台湾の現代工芸の今が見える、遊べて学んでお買い物も食事もできちゃう素敵空間!
こんにちは、台北ナビです。
台北植物園の南側、国立歴史博物館に隣接する場所に「国立台湾工芸研究発展中心 台北当代工芸設計分館」という施設があるのをご存知でしょうか?
非常に長い名称なのですが、「国立台湾工芸研究発展中心」というのは、文化部(文部科学省に相当)に付随する台湾工芸品の研究センターで、台湾の工芸品について研究し、一般に広めながら、将来の人材も育てていくという機関です。本部は南投県草屯にあります。
そして、台湾の優秀な工芸家の作品を展示したり、実際に作品や工芸家と参観者が触れ合う空間を作り、台湾の工芸技術の高さを広く一般に伝えたり、ビジネスチャンスを創出する機会を設けた場所、それが今回ご紹介する「台北当代工芸設計分館」なのです。
こういってしまうととても堅苦しく感じるかもしれませんが、実際は、遊びながら台湾の工芸品に触れて、それを学べる空間なんです。近年はメイドインタイワンの「MIT」商品が人気を集めていますが、さらに高品質の工芸品への認識を深められるんです。
館長自ら案内してくださいました!
今回は特別に許峰旗館長に案内していただきました!ご自身もデザイナーで、ドクター。さらに国立台湾教育大学で教壇にも立っているという物凄いお方です。
ちなみに、「伝統工芸」という言葉は、よく聞く機会があると思いますが、こちらは「当代工芸」。日本語訳すると「現代工芸」という意味です。
「工芸品」というと、古臭いイメージがあったり、手作りで非常に高価だったりと、普段の生活ではあまり親しみのないものかもしれません。ですが、ここで紹介されている工芸品は、社会の変化に応じて、実用的なものに生まれ変わっているものばかり。スタイリッシュで洗練されていて、生活に取り入れやすくなっているんです。
台北当代工芸設計分館はそんな工芸品に触れ合える場所。工芸品に対する認識を変えられる場所でもあるんですよ。
展示内容を見る前に、建物自体にも目を向けてみましょう。台北当代工芸設計分館の建物は、一見すると北京の「天壇」のような中華様式が漂う歴史的建築物。1959年に建てられたこの建物は元々、教育関係の資料館や国立台湾科学教育館などとして利用されていたのですが、2003年以降は利用されなくなり、2008年からの修復作業を経て、2015年に台北当代工芸設計分館としてリニューアルオープンしました。
建物自体は戦後に建てられたものなので、鉄筋コンクリート造りなのですが、中華様式を表現するために、さまざまな当時の最新技術が用いられ、荘厳ながら美しさのあるつくりになっています。斬新な建築技術は館内の随所に解説文が日本語付きで掲示されているので、興味のある方はそちらもぜひチェックしてみてください。
実は出入口があるのは2階。階段を上がって入館します。体の不自由な方のためにスロープもありますのでご安心を。
ちなみに、台北当代工芸設計分館の入館は無料!台湾を代表する洗練された質の高い工芸品の数々と触れ合えるというのにこの待遇はとっても嬉しい限り。思い立ったらすぐに立ち寄れる気軽さがいいですよね。ゲートがないので入口は開放的に感じます。
話がそれてしまいましたが、2階は工芸品のほか、台湾らしい雑貨を販売するショップとなっています。といっても、観光スポットによくあるお土産屋さんとは違って、やはりデザイン的にお洒落でかつ機能的なものばかり。
ストラップやマグカップ、Tシャツ、ヘチマを閉じ込めたカラフルな石鹸、なんてものもあります。
また、一部は展示スペースになっていて、ナビが訪れた際は台湾を代表する漆職人・頼高山氏をはじめとする職人の作品が展示されていました。
漆の技術は日本統治時代に台湾に伝播されたものですが、戦後には独自の発展を遂げていて、中華テイストや原住民テイストのものなど、日本の漆工芸には見られないデザインがたくさんありました。
3階:創意空間・工芸新潮・工芸設計工作坊・修復展示室
こちらで目を引くのはガラス張りになった工房。数人の工芸家さんを期間限定で常駐させていて、実際に作業の様子を見学できます。工芸家さんによってはワークショップを開いていて、小物や雑貨作りに挑戦できます。
ワークショップは基本的には中国語で行われるのですが、英語や日本語が堪能な方がいることがあるので、興味のある方は要チェックです。実際に身振り手振りを駆使して参加した日本人観光客もいるそうですよ。
ちびっ子が楽しめるプログラムもあります。
そして、展示コーナーでは、日本と台湾の彫刻家による、木彫の鳥の特別展が開催されていました。
鳥の標本といえば、これまで死んだ鳥に特殊処理を加えて、剥製を作る手法が主でしたが、その剥製を作るために、生きている鳥をわざわざ殺す残虐な行為がありました。
それで注目を集めたのが、木彫による標本作り。剥製だと色が褪せてしまうという欠点も克服し、世界中でコンテストも開かれているだとか。
本物と見間違うばかりの精巧で躍動感すらある作品もたくさん並べられていましたよ。まさに工芸技術の粋を集めた結晶の数々に、ため息ばかり出ていました。
さらに、修復作業の資料を展示する空間もありました。建築の修復というと、工芸品と関係がないようにも感じられますが、鉄筋コンクリートに代表されるさまざまな現代の技術を駆使して伝統的な中国様式を表現するというのは、新しい工芸の形の体現なのかもしれません。
仕切りがない広い空間全体が展示スペースとなっている4階。ナビが訪れた際にはさまざまな素材で作られた台湾の巨匠たちによる芸術作品が並べられていました。
木で人や動物、レンガを、ガラスで植物を、陶器で金属を表現したりと、素材をそのまま使わず、ひねりを加えてまったく別のものを作り出すクリエイティブな発想にただただ驚くばかり。
全ての工芸家が素材そのものの性質や特徴を十分に理解した上で、一見不可能に見えるものを可能にしてしまう技術の高さと、その美しさに興奮を隠しきれませんでした。
可愛らしい作品もありました。楽しそう
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竹細工に見えますが陶器です
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5階:工芸餐飲区
参観をしていてお腹がすいちゃったなと思ったら、5階にどうぞ!有機食材ばかりを使ったビュッフェ形式の食事が楽しめる「蕃薯藤 自然食堂 台北植物園店」があります。ランチとディナーのほか、リーズナブルなブレックファーストとアフタヌーンティーの時間もあります。
天然酵母を使ったパンやビスケット、シリアル、有機野菜、ケーキなども販売しています。日本へのお土産にはなかなかできなさそうですが、台湾に駐在している方にはぜひ立ち寄ってみてくださいね。
数ヶ月に渡って工芸の技術を学ぶカルチャースクールのような学習教室もあります。平日の午前中に訪れたので、失礼ながらてっきり現役を退いたご高齢の方が多いのかなと思ったのですが、実際には若い人も多く参加していて、皆さん笑顔で受講されていました。
また、ちょうどこの時は、ここで働くボランティアの人たちが作った作品を展示していました。
みなさん短期間のうちに、素人目からすれば、本当に感嘆するしかない物凄い大作をこしらえていて、これまたビックリ。美的センスのないナビは、羨ましくなりました。
台北植物園や郵政博物館、国立歴史博物館に隣接し、一緒に参観すれば台湾に詳しくなれること請け合い!家族で楽しめる場所なので、ぜひ半日~1日の時間を作って遊びに来てください!
以上、本気で工芸教室に通おうか悩んでいる台北ナビがお伝えしました。