古道の中の隠れ家レストラン、「自分だけのとっておきにしたい」そんな場所、見つけました
こんにちは、台北ナビです。以前、陽明山に知る人ぞ知るレストラン「食養文化天地」というお店がありました。ナビは行ったことがなかったのですが、ある日、台北ナビ掲示板上に、ツウの方々が「移転したらしい」「新しいお店に行ってきた」と書き込みをしてくださったのです。これはナビも出掛けなくては!と思い、移転先である汐止へとタクシーを走らせました。
山の中
この「汐止」なんですが…これが遠かった。ナビも聞いたことはあってもまだ行ったことがない未知の地。「内湖」を通って行く、と耳に挟んだので内湖みたいな新興開発地なのかな~と思っていたら大間違い。ナビプラザを出発したタクシーからの景色は、みるみるうちに田舎っぽい感じになってゆき…そのうち、建物すらない山の中に!タクシーの運転手さんも「こんな所にレストランがあるの?なんでわざわざ…」とやれやれ顔。山道のクネクネ道を上がっていったら、いきなり、ある所で人の姿が現れました。そこが「食養山房」。お店の人が車両の出入りを管理しています。予約の名前を告げて確認が済んだら駐車場へ。今度は急な坂を下ると、車が並んだ駐車場がありました。ここまでの道のり25分。580元かかりました(運転手さん、飛ばしてくれたかな?)。結構な距離なので、タクシーで来店予定の方はホテルで呼んでもらうなど、安心なタクシーを選んだ方がいいでしょう。中国語OKな方はあらかじめ「叫車」しておくと割引きにもなるので、これほどの長距離には利用価値アリ。ちなみに、台湾でいちばん大きなタクシー会社は「台湾大車隊」です。ご参考まで…
タクシー内の様子。スタッフさんだ!やっと着いたー
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下車後も予約チェック
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60年以上の石造り建築物
水がキレイ!空気がオイシイ!
この日、マネージャーの韓さんがナビたちを案内してくださいました。駐車場の脇にはいきなり川が!橋を渡って進みます。台北市内とは全く景色が違います。遠い遠いと思っていましたが、25分でこれだけ景色が変わると思えば近いのかも…バナナの木など多くの木々が茂っています。その間から黒い建物が顔を覗かせました。敷き詰められた石段を登っていくと入口に。石造りの建物です。伺うと、60年以上になる古い住宅で、それを一部改装してレストランにしたそう。ヒノキのアロマオイルが焚かれ、この建物にピッタリな香りが漂っていました。すべての席が個室風になっていて、プライベート感たっぷり。1階右側の席は、山がすぐそばまで迫っている大迫力のパノラマ景色!左側の席は、まるで洞窟の中で食事をしているような感覚になるのでは…
次は2階を見てみましょう。外の階段を上がっていくとそこには滝が!まるで用意されたかのように建物と見事にマッチしているのですが、もともとあったそうです。2階部分は増築したもので木造。縁側には畳の座席、壁には書が掛かり、和紙を使った明かり、など…至る所で「和」を感じます。オーナーの林炳輝さんがすべてのデザインを手掛けました。よく日本にも行き、空間や料理の参考にしているそうです。
さて、もともとこちらのお店は「新店」にありました。約10年前のオープン。大きな公告などをしていないのにも関わらず、常連さんができ、その常連さんが友達を連れてくる、その人が常連となりまた友達を…という具合にみるみるうちに人気店へ。そこで陽明山へ移転することになりました。陽明山の環境もすばらしかったそうなのですが、あちらは標高788mで寒くなることも多く、それに比べてこちらは標高200m。食事を気持ちよくするのにより適している、ということで移転してきたのが2009年11月のことでした。こちらの2階建て「7号」以外に、「5号」があり、そのほかメインとなる建物も現在建築中。これだけの人気なので、予約は必須です。客席は全部で160席もあるのに、週末・祝日は約1ヵ月半前、平日でも10日前の予約が理想的だとか。こんな辺鄙な場所でも…やっぱりお客さんは離れないんですね。
トイレに行く途中にまるまるとしたネコを見かけました。おねむのようで近くを通ってもビクともしません。お店で飼っている小ミー(シャオミー)です。お店が「新店」にある時から一緒に付いてきてるんですって~。
次は「5号」の方へ行ってみることに。敷地内にはバナナの木だけでなくミカンやグアバの木までありました。今度は石の上を歩いて川を渡ります!レストランへ来たとは思えないですね…実はここは古道になっているんです。スタッフさんのオススメは食事前に少し古道を散策すること。たしかに、せっかく来たのなら、この自然を満喫しないで、帰るのはもったいない。おめかししたい気持ちを抑え、ナビは今度は運動靴で来よう、と決めたのでした。ここ「5号」でももちろん食事ができますが、そのほかアートイベントなどにも開放しています。
橘さん
ところで、驚いたことにこちらには日本人のスタッフさんがいます。橘雄介さんです。料理と空間の勉強のためこちらで働くようになって数年だそう。「ここは看板も出してない隠れ家であり、癒しの空間。水の音を聞きながら、自然を眺めながら、リラックスして食事をしてほしい。」とおっしゃっていました。場所柄もあり、今のところ2週間に1組程度しか日本人のお客さんは訪れていないといいます。しかも、台湾人のお友達と一緒にいらっしゃる方がほとんどだとか。でも、橘さんがいらっしゃればメニューのことでわからないことがある時など、気兼ねなく日本語で尋ねることもでき、旅行客の身でも安心して訪れることができそうです。
それでは「食養山房」オリジナル、台湾創作会席料理メニューをご紹介しましょう。コースは肉魚を使った一般食とベジタリアンフードの2種類。その日の仕入れによって、季節によって出てくる品々は異なります。それでは本日のメニューはこちら!
自家製絞りたてジュース パッションフルーツ入り
なんともカワイイ食前ジュース。イチゴのジュースでした。砂糖を入れていないと思われ、自然の甘みでいただきました。パッションフルーツが最後にキュと酸味で胃を刺激してくれます。
手作り前菜の三種盛り合わせ
左はもち米にウニ、その上にミョウガをのせたもの。ミョウガは台湾ではなかなか見かけません。真ん中はピーナッツ豆腐。ゴマ豆腐に近いです。モチモチプリプリでなんだか杏仁豆腐にも近いかな~と思ったナビ。いちばん右はシャッキリもやしが湯葉で巻かれたもの。甘味噌ソースがかかっていました。
焼き大正エビとアンチョビいなり
大正エビは身がギッシリ詰まっていました。いなりの中はもち米に龍眼を入れて炊きこんだもの、その上にアンチョビと酸っぱいソースがかかっています。ふっくら炊かれたカボチャと石花凍という、透明なゼリーみたいなのも添えられていました。彩りがキレイです。
季節の果物酢
今日はバラのお酢でした。ザクロの赤い実が入っていて見た目もCUTE!海鮮を食べた後にはピッタリのお酢なんですって。
普通の味噌汁だと思って食べたら…ビックリ。中には茶碗蒸しが!するめイカやホタテで海鮮のダシがたっぷり出ていました。キノコや野菜もいっぱい入っています。
今度は黒酢が…
またまた素敵な1品が運ばれてきました。生春巻きの上にはまぐろの切り身が、のり巻きの中にはコリコリのイカが山芋と一緒に入っていました。野菜はすべて色鮮やかで新鮮そのもの。白キクラゲと石蓮花ものっていました。石蓮花は南国ならではの食材です。ビタミン・ミネラルを多く含む、美白・血糖値降下・肝機能改善等に効果大。苦味の少ないみずみずしいアロエに似ています。美しくなるためにはぜひいただいて下さい。お刺身はしょうゆで、野菜類はマリネ風のタレにつけてどうぞ。
一瞬この中央にのっている大物がカラスミ!?と思ってしまったのですが、さすがに違いました。これはサツマイモを揚げたもの。甘くておいしかったです。その下に揚げ餅があり、餅の中にカラスミが入っていました!厚切りで味わい深いお味。お餅と甘いおしょうゆベースのとろみタレがベストマッチ。
大きなサラミでしょうゆ味の和風チャーハンが巻かれています。それと同じくらい大きなエリンギと一緒に。
目の前の池にも浮かんでいる蓮の花。それが乾燥したものをスープの中に落とします。…すると花が咲いたように、花びらが開きました!お花も食べられますが少し苦いそうなので、香りを楽しむだけでも十分。スープは、余分な味付けがなく、身体に良さそうなうす味。でも中にはレンコン、きのこ、蓮の実、蓮根、菱の実などがたっぷり。ダシの素の鶏肉もゴロゴロと入っていました。
テーブルの上を整理、その後蓮の花のお茶を入れてくれ、デザートが運ばれてきました。ナシとメロンとレンブ、それにアンが入ったお餅と桑の実のリキュールが添えられています。
デザートはタロイモをすり潰したもの。その上に龍眼と金箔までのっています。ね~っとりとしていました。
お腹いっぱい、シアワセいっぱい!になったナビですが、芋や餅が多かったので特に女性にはお腹にくるのかも。これはオーナーが台湾東部の宜蘭の出身だからなんですって。オーナーにお話を伺うことはできなかったのですが、チラッと姿を見かけたところ、坊主頭だったような…スタッフさんの半分はこの敷地内で寝泊りをし、朝9時に毎日皆でお経を唱えているといいます。…どうりで!ナビはお料理の中に質素な“仏”と、繊細な“和”の心を見た気がしたからです。1品1品が丁寧でいて上品。どのお皿にも生花がのってきていたのに気付きましたか?料理が目でも楽しめます。また、こちらのコースは全部食べ終わるまでに約3時間。時間を気にせずゆっくりと食事を楽しみたい時に訪れたいです。
*メニューはこのコースメニューのみ。ひとり1250元。ベジタリアンメニューも同額ですが、こちらは予約時に必ずベジタリアンの旨、お伝えくださいね。お子様メニューはないので、大人の方とシェアするか、その場合はチャーハンなど単品でのオーダーも可能だそう。
*お帰りの際タクシーが必要な方は先に申し出ましょう。時間を見計らってスタッフの方が連絡を取ってくれます。迎車賃はかかりません。
食を知り尽くした大人のためのプライベート空間。レストランというよりも、ここはまるで森の中にひっそりと佇む山荘のよう。喧騒から開放され、リラックスできたひとときでした。今度は、大切な人とここでゆっくり語らいながら食事したいな…
以上、台北ナビでした。