台湾文学に思いをはせて、ゆったりとした時間を感じよう!中国茶や軽食もいただけます
こんにちは、台北ナビです。
古亭駅から徒歩10分、ローカルな雰囲気がただよう道を歩いて行くと、突如周りとは少し違う、ゆったりとした空気が流れる建物を発見!
それは、台湾文学をテーマとした「紀州庵文化森林」でした。
一見したところ、どんな施設なのかよくわかりません。では、さっそく施設の中を見てみましょう!!
「紀州庵文学森林」は台北市文化局が台湾文学を広めることを目的とし、財団法人台湾文学発展基金会に委託運営している文化施設です。
台湾師範大学や台湾大学が近くにあったり、文学を主とする出版社が多くあったり、昔からこのあたりは文学的土壌が豊かに育まれてきている場所でした。
平松家
もともと紀州庵は日本統治時代の1917年に平松家によって開かれた料亭でした。鮎料理がご自慢だったそう。
敷地のすぐ隣には淡水河の支流である新店渓が流れていて、屋形船での宴会も行われていました。お客は船の上で食べたり飲んだりするほか、その場で新鮮な魚を捕まえて料理にしたり、また芸姑遊びも行われていたんだとか。そして船から戻ってきたあとは、身体を流して、また続けて宴会が開かれていたそう。
芸姑さんの様子
そして、紀州庵がいちばんの盛り上がりを見せるのは夜。
お客が次々と人力車に乗ってやってきて、河でのクルーズや料亭内で思い思いに楽しんでいました。
1990年代の紀州庵
終戦とともに平松家が日本へ戻った後は、公務員や教職員の宿舎となりました。そして、有名な小説家である王文興によって、紀州庵を舞台とした小説『家變』も執筆されました。1970年代になると、爾雅出版社、洪範書店、純文学出版、遠流出版などの出版社がこの地域に根を下ろし、文学の新たな風を地域に吹かせます。
21世紀に入り、台湾大学の学生によってこの土地が調査され、2004年に台北市の指定古蹟に指定。2011年に「紀州庵文学森林」としてオープンしました。
開店当初の紀州庵見取り図。三階建ての本館と別館、離れがありました
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こちらが本館
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「紀州庵文化森林」は主に、文学に関する展示スペースに茶館を併設した新館、城南文学公園、離れ(現在は修復中)に分かれています。
紀州庵2Fのベランダから見た城南文学公園と現在修復中の離れ
まずは茶館でひと休み
本館に入って右手に茶館があります
新館の入口を入ると、左手にすぐ文学茶館があります。MRT「古亭」駅からひと歩きして、ちょっと疲れたところで、ここで休憩。
文学茶館は、自然・ありのままに、をコンセプトとし、提供されるメニューにもこだわりあり。中国茶やコーヒーのほか、麺やご飯のお食事メニュー、軽食、デザートが用意されており、お茶だけ楽しんでもよし、がっつり食事をしてもよしという、使い勝手のいい茶館となっています。
頼んだお茶に応じて、淹れ方の説明カードがもらえます。これで自分で淹れる時も問題なし!
■工夫茶は木柵鉄観音、東方美人、阿里山烏龍茶などがあり、ナビたちは今回東方美人(1ポット320元)をいただきました。
ナビたちがいただいた東方美人茶
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お店の方に淹れてもらうこともできます
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茶器は、苗栗にある窯元・華陶窯のものを使用。華陶窯も自然をコンセプトとして陶器を作っており、文学茶館の考え方と合致することから、ここの茶器を使っているそう。
華陶窯の茶器はとても美しく、こんな素敵な茶器で飲むお茶は格別!
工夫茶の価格は1ポットあたりなので、4人までなら1種類のお茶をシェアすることが可能です。ただやはり、4人で1ポットだとお茶がすぐなくなってしまうので、やはり何種類か注文するのがおすすめです。
烏龍茶鶏湯麺線(230元)
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烏龍茶鶏湯麺線(ウーロン茶チキンスープ麺線)230元
この麺の緑色はなんと、緑茶の色!坪林の茶園で作られている麺を使用しています。スープもチキンスープをベースとし、烏龍茶がブレンドされています。よく見ると、烏龍茶の茶葉入り!もちろん茶葉も食べられます。麺は緑茶の味がしっかり感じられ、スープもやさしい味で、疲れた胃にはぴったり。こんなところで茶葉料理が食べられるなんて意外でした。
水果優格麺包餐(200元)
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水果優格麺包餐(フルーツヨーグルトセット)200元
フルーツヨーグルト、サラダにブルーベリーソース、パンがついたセット。ヨーグルトは大学で作られたものを使用。ほどよく甘くて、おいしい!ブルーベリーソースは、パンにつけてもよし、サラダにつけてもよし。サラダにブルーベリーソースってどうなんだろうと、ナビは思っていたのですが、予想に反してぴったりでした!美味!フルーツヨーグルトの中は、リンゴやトマト、オレンジなどいろいろな種類の果物がたっぷり。野菜と果物がメインのメニューなので、ダイエット中の方におすすめ。
軽食には洛神仙渣(ローゼルティー)が付きます。甘さ控えめでちょっぴり甘い、不思議な味わいの飲み物です。でも、身体によさそう!
右側から燕麥綠茶餅乾、義式香草餅乾、義式橘子餅乾、檸檬綠茶椰子球、巧克力餅乾
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紀州庵手工餅乾(紀州庵手作りクッキー)100元
3種類の自家製クッキーが選べます。手作りなので、同じものなのにまったく見た目が違ったりします。それもご愛嬌。クッキーはお持ち帰り用に販売もしています。(価格は同じ)取材時には燕麥綠茶餅乾(ハトムギ緑茶クッキー)、義式香草餅乾(ハーブビスコッティ)、義式橘子餅乾(オレンジビスコッティ)、檸檬綠茶椰子球(レモン緑茶ココナツクッキー)、巧克力餅乾(チョコレートクッキー)の5種類がありました。
テイクアウトもどうぞ
どれも手作りなのでやさしいお味です。ナビのおすすめは燕麥綠茶餅乾(ハトムギ緑茶クッキー)。緑茶の味がしっかり感じられ、しかもハトムギもたっぷりまぶしてあるので、健康的。お腹にたまるので、朝ごはんにしてもいいかも。
雙喜糕點(100元)。レトロなパッケージがキュート!
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雙喜糕點100元
紅豆餅、綠豆糕、咖哩酥、鹽梅糕の中から2種類が選べます。パッケージがレトロでかわいい!
昔はこういったお菓子は紙で包装されるのが一般的だったそう。意外ですが、若者にはこれがいちばん人気なんだとか。パッケージも特徴的ですが、中もユニーク。小さいコマのようなものがたくさん入っていて、なぜか木箱みたいにひとつひとつ中に穴があいているのです。円形や花びらの形をしたものはよく見ますが、こんな形は初めて見たのでびっくり。パッケージを裏切らず、とても懐かしいお味。お茶にとてもよく合います。鹽梅糕は、ナビは初挑戦。梅の味が濃厚なので、梅好きな方は好きだと思います。
食事と飲み物を頼みたい時は、こちらのセットがお得
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組合套餐(セットメニュー)軽食や季節料理は、追加料金で飲み物やデザートをセットに出来ます。50元プラスすると、100元以下のものから、100元プラスすると200元以下のものから選ぶことができます。
おしゃれな表紙にうっとり
書店スペース
1Fには、書店スペースもあります。
ここでは小規模出版社の文学作品を中心に本が置かれています。
台湾文学が中心ですが、今は村上春樹特集をしており、村上春樹の本がたくさん!
また、太宰治や三島由紀夫など、日本の文学作品も少し置いてありました。
村上春樹の作品が勢ぞろい!台湾での人気の高さがうかがえます
台湾の文学作品はあまり読んだことがないナビ。前から読みたいと思って何度か友人におすすめ作品を聞いたことがあるのですが、若者の間で台湾文学を読む習慣はあまりないようで、なかなかこれといったおすすめを聞くことができないでいました。
そこで、せっかくの機会なので店員さんにおすすめ台湾文学作品を聞いてみることに。
駱以軍の作品
店員さんが紹介してくれたのは、駱以軍の作品。
荒唐無稽な作風で、その詩のような文体が特徴なのだそう。
駱以軍の作品の中でも、一番のおすすめは、『棄的故事』。こちらは詩集となっています。駱以軍の言葉の世界をダイレクトに感じられる作品とのことで、ナビも今度時間があるときに読んでみたい!
「家變」は詳しい紹介文も壁に貼られています
紀州庵を舞台とした王文興の『家變』ももちろん置かれています。『家變』は台湾文学においてもっとも重要な作品のひとつ。一人の青年の成長過程における精神面での葛藤を描き、当時の家庭と社会の問題を浮き彫りにしています。
こちらに置かれている本はどれも装丁がとても美しく、内容がわからなくても手にとって見るだけで、楽しい時間が過ごせました。
セミナーや新書発表会も開かれています
壁の展示で紀州庵について理解を深めましょう
村上春樹セミナーも開催
1Fと2Fと3Fにはそれぞれセミナーや新書発表会を開けるイベントスペースが設けられています。
3階にある紀州庵講堂では、現在は書道やアニメーションなどの講座が開催されているほか、時期によってさまざまな講座が開かれているので興味が有る方は要チェック!
書店で行われている村上春樹特集にあわせて、村上春樹に関連するセミナーも10月18日まで開催されています。
2Fのベランダからは、修復中の別館を真上から眺めることも
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こちらは3Fのイベントスペース
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離れの修復は2014年に完成予定
修復中の離れ。完成後どんな施設になるのかでしょうか?
もともと紀州庵には、本館、別館、離れの3つの建物がありました。
しかし、1996年の火事で本館が焼失、さらに1998年には別館も火災でほぼ壊滅してしまい、現存するのは離れのみとなっています。その離れも水漏れによる老朽化が進んでいるため、現在は修復作業が行われています。
修復は来年に完成予定で、その後どんな施設になるのかはまだはっきりとは決まっていないそうですが、何らかの展覧スペースになる予定とのこと。今から完成が楽しみですね。
茶館でおいしいお茶と食事をいただきながら、ゆっくりと台湾文学を読む。なんてぜいたくな時間なのでしょう。
静かな時を過ごしたい方にはおすすめの場所です。
以上、台北ナビでした。