八卦窯餐庁(台中市)

八卦窯餐廰

閉店・移転、情報の修正などの報告

台中市郊外、大肚山の山腹に驚きの台湾料理レストラン。巨大な窯あとがそのまま使われています。


こんにちは、台北ナビです。

今回は史跡を改造してつくられたレストランとして、新聞や雑誌でも紹介されている八卦窯餐廰を訪ねてみました。ワイン蔵の中にあるようなオシャレなお店を想像していたナビには新鮮な驚きが待っていました!

60年前からのレンガ工場

台中工業区に入って大きな工場ばかり目につく中、こんなところにレストランがあるのでしょうか?車の窓からキョロキョロ見まわすナビ。すると…ありました!「八・卦・窯・餐・廰」とタテに書かれた赤い看板が。でも、小道を入ったナビ一行はやはりレストランが見つけられません。 どこかの工場の敷地に迷い込んでしまったかと思ったそのとき、ニコニコと迎えてくれたのは、窯の創業から3代目というオーナーの林坤榮さん、林坤明さんご兄弟でした。

実はレストランとして運営されているのは、奥にある建築用レンガを作っていた古い窯(かま)で、10数年前に現役を引退したもの。となりの巨大な近代式の窯が現役稼動中なので、工場でも間違いなかったのです。 この古い窯は台中駅舎や倉庫群などと並んで、台中市の古跡20のひとつに指定されていますが、数年前に林さんのお父さんが、「古跡だって人が来てくれなきゃ意味がない。」ということでレストランにすることになったのだとか。

八卦窯という名前の由来は、大肚山の頂上からながめた窯の形が、八卦(占いに使われる八角形の道具)を左右にぐーっと引き伸ばしたように見えることから来ているそうです。幅約10m、全長70数mの八卦なんて昔の人はスケールの大きい想像をしたんですね。
工業区もまだできてなかった頃、大肚山には豊かな丘陵とサトウキビ畑が広がり、その赤土を原料に、レンガを焼く窯から立ち上る煙…。なんてロマンにひたってしまいましたが、案内されたレストランの外観はかなりびっくり。長いカマボコ型のドームのようで、窯の上部全体に防水シートがかけられ、ゴムタイヤで固定も。

理由を聞くと、「掛けないと雑草が生えるし、木の根が外側の耐熱レンガの隙間から窯の中に伸びてきて、破壊が進んでしまうんだ。」との返事。一瞬、巨大な木の根に覆われたアンコールワットを想像してしまったナビは、文化財を守る大変さを痛感したのでした。

レストラン内部へは窯の側面にいくつもある入り口から。これは昔、レンガを運び込むために使われ、焼くときには全部ふさがれたとか。中はどんな雰囲気なのでしょうか。期待が高まります。

窯の中の不思議空間

すべてがレンガで造られた、高さ2m幅7m長さ70m以上という窯の内は、トンネルのよう。窯の構造を保護するために照明も最低限にとどめ、よけいな装飾も一切ありません。100人がけの円卓が奥の壁にそって、ずらっと一直線にならんでいます。数えてみるとなんと16卓も。入口側の壁にはまた、ずらっと大きな扇風機がならんでいました。

お客さんは近くの工業区からも多く、夜や週末には団体さんがバスでやってきたり。台湾新幹線のエンジニアの人たちや、日系企業のオーナーが社員を連れて会社の忘年会に利用したこともあるそうです。近くには東海大学、都会公園、国際街などの人気スポットもたくさんあるので、家族や友達グループがレジャーのついでに寄ることも多いそう。

ナビたちが行ったのは真夏の昼間だったのでちょっと暑く感じたのですが、窯の中は外より1,2度は低く、山手なので日が落ちる頃は涼しくなりそうです。暗くなってから来ると、かまくらの中から明かりがもれるような雰囲気になるのでは、と想像しました。

料理のご紹介

それでは、メニューを開いてみましょう。なんと150近い品数、台湾料理と四川料理が主だそうです。

これだけ品数やテーブルがあると大変では?と聞くと、「うちはシェフが3人、若いけど大きな宴会を何度も経験してる人たちだから、1人でフルコース6テーブルは軽く平気だよ。」と、坤榮さん(お兄さん)は笑って答えてくれました。メニューの赤文字の料理は量が多めなので、人数が多いときに向いています。 サイズでいえば、7人以上のときは「大」を注文するといいそうです。
八卦油雞(ゆでトリ肉の香味油がけ)


“閹雞”(去勢ドリ)のふともも肉をつかっているそうで、大きいのにやわらかくてびっくり。ゆでたてをすぐ氷水にくぐらせると、きゅっと肉がひきしまるとか。味付けは香味油だけなのですが、とり肉本来の味がでて、さっぱりとしていてとてもおいしかったです。
心知肚明(ブタの心臓と胃袋のスープ)  


ブタの心臓をブタの胃袋に10種類の漢方食材と一緒に詰め、3時間半かけてじっくりと煮込んだ料理。写真は撮影用に丸ごと見せてくれたもの、テーブルに出されるときは食べやすくこまかく切ってあるのでご安心を。思ったほど漢方臭さがなく、飲みやすいスープでした。林さんによると、「とっても“補”(滋養強壮によい)なんだよー」。 男性にも女性にもよいそうです(2日前から予約が必要とのこと)。
柔腸寸断(モツの揚げ炒め)


蒸したモツを細かく切り、揚げた後、さらに炒めるという手の込んだ料理。よーくかんでいるとモツの味がしました。とってもスタミナがつきそうな料理。
鉄板牛柳
(細切り牛肉の黒コショウ炒め)

すべて脂身のない赤身肉を使っていて、どちらかといえばあっさりした味つけ。柔らかいお肉は白いごはんとよく合います。
宮保皮蛋(揚げピータンのトウガラシ炒め)


説明されなければこれがピータンだとは思えない口あたり。とろみ醤油かけの食べ方しか知らなかったナビもこの新しい食感に、何度もおハシがのびてしまいました。酒のさかなに注文する人も多いそうです。
蒜香地瓜葉
(ゆでサツマイモの葉のにんにく香味醤油かけ)


温室で栽培された特に柔らかい葉を使っているそうです。サツマイモの葉がお通じを良くするのは台湾ではよく知られているので、女性にはぜひおすすめの1品。






※ドリンクは500ミリボトルか缶入りの緑茶、ウーロン茶、ジュース(オレンジ、グヮバ)。 アルコールはコーリャン酒、ウィスキー、ワイン、ビール(台湾ビール、金牌ビール)。

料理も人間も名前に凝る

メニューの中にいくつか面白いネーミングの料理をみつけました。たとえば中国のことわざからつけられた「心知肚明」というスープは、林さんのお父さんの結婚式にも出された料理だそうです。そのココロは、「僕の気持ち、君の胸には分かってるだろう?」「あなたの心は言わなくても私はよーく知ってるわ」といった具合。また「柔腸寸断」という料理は、なんとシェフが失恋したときに考案した料理で、切り刻まれて油で揚げられたような心情をあらわして名づけた名前だそうです。

また、オーナーの林さん兄弟のお名前にも由来がありました。中国の古書「易経(えききょう)」に“乾坤(けんこん)”という言葉があって、“天・地”などの意味だそうです。だから林坤榮さんという名前には、「木があって、土があって、火があるでしょ?」林坤明さんの名前にもおなじく、「木があって、土があって、日と月で昼夜という意味ね」。うーん、なっとく。この窯に心血をそそいだお祖父さんの命名だそうです。

ルーツと窯に誇りをもっと

「お祖父ちゃんの時代には、できたレンガを“鉄牛”とよばれる改造オート三輪につんでね、あちこちの工事現場に運んでいったんだよ。」「50年前にできた東海大学の赤レンガの校舎群も、うちのレンガを使ってるんだ。」「昔はこのあたりに3軒レンガ焼き工場があったんだけど、今もやってるのはうちだけだよ。」お二人の話を聞きながら、窯の中でいただく料理は格別。

ここにくるお客さんたちもきっと、いろいろな時代を通ってきた台湾の昔に思いをはせながら、お酒を飲んだり、料理を食べたりするんでしょうね。人を懐かしい気分にさせる、不思議な古窯レストランです。

祖父から父、そして孫へ、3代に渡って引き継がれた家業に誇りをもって、しっかりと窯を守っている

ご兄弟をなんだか応援したくなったナビでした。

以上、台北ナビ IN台中でした。

記事更新日:2009-08-27

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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

スポット登録日:2007-08-29

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