台湾の人々も多く集まる「台湾式居酒屋」。お財布にもやさしいし、美味しい小皿料理が少しずつたくさん楽しめます。彼らの日常生活に飛び込んで、美味しい料理とお酒を楽しんでみましょう!
こんにちは、台北ナビです。
「さぁ今夜は飲みに行こー!」ってな気分になるのは日本にいても台湾にいても同じ。そんな気持ちを抱いてしまったアナタを快く受け入れてくれるのが、いわゆる「熱炒」のお店です。台湾の街を歩いていると、街角で見かける「熱炒」の看板。夜が更けるにつれ、テーブルの上には何やらお酒と合いそうな料理が「これでもか!」というほど並べられて、ビール片手にワイワイガヤガヤ。そう、「熱炒」とは「台湾式居酒屋」のことです。普通、店先に魚やエビの泳ぐ水槽が並べられたり、氷の上に「本日入荷」の新鮮な海鮮たちがご指名を待っていたり。メニューも刺身をはじめとする海鮮系から、アルコールにピッタリの揚げ物系や炒め物系まで。料理が一皿どれでも100元というのをウリにしているお店も多く、少ない予算で飲みに行きたい時や学生さんにも大人気です。冬には鍋も登場するので、会社の同僚や友人同士で鍋を囲みつつグラスを傾けるなんてことも。
数ある「熱炒」のお店の中で、今日ご紹介するのは長安東路にある「33区熱炒」。こちらの熱炒のお店、実はちょっと通常のお店とは趣が異なります。なんとこのお店は、ジャズの生演奏を楽しみながら食事が出来る「音楽テーマ熱炒レストラン」なのです!
オーナの田さん
今日は、オーナーの田衣祿さんに忙しい合間を縫って取材に応じていただきました。実はこの長安東路ですが、中山北路から新生北路の間は熱炒店がひしめく激戦地域。日本人が多く集まる歓楽街、林森北路のすぐ南側に位置しており、ナビプラザからも徒歩で10分弱の便利な立地です。
ナビが取材に訪れたのは夕方5時半ごろ。ちょうど開店したばかりで、まだ店内は閑散としています。「いつ頃が一番賑やかですか」と質問すると、「7時から11時くらいが一番賑やか。仕事帰りのサラリーマンや学生が一番多いですね。日本人も結構来ますよ。ここで食事して、その後、近くのお店へ2次会に流れていくパターンが多いんじゃないかな」とはオーナーの分析。
このお店に限らず、熱炒のお店はどこもリーズナブルだし、開放的で、仕事帰りに「ちょっと一杯」には最適。まさに台湾の日常に根差した「台湾式居酒屋」なんです。ナビも、日本から来た友だちに「台湾の人たちがいつも飲んでいるような場所に行きたい!」とリクエストされると、必ず熱炒のお店へ連れて行きます。
なにゆえ33?
さて、こちらのお店ですが、どうして店名が「33区熱炒」なんでしょう?オーナーの田さん曰く「33は私のラッキーナンバーなんです。どうして33かは色々な理由があるので詳しく説明できませんが、とにかく“33”が大好き。だから、店内のテーブルの数も33卓にしてあります」と、こだわりを教えてくれました。
オーナーの横顔
魚の説明をしてくれる田さん
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お客さんの間にも積極的に入ってコミュニケーション
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オーナーの田さんは台湾中南部の嘉義出身。20年ほど前に台北へ出てきて、いくつかの仕事を経験しました。その後、イタリア料理とフランス料理の高級レストランを開店。その当時の取材記事を見せてもらいましたが、ナビでも知ってる台湾の某国会議員や、日系の某自動車会社のオーナーも常連という「超」高級店だったようです。
でも、どうしてそんな高級レストランを手放して、いわば庶民的な熱炒のお店を開いたんでしょうか。「ひとことで言うと、高級なレストランにはやっぱりお金のある人しか来ない。そこで、この時のイタリアンやフレンチの経験を熱炒に生かして、一般の人たちに提供したら喜ばれるんじゃないか、って考えたのが発端かな」と話してくれました。
そしてもう一つ、ナビが疑問に思っていたこと。実はナビもちょくちょくこの界隈には出没して夜な夜なグラスを傾けているんですが、この長安東路の両脇には老舗の熱炒店がいくつもひしめいている激戦区。どうしてわざわざこのエリアに出店したんでしょうか。
メニューにはない試作品。上のソースに秘密アリ
「自信があるんですよ(笑)。というのも、うちのお店は通常の熱炒とはメニューがちょっと違います。もちろん、普通のメニューもあるけど、ほとんどの料理はイタリアンやフレンチ、メキシカン、日本などの食材や調味料を参考にして、私がアイディアを出して考案したもの。他のお店と違うものを出しているからそれで勝負出来るんです」と自信満々。なるほど見て下さい、こちらのホワイトボードのメニュー表。常に新しいメニューを創作し続けているという田さんが考え出した今期のメニューが書かれています。このホワイトボード上のメニューは半月に一度更新され、その間の注文数を集計しておき、期間内に一定数の注文があれば、晴れて正式メニューとして登録されます。もし、規定数に達しなかったメニューは残念ながらボツとなり外されてしまいます。
それでは早速、田さんイチオシのメニューを紹介していきましょう。
5人前はありそうなボリューム!
まずは「イタリア風炭焼豚肉グリル」。
いきなり熱炒にはちょっと似つかなそうなメニューが出てきました。日本在住の、田さんの義理のお姉さんが持っていた秘密のレシピで作られたイタリア風ソースたっぷりの豚肉グリル。下ごしらえのために数時間、タレに漬け込んだ後、炭火で下焼きをしておきます。テーブルに出す直前にもう一度火を通して焼き上げるなど、準備と調理に時間がかかるため、要予約です。
「金沙豆腐」。カニ味噌たっぷりのタレで煮込まれたお豆腐。一口食べたナビ、もーう猛烈に白いご飯が欲しくなりました。カニ味噌の甘みと塩味が上手にマッチした、まさに一押し!
こちらは新疆とイタリアの香料に、インドのカレーを加えた多国籍軍ソースで味付けされた羊肉。
台湾では「黒格」と呼ばれる高級魚。台湾東部の契約している漁師さんから毎日新鮮な魚が送られてきます。ただ、この黒格は毎日取れるとは限らない珍しい魚。しかも、田さんは傷が付きやすい網で捕獲した魚ではなく、釣った魚を用いるなどこだわりを見せています。この料理はシンプルに塩を振って焼いたもの。田さんがナイフとフォークを使ってキレイに食べやすくしてくれました!
「海鮮クリームソースのウェハース揚げ」。海鮮たっぷりのクリームソースをウェハースで挟んで揚げた創作料理。サクサクとした食感と、とろーりクリームソースがホクホクです。
タロイモと桜エビ炒め。タロイモの食感と桜エビの塩味がマッチしてお酒の肴にピッタリ。
カニの甘辛ソース炒め。甘辛いソースが新鮮なカニ肉とマッチして黙々と食べちゃいます。あれ?このカニのカニ味噌がさっきの「金沙豆腐」に使われたんでしょうか??
楽しめます
いやー、台湾の熱炒といっても奥が深い!色々な国の調味料やら食材を参考にして、バラエティに富んだメニューを創り出そうと努力されているのがよく分かります。とはいっても、ナビの個人的な印象ではやっぱり日本料理を参考にしたものが多いような感じ。確かに台湾の人々にとって日本料理は日常生活にも溶け込んだ身近な料理ですが、その点いかがでしょうか。
おしゃべりしながらも手は止まらず
「私の祖父は、日本時代、初めて“モールス信号”を習得した台湾人なんです。昔、特に戦時中は、暗号電報を送る際にはこの“ツーツートントン”のモールス信号が大活躍しました。だから祖父は日本語ペラペラ。私も15歳くらいまでは祖父と一緒に生活していたので、かなり日本語が出来たはずなんですが、もうすっかり忘れてしまいました。だけど、姉は日本人と結婚して東京に住んでいますし、私自身もちょくちょく日本へ出掛けます。一番好きなのは日本料理だし、場所柄、日本人のお客さんも多いし、友だちもたくさんいるから、どうしても日本料理を参考にする割合は多くなっているかもしれませんね」と話してくれました。
ふと見ると、田さんは各テーブルをまわりながら、お客さんとのおしゃべりをしつつ、店内に気を配っています。また、お客さんの中には田さんのお友だちも多いようで、次から次へとナビのテーブルへ連れて来ては嬉しそうに紹介してくれます。こうした友だちをたくさん引きつける田さんの人柄が商売成功にも繋がるのでしょう。
季節柄、忘年会も多いようで、奥にある個室には家族や親戚、友人が集まっての忘年会の真っ最中。田さん、ここにも私たちを連れ込んで、皆さんに紹介してくれました。皆さん、結構酔っ払っているようで、ウイスキーやら高粱酒の空きビンがズラリ。ナビたちにも「一杯どうぞ」と高粱酒をふるまってくれましたが、ここまで、結構飲まされてきたナビも結構酔ってきてます。隣を見るといつの間にかナビ子がウイスキーを一気飲みしてました。
小籠包やフカヒレを目当てに、日本から台湾へ遊びに来る観光客の方も多いですが、こうした熱炒のお店では、台湾ならではの新鮮な海鮮や独自の料理が小皿でたくさんの種類を楽しめます。時には、こうした「台湾式居酒屋」で、台湾の人々の日常生活に触れてみるのも楽しいかもしれませんね。
以上、酔っぱらった台北ナビがお伝えしました。