紅くて光沢があり、さっぱり甘いフルーツは、その名もレンブ
こんにちは、台北ナビです。
台湾では12月~4月のちょうど旧正月もあるこの期間に、蓮霧という紅くて三角の形をした果物が市場に出回ります。レンブ(中国語の発音はリェンウー)といいますが、昔から台湾にある果物で、30年くらい前は、田舎のうちの庭でどんどん大きくなって、高いところは採れなくて、水分はあるけど、さして甘くもない果物だったと言われています。
美味しくなってきたレンブ
レンブ農家に生まれた王瑞雄さんは、1988年、兵役から戻ってきて父の家業であるレンブの有機生育に取り掛かりました。当時はそう広くもない土地に約50本のレンブの木があったそうです。まず王さんが取り掛かったのが、木を切ること。以前は建物の2階くらいの高さだったレンブの木をすべて約2m50cmくらいの高さに揃えました。
木を低くすることで木々の通気性をよくし、陽光もまんべんなくあたるように、そして、高すぎて行き渡らなかった実への栄養を十分行き渡らせるために、更に低くしたことで自分が世話をしやすくなるようにとの配慮もありました。通気性がよくなると虫も減ったそうです。もともと果物の中では、レンブやスイカという水分いっぱいのさっぱりした果物が大好きだという王さん。父から譲り受けた土地で、まずは木々を整えたら、その後土地の改良にかかりました。
黒金剛の誕生
屏東は、台湾のレンブの70~80%の生産量を占めていますが、ちょうど王さんが改良を始めた時期に他の農家も同じように取り掛かり始め、5年後の1993年には、黒珍珠(真珠)や黒鑽石(ダイヤモンド)というレンブのブランドを市場で見かけるようになっていきました。紅い色はおめでたい色なので、台湾人はちょうどこの旧正月の頃に旬となるレンブを贈り物として選ぶようになり、そのブランド価値はどんどん高まってきました。黒の字が付けられたのは、赤い色が更に赤く、暗紅色になり、その色が濃ければ濃いほど甘味が深まるとされたからです。後で述べますが、どうやらこの暗さは味とはあまり関係がないようです。
王さんは黒珍珠や黒鑽石という名前の更に上をいくため、もっと強い印象を持ってもらうために黒金剛(中国語でキングコングという意味)という名を付けました。2年後の1995年、王さんのレンブは一斤(600g)500元の高値がつき、その後ますますその品質は注目され、2010年には一斤3700元にもなりました。一斤は約5~6個入りのことなので、一個に換算すると750元という訳です。ちょっとした高級ホテルのランチビュッフェ並みですよね。
黒金剛を
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切ったのをいただきました、さっぱりさわやか!甘いです
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果樹園
その2010年ですが、王さん曰く「寒波が来て、レンブ自体が市場にあまり出回らなかった。だから高値がついたのさ」とのこと。どうやらレンブは、暑すぎてもダメ、日夜の温度差が大きいのもダメ、台風もダメ、寒波にも弱いというとてもナイーブなフルーツだそうですが、王さんのレンブはそんな環境にあっても高品質を保っていたのです。
その秘訣は、我が子と同じようにレンブを愛おしく世話することにあります。まず、有機であることは基本ですが、その肥料を聞いてびっくりしました。「豆乳だよ」と聞いて、え?と聞き返したナビ。詳しく聞くと、牛乳や大豆などの豆類、卵、紅糖などにビフィズス菌を投入し、しばし寝かせて発酵させます。高タンパク質も加え豆乳のような状態になったものを根っこに注入します。その後高度な栄養分を徐々に吸収していったレンブは、どんどん繊細な味に変化していき、現在のおいしいレンブが出来上がったというわけです。
レンブって長寿!
オフィスの裏にはレンブ園があり、見せてもらいました。現在王さんの畑は15000坪。通常レンブは、収穫の2ヶ月前に袋をかぶせるそうです。レンブの木は、マンゴーなどと違って、なんと500年経っても元気だそうです。が、やはり老化の加速によって枝がどんどん下がっていくそうです。下がる部分を切って接ぎ木をすると、そこから新しいレンブが成っていきます。面白いのは、接ぎ木の品種は親の品種と異なったものでも可能とのこと。王さんは今1本の木に7種の品種を試しています!
ここでは、従来の南洋種、大粒種以外に、翠玉、白子弾、子弾、飛弾、祖母緑、白寡麗、天覇王などの品種もあります。
南洋と大粒は大きさの違いだけで、飛弾は、細長い形をし、色は暗紅色です。祖母緑は、なんと緑色のレンブで、緑の宝石のよう。甘味がありますが、レンブ独特のシャキシャキ感は今一だそう。白嘉麗は濃い味で、シャキシャキ感があり、名前の通り、『白い』美しいレンブです。天覇王は、やはり名は体を表すかのごとく、レンブの中では一番大きく、別名香水レンブといわれるほどいい香りを放つそうです。その香りはキンモクセイのような甘い果実香と言われています。
こちらがその7種!
レンブはマンゴーやパイナップルのように加工品は難しいですが、サラダに入れたり、擦ってクレープ生地のようにして、イチゴと一緒に巻いて食べたり、新しい食べ方が出てきています。
レンブを買うときの決め手は、光沢があって、線がくっきり、中身が詰まっている様な感じ、そして、色は関係なく、くびれがなくすっと三角を描いていることだそう。
以下、ご参考。レンブのいろいろ種類があるんですね!
車輪つきのピアノがあったのですが、これは、王さんが時々レンブ畑に引っ張っていって、彼ら(もちろんレンブ)にピアノを聞かせてあげるために車輪が付いているのだそうです。
以上、台北ナビでした。
画像一部提供:黒金剛農場