まさに都会の中のオアシス。かつての煙草工場が、緑と藝術を楽しむカルチャースポットに大変身!
こんにちは。台北ナビです。今回は台北市内の気になる新スポット「松山文創園區」に行ってきました!かつて煙草工場だった広大な敷地を利用して建設されたこのエリアは、約75年前の老建築を見事にリノベーションし、展覧会や藝術活動を行う場所として生まれ変わった一大文化総合施設。台北101のある信義エリアからすぐ、国父紀念館の目の前という都会の真ん中にありながら、緑に囲まれた癒しの空間でもあるんです。2011年秋には「台北世界デザイン展」の会場となり、その趣ある佇まいが話題になった場所なので、ナビも期待に胸を膨らませて出かけました☆
煙草工場をリノベーションしてオープン
60年間煙草工場として活躍
さっそく園内へ…と行きたいところですが、より楽しむために、「松山文創園區」の歴史とオープンまでのいきさつをもう少し。そもそも台湾ではここ数年、それまで放置されていた古い建築物の価値を見直し、「文創(文化創意の略)」をテーマにしたクリエイティブな空間として、新たな命を吹き込む動きが活発です。工場を再利用した例としては、新光華市場の近くにある「華山1914創意文化園區」がさきがけ。華山は酒工場の跡地ですが、「松山文創園區」はその昔、煙草工場でした。1937年に建設された「松山煙草工廠」が1998年に閉鎖され60年の歴史に幕を下ろした後、工場跡地は2001年に「市の史跡」に指定されます。その後、1930年代のものとしては台湾最大のこの建築をどう生かすか、政府や産業界、周辺住民を巻き込んださまざまな議論の末、現在のような文化施設を建設することに決まったそうです。
入口には注意が必要!
MRT市政府駅から忠孝東路を10分ほど歩くと、案内の看板があります
さあ、そんな半世紀以上前の歴史に思いを馳せながら、いよいよ「松山文創園區」へ。住所(台北市光復南路133巷)をたよりに光復南路から入口を探すと…あれ?入れない!?後で聞いたところ、周囲の工事の影響で光復南路側の出入り口は封鎖されていたようです。ナビは周囲をぐるりと回った末、忠孝東路側から入りました。実は現在、「松山文創園區」の周りではあちこちで大規模な工事が行われていて、北側では台北最大のホテルを建設中、南側では台北大巨蛋(台北ドーム)の工事中と巨大なレジャー施設が作られている真っ最中なんです。今後も工事が入口の開閉に影響しそうなので、確認してから出かけられることをおススメします!
園内平面図。今回ナビは東側から入りました。記事内の位置番号はこの地図でご確認ください
池を眺めながら園内へ入っていきます!
たくさんのアヒルがのんびり泳いでいます
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工場時代は消防も兼ねていました
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<生態池>
位置:⑨
1937年に工場が建てられた時からある池。当時は工場の消防と通気のために作られたということですが、あまり人の手が入っていない自然な佇まいが見る人を和ませます。台北市内でアヒルが見られる数少ない場所でもあるので、家族連れに人気だそうです。園内は建物の中だけでなく、外もすべて禁煙なんです。これなら小さなお子さん連れでも安心ですね。
<鍋爐房(ボイラー室)>位置:④
煙草工場のエネルギー源として使われてきたもので、残念ながら中は見られませんでしたが、木の窓枠やコンクリート肌の壁面に味のある建物。75年の時を経たとは思えないきれいな姿を保っています。排煙のための煙突もあり、広い園内ではいい目印になっていました。
<機械修理廠(修理工場)>
位置:⑥
その名の通り、工場内の機械を整備するために使われていた場所。年間20億本の煙草を生みだしていた約300坪の広大な敷地。こちらも年季の入った建築がオシャレに再生されています。現在は下記2つの商業施設として使われています。
琉璃工房(ガラスアートギャラリー)台北市内に多くの店舗を持つ、高級ガラスアート工房のギャラリー兼ショップ。1960年代に活躍した映画監督の張毅と女優の楊惠姗夫妻が、映画界から転身し、1987年に立ち上げた工房です。現在ではその独創性と高い技術が国内のみならず海外でも評価され、中国の故宮博物院などにも作品が収められているそうです。台北各地の有名デパート、台北101にも店舗があります。
小山堂(レストラン)
「琉璃工房」がプロデュースする園内唯一のレストラン。レトロな建物を生かしたオシャレな内装と、素材にこだわった創作料理が自慢。ちょうど池に面しているため緑も豊富な最高のロケーションで、建物の外はオープンテラスになっています。テラスには、台湾ではあまり見かけない椿の木も見つけました。
電話:(02)2766-5610営業時間:日曜~木曜12:00から21:30、金曜・土曜12:00~22:00
工房の隣にはこんな建物も
託児所だった建物もキュート
<育嬰房(託児所)>位置:⑦
煙草工場として使われていた当時、職員たちの子供が遊んだり、休憩したりするのに使われていたそうです。子供向けの建物だからか、外壁がかわいい緑色に塗られていて、メルヘンチックな佇まいと自然がいい感じに調和しているので、写真を撮るには絶好のスポットです!
<倉庫群及輸送帶>
位置:②
工場にはつきものの倉庫ですが、この建物はアーチ状の入口や飾り窓がとてもアーティスティックなんです。1~5番倉庫まであり、2番倉庫には工場の2Fで箱詰めされた煙草を運び出すための渡り廊下がついています。現在は展覧会や展示会を行うスペースとして開放されていて、展示の内容はそのつど変更していくそうです。ナビが取材に行った日もいくつか展覧会が行われていて、スタジオジブリの「『コクリコ坂から』原画展」には行列ができていました。普通の美術館とは違う、無機質で広々とした倉庫という空間をどう使うか、というところに注目して見るのも楽しいかもしれませんね!
チケット購入方法:窓口で購入可能、一部無料の展覧会もあり
<台湾設計館>
位置:③ 元煙草工場の西側
煙草製造工場だった建物。当時は2Fに機械が置かれていたため、2Fの重さを支えるために1Fに多くの梁と柱があり、2Fにはまったくないという極めて特殊な作りになっています。採光のため壁一面に作られた窓は、外側のみ老朽化が激しかったため、改修がほどこされました。工場だった建物をそのまま使うと聞いて、ガランとした巨大な空間を思い浮かべていると、その予想は見事に裏切られます。きれいな中庭を長ーい廊下が囲む作りはまさに回廊。宮殿か寺院か、はたまた上品な学校という雰囲気です。煙草を作っていたという割には壁も床も清潔だし、2Fへと上がる階段も古い校舎のよう。広い建物は「松山文創園區」と台湾創意設計中心(台湾クリエイティブデザインセンター)の共同企画による「台湾設計館(台湾デザイン館)」として使用されています。
館内は撮影自由です
案内窓口は玉ねぎのような近未来型オブジェになっていて、とってもオシャレな雰囲気。新旧のデザインが見事に融合しています。入ってすぐ見つかるロッカーも、1つのアートのようでした。館内は「概念區(コンセプトデザイン)」「世界區(世界のデザイン)」「台湾區(台湾のデザイン)」などのコーナーに分かれて様々な作品が展示されています。実用性を兼ねたコンセプトデザインの作品には、バナナの皮の形をした足元用の看板や、鏡付き目薬ケースなど、思わず「これ欲しい!」と食指が伸びる面白いデザインがたくさんありました。台湾でデザインを勉強している学生たちによる作品もあり、台湾の次世代の息吹を感じることができる空間でもあります。
「世界區」にはヨーロッパ、北米、アジアの名だたるデザイナーが手がけたデザイン商品が並んでいます。懐かしいiMacや、イームズのチェア、日本からは柳宗理の作品も。すでに私たちの生活に馴染んだものも、改めて見直してみると新しい発見がありますよ!「台湾區」では台湾人の生活に密着したデザインを年代別に展示しています。台湾で古くから使われてきた“物”で歴史を辿ることになるので、ナビのような古いモノ好きにはたまらないラインナップです。日本統治時代にさかのぼると、ラジオやアイロンなど、多くの生活用品は日本製だったことがわかります。当時の人は地下足袋を使っていた!という、台湾への親近感がさらに増してしまう発見も。コンビニにある大同電鍋や、足裏マッサージ店でよく見かけるザ・台湾の青白のゴム製スリッパなど、今でも現役のものにも60年の歴史があるんですね~。
服務中心(サービスセンター)は製造工場跡にあります
<服務中心>
位置:③元煙草工場の北東
ロッカーに休憩スペース、育児室を備え、ベビーカーや車椅子の貸し出しも行っています。パスポートを見せれば観光客でも借りられるそうです。各種文化情報を掲載したフリーペーパーも豊富だし、台湾の新聞を閲覧することもできるので、疲れたら立ち寄ってみてください!実はここへきてやっと、園内の全体地図をゲットすることができました…。入口に置いておいてもらえると、より親切だなと思うのですが・・・。
女性工員の顔がモデルといわれる像
<バロック式花園>
位置:⑧
工場に囲まれた中庭は、あのベルサイユ宮殿と同じバロック式庭園!バロック式庭園というのは一般的に、中心に円型のものを置いて左右対称に作られている庭のことを言います。ここも円型の噴水を中心に、対角線上に散歩道が作られていました。敷地内には色とりどりの草花が植えられているだけでなく、ペリカンやアシカの置物など、遊び心もいっぱい!水辺に建てられた半裸の女性像はみんなアジア系の顔立ちをしていて、これは当時の女性工員をモデルにしたのではないか、と言われているそうです。きれいに整備され、現代人も癒してくれるこの庭ですが、当時は実用面でも重要な役割をしていて、工場の消防用に貯水設備を完備しています。ちなみに現在は中庭の四方にきれいに改築されたトイレを完備。庭に向けて開放的すぎるのがちょっと気になりますが、ゆっくりのんびり散策していてもトイレには困りませんよ☆ほかにも公開はされていませんが、工員のための運動スペースや、なんと大浴場まで完備していたそうです!
当時のVIP空間はおしゃれなカフェに
左手の建物が辦公廳舎。カフェの入口もここです
<辦公廳舎>
位置:①工場長、主任のオフィスとVIPの休憩所として使われていたところで、一般の工員が入れなかった場所。「初期モダニズム建築」に分類される統一された建築様式は工場入口と対をなし、今見ても新しさを感じさせます。モダンな建築と、黒板樹と言われる背の高い植物とのトータルコーディネートも見事。現在は1F部分のみ公開され、カフェが入っています。
CAFÉ SOLE(カフェ)
木のぬくもりを感じる老建築に、白いインテリアがオシャレなくつろぎのカフェ。チーズケーキやチョコブラウニー、各種クッキーなどスイーツのほか、パニーニやレモンウォーターなどイタリア系の軽食も楽しめます。室内と、廊下部分のオープンスペースに各15席、計30席程度、どの席もゆったり座れます。
電話:(02)2767-6076
営業時間:9:00から18:00
「松山煙草工場」では「工業村」という、職場を1つのコミュニティのように捉える考え方を取り入れていて、工員の福利厚生や工場の環境設備を非常に重視していたそうです。託児所や大浴場まで完備していたり、凝った庭園を作ったりしたのには、そういう背景があったのですね。半世紀以上の時を経た建物が美しいまま残っていたのも、工員たちが工場をまるで自分の家や町のように大切に使っていたからかもしれません。日本統治時代、ここで生き生きと働いていた工員たちに思いを馳せながら、現代のデザインやアートを楽しむ。「松山文創園區」で、そんな特別な1日を過ごしてみてはいかがでしょうか。以上、台北ナビでした。