客家の町美濃へようこそ! 紙傘、客家服、客家料理・・・客家の伝統文化に迫ります
こんにちは、台北ナビです。
2010年高雄県市の合併に伴い,これまで高雄市の11区と高雄県内27の郷・鎮・市に分かれていた行政区が、高雄市全38行政区に再編成されました。
これにより高雄市がますます国際地方都市として注目されるようになり、都市部だけでなく旧鄉・鎮地区の産業発展にも力を注ぐようになっています。そんな勢いに乗っている高雄市で、今新しい観光スポットとして注目されているのが高雄市美濃区。ここは台湾南部で客家人の町として有名な場所で、台湾の大自然と歴史的建築、客家の伝統工芸文化が息づく美しい静かな町です。
またここ美濃は2012年から始まった交通部観光局国際スポットライトプロジェクト(ボーダーレス部門)にも指定され、台湾を代表する観光スポットとして海外の観光客の皆さんに向けてアピールしています。これからブレイクしそうな美濃の町、今日はナビが半日かけて美濃を散策しました。みなさんにおすすめの美濃の観光スポットをご紹介いたします。
まずは客家人について知りましょう♪
まず客家についての知識を事前に頭に入れておいた方がいいですよね。客家は民族のひとつで、もともと大陸華北の黄河流域に住んでいたとされています。その後、内乱などにより各地に渡り移住しました。台湾では、北中部の桃園、新竹県、苗栗などを中心に居住し大きな民族グループを構成しており、台湾南部に住む客家人の多くは桃園・新竹・苗栗・屏東などから移住し、高雄市美濃区や屏東県内埔郷や萬巒郷に住みつきました。歴史的にほかの集団と軋轢を起こすことも多かったようで、その生活環境は厳しかったそう。
そのため、客家人の特徴として、節約家で勤勉であると言われています。また客家人の衣食住の習慣、宗教、建築は、独自の客家文化を形成し発展してきました。また客家人の話すことばは客家語と呼ばれ、中国語(北京語)や台湾語とは全然違って客家人以外の人はおそらく聞いてもほとんど理解できないほど。最近台湾では多言語や多文化を尊重しようとする動きから、少数言語である客家語を次世代に継承していくため、小学校で客家語の授業をしたり、客家語検定試験を行ったりしています。
客家人の町、美濃。
美濃のまちを流れる美濃渓。奥に見えるのが美濃山です。
さて、「美濃」の地名の由来は様々ありますが、一説によると、ここはもともと先住民が「水がきれいで、汲めども尽きない」所として「彌濃」と呼んでいたそうですが,日本統治時代1920年に「美濃」と改名されました。この水のきれいな農業地帯には、今でも働き者の客家の人々が多く暮らしています。また美濃はなんと台湾で一番多く博士を輩出する所として有名で、その数はゆうに400人を超えるそう。客家人の勤勉さがここに証明されているわけですね。
とこんな感じで客家人の全体像は見えてきたようですが、とはいえまだまだ謎の多い客家人。今日はそんなミステリアスな客家人の暮らしを探りに、美濃へいってみましょう!
美濃舊橋
美濃舊橋の両端に立つお猿さん親子像。
高雄中心部から40Kmほどの距離にある美濃。
この日の美濃散策は美濃舊橋から始まりました。美濃舊橋の辺りはかつて美濃の中心地として外部とこの町を結ぶ交通の要所として栄え、今でも当時の面影を残す建物が老街として残されています。まずナビの目を引いたのが、美濃舊橋の両端に立つお猿さん親子像。これは美濃舊橋といって日本時代の昭和五年、美濃の河を挟んだ村どうしの交通の便をはかるため、当時街の中心地であったここに作られたんだそうです。全長73メートル、幅約4メートルと小さい橋ですが、昔の人達の使用していた牛車が2台すれ違うには十分の幅だったそう。
現在、美濃舊橋の隣に新美濃橋ができてからは、こちらの舊橋は歩行者専用となっています。なるほど、猿の親子像は子供たちが安全に通れるように、車両が入らないようにするためなんですね。とはいえ、猿親子像の間からバイクが通り抜けていき、ナビたちの横をびゅんびゅん走っていくのですが・・・。まあまあ、そこのところはあえて突っ込まないようにいたしましょうね!そうそう、日本時代からあるこの橋はとても頑丈にできていて、2009年の八八水害の時にもこの橋は流されなかったとか。こんなところにも日本と台湾の繋がりが垣間見れて歴史を感じますね。
美濃舊橋の隣には新しい橋が。
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バイクが通るので気をつけて~。
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さて橋の向こう側には伝統朝市の屋台が出ています。さあ、橋を渡って行ってみましょ!
永安市場(朝市)
ナビたちが朝市に到着したのは午前10時を過ぎたころ。朝市は大体6時から10時までで、残念ながら大半がもう店じまいだったのですが、田舎の伝統的朝市ののどかな雰囲気に誘われ、何か美濃ならではの特産品、掘り出し物があるかしら~とぶらぶらしていると・・・ありました、ありました~!橋のたもとに店を広げているのは台湾スイーツの豆花やさん。なんと~!豆花1個15元!安い!安すぎる!しかもうまい!うますぎる!朝からこんな安ウマスイーツに出会えてラッキー!そのほか、地元農家の人たちが栽培した野菜や他の地域からトラックで売りに来た商人で賑わっていました。
みかんをトラックいっぱいに積んでいます。
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台湾で見る干し柿はみんな平たいです。
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地元で取れた野菜はどれも新鮮。
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芋の色がきれい~。
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客家人の農家では米を取ったあとの稲草を無駄にしないよう、ナスを束に結ぶのに再利用しているんです。ここにも客家人の倹約の精神が発揮されています。
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これは美濃名産の鳥蛋豆。
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客家布、客家服の店「錦興行藍衫店」
美濃舊橋の近く、永安老街にあるこのお店は、客家の伝統服のオーダーメイド、そのほか伝統柄である花布を使った帽子、袋や客家花布を販売しています。第2代目の謝さんが客家服について説明してくれました。客家人は物を大切にする倹約家。そのため客家服は長く着られるようにかなり大きめにできているそうです。なるほど、お店に掛けてあった昔の客家女性の写真を見ると、かなりゆったりとしたラインで着ていますね。そして客家服は腕と胸の縫い目にポケットがたくさんついているんです。これは敵が来た時に、すぐに荷物を持って逃げれるようという先人たちの知恵が隠されていました。またシンプルな客家服の特徴的デザインは襟元から胸元にかけて延びる絵柄。この柄で若い未婚女性、花嫁さん、既婚女性、年長者女性など一目で分かるようになっているんです。こうやって比べてみると若い女性やお嫁さんの柄はとてもかわいいですね。いつの時代にも女性は美しくありたい、そういう思いがこの襟元には秘められているのです。これぞ倹約的精神に広がる襟元のロマン!
二代目の謝国耀さん。
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昔の客家女性の写真が飾ってありました。
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シンプルな客家服の特徴的デザインは襟元から胸元にかけて延びる絵柄。
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花嫁さん(左上)少女(右上)、既婚女性(左下)、年長者女性(右下)と柄で見分けます。
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錦興行藍衫店
住所:高雄市美濃区泰安里永安路177号(美濃国小そば)
電話:07-681-1191
FAX:07-681-1191
営業時間:8:00~20:00
オーダーメイドの場合日本まで郵送してくれるそうです。
廣進勝油紙傘工作室、第三代目の林榮君さん。
さて美濃名産と言えば最も有名なのが油紙傘。
この日は美濃を代表する油紙傘を、代々伝統的に受け継いでいる「廣進勝油紙傘工作室」にやってきました。現在第三代目の林榮君さんと奥サマの呉劍瑛さんが、こちらの工房で伝統的な油紙傘製作に取り組んでいらっしゃいます。林さんによると、美濃では清の時代からすでに油紙傘が作られていたそう。その後日本時代大正期から民国50年(西暦1961年)の約40年間は、美濃の油紙傘産業の最盛期で、その当時は美濃地区の油紙傘工場がたくさんあったそうです。その後、1960年代以降になると台湾の工業化が進み、安くて軽いビニール傘が普及したことで、これまでの紙傘産業が急速に衰え、美濃にあった紙傘工場は次々に閉鎖されていきました。そんな苦境に立たされながらも、廣進勝油紙傘工作室は失われつつある伝統的な油紙傘技術を守り続けてきたのです。近年、台湾の各地域の伝統文化工芸を守ろうとする風潮の中、廣進勝油紙傘は本来の実用的な傘の価値を超えて、伝統工芸品としての芸術的価値のある油紙傘作りで、美濃の油紙傘に新たな息吹を吹き込みました。現在では雑誌やマスコミにも度々取り上げられ国内だけでなく、国外でもその名を馳せています。
台湾埔里の「宣紙(せんし)」と南投産の孟宗竹を使用。
それでは紙傘について、ちょっとご説明いたしましょう。客家文化では紙を材料とした傘は「円形、家族の再会や団欒」を象徴し、「紙」の読み方が「子」に近いことから、子孫の繁栄を祈って、「紙傘」を嫁入り道具の1つにする習慣があります。
さてこちらの工房の紙傘で使われている材料は、輸入の安価な材料を使わず、台湾埔里の「宣紙(せんし)」と南投産の「孟宗竹」を使用する、というこだわりがあります。また紙の上に塗る油は「梧桐(アオギリ)の実から取れた油」を使用。油紙傘の大きさは半径7寸から1.7尺まで5種類のサイズがあります。今日はみんなで傘にお絵かきDIYをやらせてもらいました。こちらではDIYのほか、師匠林榮君さんの作品を購入することもできますよ。
台北ナビキャラの油紙傘!ナビプラザに飾ってあります
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みんなオリジナルの油紙傘ができて大満足!
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廣進勝油紙傘工作室
高雄市美濃区民權路47号 (中正湖林家祠堂の後ろ) 07-6813247
営業時間:9:00~18:00
お昼はもちろん客家料理できまり!
油紙傘DIYで真剣に絵を描いている途中からお腹がぐうぐう。お昼も過ぎたので地元で人気の客家料理屋さん「美濃合口味」へ。郊外にあり、派手な看板などなくうっかりすると通り過ぎてしまいそうなくらい素朴なお店ですが、外には大型バスも止まっていて、団体客も利用できるほど店内は広いです。ナビが訪れた時はお昼をだいぶ過ぎた1時頃だったので、ほとんどのお客さんは食事を済ませた後でした。
さあ、客家料理を食べずして客家文化は語れません!目で見て、味わって、客家料理を堪能します。
花生豆腐 まず1品目。ピーナッツの香りとつるんとした食感がさわやかです。まずは何もつけないで素材そのものの風味を楽しんで。お好みでにんにく入り醤油たれを付けていただいても。
炒粄條 こちらは定番客家料理。「板條」は米でつくった麺で、炒めたり、汁麺にします。板條は地域によってきしめんのように幅広だったりしますが、ここ美濃の板條はやや細身の麺を使うそうです。板條はつるつるしてこしがあり、米なのでたくさん食べてもお腹がもたれないんです。
炸小魚 地元美濃渓で取れた小魚とエビの揚げ物。サクサクして香ばしい。
醉鶏
当店自慢のおすすめの一品。しっとりと蒸しあがった鶏肉はほのかに紹興酒の香りがします。お肉の周りのコラーゲンもいただいてお肌つるつるに!
野蓮
ぜひオーダーしてみてほしいのがこの「野蓮」。このとっても珍しい野菜は、水のきれいな美濃の特産で、水中で栽培するため、潜水服を着ることもあるんだそうです。睡蓮に近い植物で、全長150センチにもなるそうです。長いくきの部分を使った炒めものはクセになる歯ごたえとほのかな甘さ。
客家小炒
スルメイカとねぎの炒め物。シンプルですが、ごま油で炒めたねぎとしょうがの香りが最高でした!う~ん、ビールのおつまみによさそう~。
客家高麗菜冬瓜封
「封」とは客家語で密閉するという意味で、余分な水分が入らないようにして、素材自体のうまみを引き出す調理法。昔、女たちが畑仕事に出る前に、お鍋に野菜や肉を入れ弱火で煮ておき、お昼仕事から帰ってきた頃にはちょうど料理ができあがっている、という客家人の生活習慣からこの料理が生まれたそう。キャベツととうがんがじっくり煮込まれ、野菜の甘みが引き立ちます。
小封肉
これは筍と豚の蒸し煮。豚肉は一口サイズに切られているので食べやすいです。また長時間煮込まれているので、脂分が抜けて、思ったほど脂っこくありません。あまから醤油が白いご飯に合う!
美濃合口味
住所:高雄市美濃区東門里民族路3号
電話 :07 681 1221
営業時間:
月曜: 11:00 - 14:00 、 17:00 - 20:00
火曜: 11:00 - 14:00
水曜~日曜: 11:00 - 14:00 、 17:00 - 20:00
現金のみ