ここで制作しているのは寿豊集落のものが中心ですが、寿豊から北部のアミ族やパフォーマンス用の衣装ほか、バッグなどの小物も作っています。
男性用の衣装
手前に合ったのが男性の腰巻で、そのあでやかさにびっくりしていると、それぞれの色に意味があるとのこと。赤は太陽(すなわち母親)、青は空、白は雲、緑は草、そして黄は小米(粟)。この5色は基本だそうです。
民族衣装の各所にもそれぞれ意味があり、男女共に大きな羽についた帽子のようなものをかぶるのですが、李さんたちの寿豊集落に限って言えば、特に男性の羽の大きさは他の集落と比べてダントツだそう。羽根は必ず野生のオスの鶏の羽根であること。4年に一度交代するアミ族の頭目の帽子には素晴らしいものがあるんですよ。
女性用の衣装
さあ、更に美しい女性の衣装を見てみましょう。
すべて手作りで縫い付けられた飾り物の帽子は、可愛い!という感嘆の言葉さえ出てくるほど!この帽子は年齢に限らず、女性は皆かぶります。そして、寿豊集落であることを強調しているのが、おでこに沿って並ぶ7つの花。これは、「階層」の数なのです。そして、上部には羽根が1本、弓を描いています。これも必須のもの。
7つの階層
アミ族は男の子が12歳になると、年齢階層組織の予備隊に参加します。3~8年後には成年式を行い、正式に年齢階層組織に参加することになります。集落によって年齢階層数は異なり、寿豊では7階層で、1階層は8年(→これも集落ごとに若干の差があり)。アミ族の成人の儀式が終わった男の子をたとえば15才とすると23歳までが一つの階層というわけです。男性中心に行われる豊年祭では、この年齢階層組織はとても重要で、階層ごとに皆が一緒に行動し、階層ごとの役割分担があるのです。
何秀蘭(Dungi)さんが着てくれました!きれい!
腰にもお金
そして、洋服にくっつくキラキラした丸い物、これはお金を表しています。日本統治時代には当時の通貨をつけていたそうですよ。
「阿蜜斯工藝坊」では販売もしているので、李さんにお母さんの衣装、一式買うとおいくらなんですか?と聞いてみると、衣装は4900元、帽子は3800元。手作業も含めかなり手間暇かかっています。激しく歌い踊ってもどこかが落ちたりとか崩れたりもしませんし、男女の帽子に関しては作業は本当に細かく、アートの域に入ります。
寿豊集落の豊年祭
豊年祭は集落ごとに日程は異なり、どこも2~3日間行われます。三日三晩が普通のようですね。寿豊集落では、1日目は成人の儀式が夜中の零時10分から行われ、食材の調達や場所の準備は、前日以前から始まっています。
2日目は運動会。他の集落の人たちとの交流で、試合競技も行われます。
最終日の3日目は、全員が手をつないで輪になって歌い踊りますが、これは夜明けまで続きます。皆階層ごとに服装を整えて参加。必ず歌わなければいけない歌は少なくとも10曲で、これらは何回も歌い、輪の中に女性も加わることがあります。また、アミ族は海辺に住む民族なので、お祭り事の料理にも必ず魚が出されます。ちなみにこの3日間は小米(粟)酒の消費量もすごいんです。
庭にも小さいのが
「阿蜜斯工藝坊」の後方に李さんの従妹である何欣蓉(Dungi)さんが、小さな染物工房を持っていました。素敵な小物雑貨やTシャツが無造作に並んでいますが、まだちゃんとしたお店を持っていないので、フリーマッケートやイベントで不定期に販売するのだそう。工房名も仮に阿魯巴嵐(Alupalan)と呼んでいます。染物の原料は、台東の原生柿の葉っぱとその実。庭にも植わっていたし、木を見せてあげると言って連れてってくれました。
かなり高い木です!
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食べられないことはないですが、すっごく渋いそうです
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この工房を立ち上げるのに、2015年、原住民族委員会から補助金を得たそうです。原料を煮詰める大きな鍋が2つ煮立っていました。
他にも黄土色を出すのに福樹、藍を出すには馬蘭、コーヒー色には毛柿と、原料はすべて自然のもの、この土地で採れるものにこだわって使用しています。
阿魯巴嵐(Alupalan)!
葉っぱそのものもデザインに使え、自然の色合いが柔らかくて、優しい。ぜひいつの日かショップも立ち上げてほしいものだと思いました。バッグに記された{Alupalan)は、彼女の集落の名前で、小さな柿という意味。ここは昔から果物の木や特に小さな柿がたくさん植わっていました。柿の実と葉もデザインされていますね。自分たちの土地に誇りを持っているアミ族の人たち、彼女たちの笑顔や創作に向かう姿勢がとてもまぶしかったです。
以上、台北ナビでした。
柿(Alupalan)と自然な配色
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ステキな笑顔の何秀蘭(Dungi)さん
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