学問の神様として有名な、緑も多い孔子廟をゆっくりと巡ってみませんか。見て、聞いて、体験して六芸も学べます。
こんにちは、台北ナビです。
今回は思想家、教育家で儒教の創始者、孔子を祀った孔子廟へ行ってきました。台北といえば至る所に寺廟がありますが、どこから見たらいいのか迷ってしまうという方、こちらは学問の神様ということで受験の合格祈願等にはもちろんのことですが、廟内は緑も多く、静かに巡りたいという方にもオススメの寺廟です。
台北孔子廟の歴史
建立は1879年、しかし、日本統治時代に病院へと変わり、1907年には取り壊され学校となりました。その後1929年に再建、大成殿が完成しました。翌年以降、門や明倫堂が建てられ、2008年の修復を経て現在の姿となっています。
また、9月28日の孔子の誕生日は教師節とされ、「釈奠典礼」と呼ばれる儀式も行われています。
まずは外壁にも注目
ナビはMRT「圓山」駅から歩いて孔子廟へ行きました。徒歩約10分です。駅や途中にも看板が出ているので、迷わず着くことができると思います。歩いていると赤いレンガが見えてきて、外壁に有名な「萬仭宮牆」の文字、孔子の77代目の子孫にあたる孔徳氏が書いたもの。こちらは論語で学問に近道はなし、一生懸命修行しなさい、という意味だそうで、萬は数量の大きさ、仭は長さの単位で、学問の深さを表していているそうです。
事前にガイドブックやHPでもこちらの写真を目にしていましたが、実物は想像していたよりもかなり大きく、迫力があります。
廟内は穏やかな空間
入り口「黌門」です。屋根の装飾がツバメの尾のように伸びています。
壁つたいに歩き、右へ曲がると入り口「黌門」です。この黌門と反対側の「泮宮」は学校を意味していて、入り口となっています。やや小さい門ながらも門の上部には鳳凰や朝日のモチーフがあり、先端はツバメの尾のように伸びた美しい装飾が見られます。門を通り、中に入ると外のにぎやかさがうそのように静かで穏やかな空間が広がっています。(時々、飛行機が近くを通るのでハッとさせられますが。)
中は緑も多く、「黌門」近くにはモモ、スモモ(李)の木がきれいに植えられています。これは孔子には多くの桃李(弟子)がいることを意味しているそうです。他にも梅の木もあり、花咲く季節もまた違った風景が見られるのだなと感じました。
パンプレット、音声ガイド貸し出しと充実しています。
黌門すぐ横にはインフォメーションがありますので、こちらで日本語パンフレットをもらいました。パンフレットといっても簡単な地図だけでなく、孔子廟の歴史、儒教の思想、儒教料理までと、無料とは思えないほど充実したものがあります。日本語の音声ガイド(16時半まで)も借りることができます。
色鮮やかな麒麟とデザインされた橋
まっすぐ進み、メインの「大成殿」へと向かいますと小さな池と石の太鼓橋、「泮池」「泮橋」が見えてきます。先ほど見た「萬仭宮牆」壁の裏側に美しい麒麟の絵があります。孔子が生まれたとき、麒麟が庭に駆け込んできて聖人の誕生を告げたと言われていることから賢い子どもを麒麟児と呼ぶようになったそうです。装飾ひとつひとつにも意味が込められているんですね。
池には鯉と亀もいて、眺めていると何ともゆったりとした気分になってきます。「泮橋」の装飾も特徴的で、現在見てもモダンなデザインですよね。欄干上部には筆の形をした擬宝珠があり、文運(学問、芸術が盛んにおこなわれるようにと)を象徴しているそうです。また、装飾的な意味だけでなく、「泮池」は防火用、温度調節の効果も果たしています。
鮮やかな色彩の麒麟。ぜひ近くでも見てみてくださいね。
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橋の上の装飾にも注目です。
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屋根や柱も見逃せません
門釘が打たれている「櫺星門」
門板に108個の門釘が打たれている「櫺星門」。108というのは天上の108星座を象徴しています。この辺りの屋根には色とりどりの装飾品があり、ひとつひとつ見ているだけでもとても楽しめます。龍、麒麟、花、馬、虎、人々などなど。特に屋根の背、端には「鴟物」と呼ばれる陶の「龍頭魚尾」という龍のようなものが見られます。当時は火災が多く、この「鴟物」が波をたたきおこし、雨を降らせるといった防火の意味があるそうです。
屋根の色鮮やかな装飾に目をひきつけられますが、石の柱の彫刻も見事です。こちらにも龍が巻きつけられ、波から天へと登っていく躍動感あふれるものとなっています。柱という支えるものでありながら、この動き出しそうな表現というのもまた素晴らしいなと感じました。
厳かな雰囲気の「大成殿」
門を抜けると「大成殿」です。この日は平日の夕方ということで人もあまりいなく、静かで厳かな雰囲気。「大成殿」内の中心には孔子の位牌、左右には弟子の位牌が祀られています。この中が赤を基調とした天井飾りや祭事に使う楽器が並べられていてとても美しいのです。最初に孔子廟に入った時のようにまた違う空間を感じることができました。特に天井飾りは八角形の装飾が何層にも重なって不思議な奥行きを生み出していました。端にいるコウモリにも注目です。コウモリは福を招くとされる縁起物です。
見学ももちろんですが、ナビもしっかりと語学勉強のことなどお願いしてきました。学問の神様ということで、学生も多いようで受験票を入れる箱もありました。
学問の神様らしく、多くの学生が訪れているようです。こちらには受験票を入れていました。
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端に福を招くというコウモリがいます。
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「大成殿」の東側、西側には「東西廡」。孔子の弟子や儒学者、154人が祭られています。
六芸とは
その他にも「大成殿」の周りには六芸の部屋があります。六芸とは孔子の時代、学生たちが学んでいたものです。私たちでいう数学や、国語、理科、音楽などのようなものです。六芸とは次のようになります。
「礼」 祭祀の礼
「楽」 声楽、楽器、舞踏
「射」 弓術
「御」 馬術、馬を操る5つの法則
「書」 識字、習字
「数」 数学、天文学、物理
2011年に六芸の部屋、マルチメディア常設館(9:00~17:00)が設置され、映像や、音、タッチパネルなどを使った体験型展示があり、遊びながら学べる施設になっています。
「六芸の礼と楽」の部屋。礼器の数々が展示されています。
「六芸の礼と楽」の部屋では9月28日「釈奠典礼」のときに使う礼器や楽器が展示してあります。近くで見られる礼器の数々に興味津々です。パンフレットの表紙にもある、キジの尾羽の「籥」も展示してあります。
楽器は見るだけでなくやはり音も聞いてみたいですよね。そこは工夫された展示方法、楽器を選ぶと映像の中の人が演奏をするという仕掛けも。また、写真を撮ってスクリーンの舞の列に参加できるようになっていたりなど、ユニークな仕掛けもあり、かなりエンターテイメント性の高いものになっています。
この日は行けませんでしたが他にも書道や馬術のバーチャル体験コーナーなどがあるそうです。確かに展示品を見たり、文章を読んだりするだけよりも様々な方法から学ぶことは大人にとっても楽しめるものでした。
記念にお守りや孔子廟グッズ
かわいい孔子と弟子たち
「大成殿」を出て入り口のほうへ回ると「明倫堂」です。こちらは学校として使われていた建物です。現在でも論語教室、書道教室などが開かれています。
1Fにはコーヒーショップやギフトショップがあり、ギフトショップでは孔子に関する本や学業をはじめとするお守り等があります。また、孔子廟が描かれたオリジナルのマグカップ、試験に倒れないようにとかけた孔子のおきあがりこぼし、合格を意味する「金榜題名」の文字の書かれたクッキーなども人気だそうです。ちなみに孔子の絵ですが、こちらでは中学、高校、大学と若い方が多く来られるので若い人にも親しみやすいようにと孔子がかわいらしく描かれています。
ギフトショップでは絵馬も販売されていて、お店を出てすぐ近くの木には多くの絵馬が結ばれてありました。受験合格といったのがほとんどで、学生さんが多く来ているようでした。日本語で書かれたものも結構見られましたよ。
最後にいちばん奥のエリアへ
緑がいっぱい!
入り口から見ていちばんの奥のエリアに行っていなかったので、最後に。このエリアはちょっとした林のようになっています。木は父母を表すチャンチン、ワスレグサが植えられており、両親の恩を忘れてはならないということを意味しているそうです。参拝の最後に静かに両親を思いながら林を歩くのも心が落ち着けていいですね。
寺廟を見学したり、お参りするだけでも充実したものになりますが、六芸マルチメディア常設展ももちろん、至る所に日本語でも解説、案内が出ているので、それらに目を通すことでよりいっそう充実した見学になりますので、ぜひ読んでみてください。また、日本語ガイドも1週間前までに申請すれば利用できるとのことです。
以上、台北ナビでした。