手作り点心がおいしい、眺望のよさと情緒あふれる九份の街中にある個性的でゆったりくつろげる茶芸館。
こんにちは、台北ナビです。今では日本人観光客にもすっかりおなじみの「九份」。その眺望のよさと情緒あふれる街並みで多くの観光客を引き寄せています。昔は炭鉱で栄えていたこの町ですが、今ではお土産や茶芸館が立ち並ぶ観光スポットとなっています。今日はそんな街の中にあるとっておきの茶芸館をご紹介しましょう。
ノスタルジックな雰囲気
「阿妹茶酒館」はメインストリートに面しています。メインストリートといっても、山の斜面にへばりついた長い階段がこの通り。ガイドブックなどでもここの写真をよく見かけるはずです。なぜかと言えば、この通り一帯は世界的に評価を受けた台湾映画「悲情城市」の舞台になったところです。その映画が評判になって、お店ももう18年。階段の両側にはレトロな雰囲気の茶芸館やレストランが軒を連ね、店の看板をせりだしています。階段の中腹あたりには昔の映画館の跡や日本時代の民家を利用した商店などもあり、どこか懐かしい風情が漂っています。
レトロなインテリアの店内
入り口の脇にはチャイナ服を着た老夫婦のセピア色の写真が飾られています。これはオーナー許乃予(阿妹)さんのお爺さんとお婆さんの写真なのです。お店のパンフレットにも書いていますが、昔ここら辺一帯は、炭坑に携わる人たちのための「花街」だったのですが、お爺ちゃんはなかなかイイ男だったためモテモテ、毎晩夜遊びに出かけ、お婆ちゃんは包丁を持ってしょっちゅう連れ戻しに行ったそうです。そして、階段を上っていきますと、左側が茶芸館、中2階のような右側がレストランとなっています。右側のレストランは洋風の建物で、料理の他に簡単な飲み物、お酒なども用意されています。左手の茶芸館は竹のテーブルやイスを用いたインテリアで、ところどころに日本統治時代に使われていた生活用具の骨董品が置かれています。
店名の由来
皆さんは、不思議に思ったことありませんか?「阿妹」ってあの台湾で有名な歌手の人と関係あるのって?実際この店内で、昔駆け出しのころの「阿妹」は、MTVを撮ったことがあるそうです。彼女のファーストMTVでした。
が、お店の名前の「阿妹」は、現オーナー許乃予(阿妹)さんの小名。小名というのは、家族の人たちが、子供が幼い頃に呼んでいた愛称のこと。なぜ「阿妹」になったかというと、許さんは3女、男が重宝される中華社会(未だにその傾向はまだありますが)で、男の子の誕生を願った母親が占い師に占ってもらうと、3女の名を「阿妹」と呼べば次は男の子が生まれるよ、と言われたそうな。それが名前の由来です。そして、めでたく長男誕生。
実はオーナーの阿妹さんは、台湾を代表するダンスグループ「雲門舞集」の元ダンサー。お父さん中心にやっていたこのお店を少しずつ手伝い始めてからは、ダンスの先生に転向したそうで、今でも時間があれば、教えることは続けているそうです。
宮崎駿さんとのご縁
阿妹さんは、このお店のインテリアデザインをしたのは誰ですか?とよく聞かれるそうです。デザインをしたのは、阿妹さん本人で、窓が多かった工場をうまく利用してこのような造りにしたそうです。この窓の多さと階段の多さが、「阿妹」茶芸館の特徴の一つでもあります。台風のときは大変なのよといいますが、夏はほとんど冷房要らず、そして、ナビが行ったときは1月の寒い日でしたが、こうやって窓を全開にしていてもなぜか寒くないんです。竹や木が多いので、風通しをよくしたということですが、室内にいながら外の風にいつも触れていられるのっていいですよね。
そして、宮崎駿さんの「千と千尋の神隠し」のモデルになったという赤ちょうちんのある例の階段、千尋が湯屋に入る時に通るあの橋の手前の階段です。でも、映画の中のモデルは階段だけではないんです。たとえば、車が山に迷って入っていくところは、九份のお墓がある山だそうです。お父さんお母さんがつまみ食いをする屋台の様子は、九份の基山街にひしめあって並んでいる店に似ていませんか?そして、顔なしの人の顔は、お店の中のお面にそっくりなのがありました。顔なしが砂金を吐き出すところも九份=金鉱の町だったから?階段が多い湯屋の中の様子は、「阿妹」店内のあっちこっちにある階段のようでもあります。ナビには、千尋が橋を渡る直前に見た妖怪たちが船から降りてくるその風景、その船が香港やベトナムのクルーズみたいにも見えました。
阿妹さんのお話しによると、宮崎駿氏は、インスピレーションを求めて台湾の南部から北部への旅をされたそうです。そして、台湾の旅も終りに近づいたころ、この店に入ってきました。14時~16時の間、景色を見る方向ではなく、店内が見える方向に向いて座り、ほとんどスケッチをしてこの時間を過ごしていたそうですが、一番上の階にも行ったりして、店内を見て回られたそうです。
宮崎駿さんは奥から2つ目のテーブルのここに座られていました。阿妹さんにちょっと座ってもらいました。
おすすめの烏龍茶は凍頂!
茶芸館のお茶メニューを見ますと、台湾各地で採れた様々なお茶がそろっています。種類は豊富ですが、店のおすすめは「梨山烏龍茶(1000元)」と「凍頂烏龍茶(600元)」だそうです。茶湯代は一人100元で、冷たいお茶もあります。お茶請けも種類が多く、どれも手造りの美味しさです。お茶の入れ方がわからない場合は、お店の人に聞いてみましょう。丁寧に教えてくれますよ。
お茶は、お店の方が最初は模範で入れてくださいます。お茶の台は「青斗石」といって、台湾では廟の建材としても用いられています。重いですよと言われたので、興味本位で動かそうとしたナビですが、ビクともしませんでした。
入れてもらったお茶は、凍頂烏龍茶ですが、深みがあってしみじみと味わえる味でした。たぶんこの雰囲気も一役買っているのかもしれません。
お茶菓子
いくつかお茶菓子を紹介しますが、ここのお茶菓子はすべて手作り、心のこもった家庭的な味がどのお菓子にもあふれています。
雪花糕(80元)
ココナッツミルクの味が甘すぎず、さわやかでフワフワの食感。一個では食べ足りなくて、続けざまにもう一個食べてしまいました。
茶餅(80元)ジャスミン茶が中に入っているお茶の揚げお菓子、お茶の味もしっかりといい香りがし、あったかいお茶菓子もいいものです
芋頭餅(80元)タロ芋で作ったものですが、ほんのりとかすかにイモの味がして、これも何個も続けざまに食べてしまえるお菓子です
緑豆糕(80元)うぐいす豆をすりつぶして作ったお菓子なのですが、とても上品な仕上がりになっていて、宮廷菓子より上をいってます
滷味拚盤(120元)
ナビとしては、ぜひ観光客の方に試してほしい品。十分煮込まれた卵と豆干、昆布の盛り合わせです。屋台では勇気がなくて注文できないという方、トライしてみたかったという方も含め、茶芸館で滷味拚盤が食せるところなんてめったにないし、しかもここのは本当においしいんです!
茶梅(80元)キンモクセイ茶梅といわれるだけあって、キンモクセイがまぶされていておいしい。どのお茶にもピッタリのお茶請けといえます
他にも、枝豆(80元)、スイカの種&ビスタチオ&落花生(80元)、杏仁豆腐(80元)、ジャスミンゼリー(80元)、芝麻団子(80元)など。
お酒も楽しめる
レストランの方では、お酒も飲めます。そういえば、看板には「茶酒館」と書いてありましたよね。おすすめは「桂花茶酒(230元)」。キンモクセイの香りがほのかにするこのお酒は、自分たちで醸造したそうです。甘口ですが、とても口当たりのよいお酒でした。その他、カクテルも160元からあります。
優雅なひとときを
丘の上に立つこのお店から外を眺めていますと、なんだか空が近くに感じられます。眼下には基隆の海が広がり、付近一帯の丘陵も180度見渡せます。ガラスのない窓からは思う存分にこの景色が楽しめます。おすすめの時間帯は夕方から夜にかけて。近くの山に沈む太陽を見送ると、海に浮かぶ船のライトがポツポツとつき始めます。ゆっくりとお茶を飲みながらこんな光景を楽しめるなんて、贅沢なひととき。まさに「癒しの茶芸館」と言えるでしょう。
顔なしの人に似ていませんか?
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茶芸館から階下に行く階段もありました
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台北ナビがおとどけしました