改めて見る台南水道の歴史!赤レンガの博物館としてリニューアル
こんにちは、台北ナビです。
台南市中心部から、車で走ること約40分。風光明媚な山上という郊外に、台南水道をテーマとした博物館がオープンしました。緑豊かな自然と、歴史の刻まれた建築物が並ぶ園内。ハイキング気分でのんびり散策しながら、普段身近な存在である水についても知ることができる「台南山上花園水道博物館」をご紹介します。
3人のキーパーソンによる台南水道の歴史
ライフラインの中でも、特に衛生管理や伝染病予防に大切な生活用水。台南地区では日本による台湾統治が始まって間もない1897年から、後に「台湾水道の父」と崇められる、アイルランド人のウィリアム・K・バートン氏と、その学生であり助手であった濱野彌四郎氏により、水質調査が行われ、その後の1912年から10年の年月を費やして完成したのが重力式排水というシステムを用いたこの台南水道です。
この事業の計画には、烏山頭ダムでおなじみの八田與一氏も参加しています。台南水道は、烏山頭ダムや曾文ダムが完成するまで、市民の重要な生活用水を提供する場としてのお役目を果たしていました。
水道としてのお役目はすでに果たした建物ですが、綿密に設計されていることや、それぞれの建物に特色があることから、2002年には県指定古跡となり、2005年には国家指定古跡に認定されました。
その後、2002年から台南市政府より進められた古跡修復計画により、2019年に台南水道は「台南山上花園水道博物館」として生まれ変わりました。
3+1個のエリアに分かれた園内の歩き方
まず台南山上花園水道博物館は、大きく分けると2つの敷地に分かれます。博物館エリア(こちらはさらに細かく3つのエリアに分かれます)と、浄水池エリアです。博物館エリアの入り口は、大通りに面していて、臺南水道博物館バス停から歩いて3分ほどです。もう一方の浄水池エリアはバス停から1㎞ほどあり、歩くと15分ほどかかります。敷地内も広いので、どこから回ろうか決めておいた方がいいかもしれません。
台南山上花園水道博物館提供
それではまず、博物館エリアのほうから入ってみましょう。
博物館エリアのほうは、入り口でチケットを購入し入場します。(大人100元/子供50元)。このエリアは、花園エリア、密林エリア、博物館エリアの3エリアからなっています。ゲートをくぐると、前方には公園が広がっており、中央に伸びるバートンロードを挟んで、右手が花園エリア、左手が密林エリアになっています。そして敷地奥の赤レンガの建物が並ぶ所が、博物館エリアとなっています。
花園エリア
花園エリアには、圧倒的な存在感を放つ大きな2本の松の木が植えられています。これは、日本統治時代に植えられた琉球松で、このロータリーは宮の森ロータリーと命名されています。かつてここには、伏見宮博義王がこの地を訪れた際に命名した、宮の森ゴルフ場が存在していたそうです。現在は、その面影はすっかりとなくなってしまいましたが、この松だけが、昔からこの場所で時代の移り変わりを見つめています。
力強くのびる松の樹
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八田池と命名されたこの池は子供たちの遊び場に…
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密林エリア
10ヘクタール近くある広々としたエリアには、様々な種類の植物が生息しています。大きなオブジェが設置され、静かな時間が流れていきます。
濱野彌四郎氏の銅像
博物館エリア濱野彌四郎氏の銅像から後方が博物館エリアになり、急速濾過池室(A館)、急速濾過装置室(B館)、ポンプ室(館)の個性豊かな3つの建物が並んでいます。
当時、水源からやってきた水は、敷地外の沈殿池にて不純物の沈殿工程を経て、速濾過装置室(B館)に送り込まれます。そこで薬品による濾過が行われ、ポンプ室(C館)にて水を高いところへ上げ、ここから1キロほど離れた浄水池エリアに送るという工程を踏んでいました。急速濾過池室(A館)は、戦後の人口増加に伴い、台湾水道局が設置した建物で、B館、C館より後にできた建物です。
どの建物から見学しようか…迷いどころですが、当時の水の流れ、そして観光客の流れに乗って、B館→A館→C館の順で進んでみることにしました。
・急速濾過装置室(B館)
赤レンガの美しい外観の急速濾過装置室は、室内にこもる熱を放出する設備や大きな地震に備えた設計がいたるところにみられる構造になっています。室内は、試験室や消毒室など細かく分かれていて、理科の実験室のような雰囲気です。
高さ約16mの吹き抜けホールには、ずっしりとした筒形の急速濾過装置が並んでいます。天井の木製トラスがきれいで、なんだかワイン倉庫にいるようなおしゃれな雰囲気。化学薬品にて遺物や微生物が取り除かれた水は、この濾過装置で濾過され、ここからポンプ室へと送られます。
・急速濾過池室(A館)
急速濾過池室(A館)は、太平洋戦争後、急激に増えていった水道使用量を賄うため、台湾水道局が1952年に設置した建物で、グレーの外観が目印です。現在地下室へ入ることはできないのですが、潜水艦のようなカメラで、現在も保存されている地下の配管をうっすらと見ることはできます。
・ポンプ室(C館)
台南水道博物館の目玉ともいえる、レトロな外観の建物。吹き抜けになっているホールの足元は、ガラス張りになっていて、太い配管を見ることができます。
ホールのお隣には、ボイラーとバックアップ発電システムについての、展示がされています。またこの館内には、ひと息入れることができる小さなカフェ「水道咖啡」や、水道博物館のオリジナル雑貨などを取り扱うお土産販売コーナーも併設しています。
ここから少し離れた浄水池エリアへも足をのばして…
ポンプ室でくみ上げられた水は、ここから少し離れた浄水池エリアへと運ばれていました。博物館エリアと合わせて、浄水池エリアを見学するのもおすすめですが、ここから徒歩で約15分と、少し離れた場所への移動となるので、時間や体力と相談を。
もし効率よく台南水道を見学したい!のであれば、市の中心部からタクシーをチャーターするという方法もあります。タクシーのチャーターは、一般的な4人乗りの車で8時間3500元くらいが相場です。バスの時間やエリア移動を気にせず観光できるので、こうした郊外の観光にはおすすめですよ。
浄水池エリアの方は、無料で見学することができます。…が、浄水池へは、189段という心臓破りの階段を上りきって、やっとたどり着くことができます。石造りの砦のようなこの建物は、屋根部分に50本の鉄製の通気柱が建てられています。館内を見学することができませんが、たくさんのコウモリたちが中で生活をしているそう。青い扉が特徴的で、今ではインスタ映えのスポットになっています。
約100年前に誕生したこの台南水道により、人々の生活の質は格段に向上したのではないでしょうか?大きな地震や台風などの災害の度に、改めて感じる水の大切さですが、ここを訪れ人々の努力や技術を知ることによって、常日頃から水を大事に使おうと考えさせられるよいきっかけになりそうです。台南にきたら、ぜひ郊外まで少し足を伸ばしてみてくださいね。
以上、台北ナビ(岩田優子)がお伝えしました。
「南水」のロゴマークもありますよ
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階段のふもとにある量水器室もお見逃しなく!
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