歴史と文化のリノベーション。新感覚の複合空間を体感してきました!
こんにちは、台北ナビです。
台北という都市は、常に進化を遂げているなぁと感じます。ここ数年は特に、古き良き台湾を残しつつ、新しい命を吹き込む活動「文創」が注目を集めています。
最近訪れたお店「行冊walking book」も、台湾式の古い建物「透天厝」をリノベーションし、歴史と文化を現代の感覚で蘇らせた空間となっていました。1階の「リビングルーム」はリラックスしながら、台湾国内で自家焙煎したコーヒーや台湾銘茶に癒されながらくつろげるスペースです。2階「ダイニングルーム」ではお店オリジナルの「メディタレニアン料理」を楽しめます。まるで屋根裏部屋のような3階「リーディングルーム」では、本を片手に静かに自分と向き合える空間になっていました。階層毎に違った演出の複合空間「行冊walking book」の全貌をご紹介します!
皆さんは「蒋渭水」という歴史上の人物をご存知ですか?実はナビ、今回初めて触れた方なのですが「行冊walkingbook」を知るにはこの人物抜きでは語れません。
医師であった蒋渭水は1916年(大正5年)、門構えが3つ連なった建物を利用し「大安医院」という診療所を開業しました。それが現在の延平北路二段31号「義美食品」、33号「行冊walkingbook」、35号「廣隆進ビンロウ屋」に当たります。現在の建物は築40年の4階建てで、奥行きのある「透天厝」。大安医院の跡地に建つ本棟は、日本統治時代に『台湾民報』を発行した活動拠点としても知られています。
蒋渭水は、医師の顔以外にも台湾の社会運動家の一面も持ち、民主化運動の基礎を作ったり、台湾文化協会の設立、台湾民報総批発処の成立などを行った人物で「台湾新文化運動の父」と称されています。これを機に、時間を見つけてお店の近くにある「蒋渭水記念公園」で蒋渭水氏の知識を深めてこようと思います!
蒋渭水は台湾を患者に見立て、知識不良の病の治療を呼びかけ、文化の普及啓発に努めたのだそうです。
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2015年10月にオープンした「行冊walking book」は、2016年度の古民家再生アワードで銀賞を受賞しています。
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入店したらまず、床全体に注目してみて下さい。長さが異なる「柳安木」という木材を1本1本組み立てて仕上げたフローリングとブロックたち、その数なんと35,000本!さすがの施工業者さんも、これには弱音を吐いていたそうです(笑)。
また、入口から奥へと続く、色深く凹んだ一本のラインは「淡水河」を表しています。河の左側にあるブロックが「陽明山」右側は「観音山」となっていて、台北から蒋渭水の故郷、宜蘭に向かう地形をもとに、等高線を用いて作られています。
天井のライトは蒋渭水の死と関係が!蒋渭水の死後3日目にあたる1931年(昭和6年)8月8日、生前親交があった友人たちによって「故・蒋渭水氏の台湾大衆葬葬儀」が行われ、5,000を超える人々が大衆葬に参列したと言われています。天井は「へびつかい座」を始めとする夏の星座をなぞってライトが配されており、蒋渭水の大衆葬が行われた8月の夜空を再現しています。90年近く昔、このライトのように並んだ星たちに照らされながら行列を作った大衆葬の参列者へ思いを馳せると、自然と静かな気持ちにさせられるナビでした。
2階の天井は1階の等高線をそのまま反映したデザインとなっており、同じコンセプトで繋がっています。ぜひ注目してみて下さいね。また「行冊walking book」の魅力のひとつと言えるのがオリジナルの「メディタレニアン料理」です。メディタレニアン料理とは地中海料理をベースに野菜や果物、シーフード、雑穀類、ナッツ類、オリーブオイルなどをふんだんに用いた美容と健康を考えたヘルシーフードで、低カロリー且つ食物繊維も豊富なので、生活習慣病予防やアンチエイジングにも効果的だそうです。
ナビが衝撃を受けた3階のリーディングルームはまるで秘密基地のような空間で、大人になってもこういう場所を求めてしまう人間心理をうまく突いてくるなぁ~と感じました。このリーディングルームは特にオーナーの思い入れが強く、もともとあるスペースに、木製のコンテナを折り曲げたような四角い箱をスポンとハメ込んだ面白い設計になっています。立つ、座る、横たわる、寝そべる、隠れる(笑)など、自分の心が心地よい姿勢で読書に没頭できる空間となっていています。
~リーディングルーム~
・開放時間:12:00~20:00
・使用料金:1時間80元/1日320元
※3階では水以外の飲食は禁止されています。またリーディングルームを利用した場合、1階のカフェおよび2階のレストランにて20%のディスカウントが可能です。
ナビは耳にするのも、口にするのも初めての「メディタレニアン料理」。しかしこの料理は栄養学が勧める最良の食事法として世界的に注目されており、2013年にはスペイン、ギリシャ、イタリア、モロッコの地中海式食生活が「ユネスコ世界無形文化遺産」に登録されているのだそうです!とっても勉強になりました。
地中海を囲む地域と国々によって生まれた伝統あるこのフードスタイルは、野菜とフルーツ、オリーブオイルをふんだんに使い、赤ワインと合わせるのが定番で、栄養バランスのとれたその組み合わせは、心血管疾患を予防し、脳梗塞やアルツハイマーといった疾病のリスクを減少してくれるのだそうです。ということで、「行冊walkingbook」でも料理に合わせたワインを提案してくれます。
<蓮藕與瑞可塔起司襯芝麻葉260元>レンコンの輪切り、ルッコラ、リコッタチーズ、クルミにはちみつがかかった、とにかくシンプルな一皿です。レンコンをこんな風にして食べたことがなかったナビは若干の不安を残しつつ、全ての食材を一緒に口に入れると・・・「何ということでしょう!」臭みのないレンコンにチーズとはちみつがよく合う!ルッコラの風味も爽やかで、ベストマッチ!!こんな食べ方があったとは~!
レンコンの産地としても有名な台湾なので、台湾産かな?と思って尋ねたところ、もともとは台湾産で試作していたそうですが、形が均一でないため、泣く泣く輸入品に変更した経緯があったようです。サラダ感覚だけれど、お腹が満たされるヘルシーな一品。こちらにはシャンパンを合わせるのがオススメとのことです♪
<法式櫻桃鴨胸佐波特酒無花果醬汁(大)1580元/(小)880元>
宜蘭のブランド鴨肉「櫻桃鴨」に生いちじく、自家製のドライトマト&パイナップル、クルミがトッピングされています。ジューシーな鴨肉とトッピング、そして白い謎の物体を一緒に頂きます。口の中に甘みが広がる感じ・・・これは旨すぎる~~!!気になる白い物体の正体は、台湾の老街などでたまに見かける、サクサクとした飴!フランスではこういった料理にはバルサミコ酢を使うことが多いそうですが、こちらでは甘みの部分は飴で代用されていました。この料理には断然赤ワインがオススメだそうです。お肉を口にした後にポルトガル産赤ワインを流し込むと、鴨肉特有の風味が更に口全体に広がるということを教えて頂きました。これ、騙されたと思ってぜひ試して見て下さいね!今回ナビがオーダーしたのはサイズ「小」です。注文する時の参考にしてみて下さい。
オーナーの独特な世界観に引き込まれます
オーナーTingさんをひと言で表すなら「クール」。クールな瞳の奥にある温かさがとっても魅力的な女性でした。
今回お店を訪れるにあたり、このように独創的な発想をもったオーナーに会えるのを楽しみにしていたナビ。男性を想像してお店に向かったところ迎えてくれたのは、目力の強い女性!いい意味で期待を裏切られた感じでした。話し方は女性にしてはぶっきらぼう(笑)で、一見とっつきにくい印象のオーナーTingさんですが、ナビは彼女が放つオーラに終始釘付けでした。
台湾のテレビ局、三立テレビで働いていたTingさんは2人のお嬢さんの出産を機に、カメラマンの旦那様と一緒にこの古民家再生プロジェクトに乗り出したのだそうです。「朽ち果ていく古いものに、新しい命を吹き込み、受け継いでいく」ことがTingさん率いる「行冊walkingbookグループ」が目指していること。このお店はまだそのスタート地点に過ぎません。次のステップの構造は既に出来ていると話すTingさん。この先どんなものを披露してくれるのか、とっても楽しみです。
以上、「行冊walkingbookグループ」の今後の活躍に目が離せないナビがお届けしました!