インテリアデザイナーのオーナーが奏でる茶空間で、自然派スイーツとおいしいお茶で心地よいひと時を過ごしませんか?
こんにちは。台北ナビです。
ナビは最近ふらりと永康街にいってみたところ、茶芸館が随分増えているな、と感じました。いままで普通に通学路として通っていた巷に、とても雰囲気のあるお店が突然現れているではありませんか。本日は、その中の一つ、ナビのとっておきの「串門子茶館」をご紹介します。
ますますアツイ茶芸館旋風@永康街
ナビが初めてこのお店を発見した時は、とっても素敵な外からの様子に惹かれ、まずは何という店名だろうと看板を見ると、「串門子茶館」と書かれていました。ひとつひとつのも文字の意味はわかりますが、この3つの組み合わせの意味がわかりませんでした。一体どういう意味なのか、お店の人に直接きいてみましょう。
ガラスを通して見える、豊富な商品と、感じの良い店構えと、それにこの店名から、今日の取材はいつにも増してワクワクします。
錆がいい味だしてる住所プレート
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エントランスも自然派
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中は直線てきでスッキリ
永康街一帯の路地には、築30年以上の古い住宅が多く、最近では一階部分をオシャレにリモデルし、お店にするところが増えています。ここ串門子茶館もその一つです。外壁がモザイク状の控えめで品のある老アパートの1階を、元からそこに生えている樹木ごと利用して、エントランスが作られています。鉄錆のついた店名、看板と住所がとってもオシャレ。
オーナーはインテリアデザイナー
オーナーの沈僥宜さんが、笑顔で迎えてくださいました。
沈さんは、本来の職業はインテリアデザイナーで、現代と伝統を両方生かしたデザインで定評のある方なのです。本格的なインテリアデザイナーが、自分のために手がけた茶芸館で美味しいお茶を楽しめます。
さて、前述の疑問、串門子の意味ですが、台湾語で「ドアを突き抜けて行き来する」、すなわち近所の人が他の人の家に集って一緒に座り、お茶を飲んだりご飯を食べたりする伝統的な人情味溢れる近所付き合いのことをいうんだそうです。こんなに素敵な空間で、台湾人の仲良しご近所に混ぜてもらって串門子、なんていう気分を味わえそう。気軽に寄って、くつろいで行って欲しいという願いを込めて名付けられたこの串門子茶館は、2013年にオープン。人情味溢れるホスピタリティを感じさせるオーナーの沈さんご夫妻が、自らのためにプロデュースした茶藝館、まずは店内を拝見しましょう。
エントランスを入ると、まずは商品をディスプレイしてある売り場が用意されています。銀瓶やお香立て、茶壺や線香立てなど、落ち着いた雰囲気のオシャレな小物たちでいっぱいです。壁一面に、茶壺(急須)がディスプレイされています。数が多い割には、圧迫感なく、奥まで見えるこのディスプレイは、オーナーがインテリアデザイナーだからできるアイディアかと思われます。アクリル板でつくられた棚は、入り口から見ても一番奥の棚のものまで見通すことができます。 以前は、入口入ってすぐも喫茶スペースだったそうですが、今はメイドイン台湾のデザイン性溢れる小物が多く並べられています。
密閉性にすぐれていて、蓋はユックリしまります
中央のアイランド式平置きディスプレイは、商品がとても見やすいので、気に入ったものがあると思わず手にとって見たくなります。錫の茶入れや茶匙などは、日本の茶道にも応用できそうです。茶道経験者にはたまらない魅力があるのではと思いました。台湾旅行の際に手に入れたお道具をつかって、旅行を懐かしむお茶会なんて開けたら、これぞ一期一会に違いありません。オツですね~。
台湾人がプライドを持ってプロデュースする、メイドイン台湾の錫の茶入れは非常に密閉性が高く、蓋を乗せると空気圧でゆっくりと閉まります。しかも、南国らしく色がポップで日本ではなかなか見つけることができないデザインです。メイドイン台湾らしい一品をもう一つご紹介すると、月餅をモチーフにした5つワンセットの陶器の茶杯がイチオシです。リアルにつくられた月餅の形から、一見何の用途かわかりませんでしたが、ひっくり返すと茶杯に早変わり。すごい発想にナビ仰天。
月餅がた小茶杯、超カワイイ!
いい香り!茶葉の入った布製粽。200元
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ちょっと変わった香立て
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また、非常に可愛いものがぶら下がっています。お茶がらを乾燥させてちまきの形の布サックに詰めたものだそうです。ちゃんと麻紐で胴体が縛ってあり、色形もとってもかわいく、お茶の香りがほんのりとして楽しくなります。
また、ちまきを作るときの竹の葉に茶葉を包んで香り付けした球形烏龍茶もあります。竹の葉のいい香りが茶葉の香りを引き立てます。
竹の皮に包まれた茶葉
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こんな風にぶら下げられてカワイイです
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各種ティーポットもとてもセンスがよろしく、使いやすそう。持ち方などがわからなければ、気軽にきいてみるといいとおもいます。
究極の侘び寂び、半畳の茶室
飲食のセクションを拝見しようとしたら、沈さんに呼び止められ、まずは地下室を見るようにと勧められました。なんと、地下室まであるとは!どんなお宝が眠っているのでしょうか?期待に胸を躍らせながら、地下に。 と、その前に、地下へ降りる階段の上に、畳半畳のガラス張りスペースがあることに気づきました。
中には、お抹茶碗と茶筅が置いてあり、究極の半畳一間の侘び寂びの世界が展開されているではありませんか。勧められるままに、躙り口にも似た高さの低い入り口からなんとか体を滑り込ませ、憧れの空間で茶筅を振る真似をしてみました。
階下に広がる幻想空間
沈さんに導かれるままに靴をぬいて、階下へ。ショップ内は外から靴を履いたまま入店しますが、階下は土足厳禁。いったいどんなところなのでしょう?階段を降りてみてびっくり。かなり広々とした地下空間が広がり、床には湾曲した溝がプラスチック板を上手に使って作りつけてあるではありませんか。これはもしや、曲水流觴(きょくすいりゅうしょう)では!
幻想的な水の流れ
こんな風に、流れの上でお茶を淹れます
「曲水流觴」とは、中国古代には、旧暦の3月3日に、旧年の汚れを洗い落とし、春の訪れに備えるため、川で体や衣類を洗い清めるという習慣があったそうで、その節気に乗じて、貴族たちが小川の流れに沿って酒や食べ物を小さな小舟に乗せげ上流から流し、流れに沿って座っている人々は、それを食べたり飲んだりして楽しんだという遊びのことで、その模様が様々な詩や絵に残されています。
流れに沿って座席が設けられます
ナビも以前、中国大陸で曲水流觴(きょくすいりゅうしょう)のイベントに出たことがあるのですがいずれも戸外で、大きな場所も大量の水も必要なので、なかなか個人的にこれを再現するのは難しいと思っていましたが、さすがはインテリアデザイナー、室内にこれを個人でこしらえてしまうなんてすごいです。しかも本当に水を流せるのですから、本格的です。
串門子のお茶と食べ物
この日は、お2人の台湾人のお客様が、お茶を淹れながら飲んでいました。喫茶スペースは、直線を使ってすっきりと整っており先ほどの畳半畳分の抹茶スペースを通して外の光が入ってきて、実にいい感じを醸し出しています。お天気が悪ければ、雨宿り気分で、お天気が良ければ外の光線を間接的に感じながら、とても贅沢なひと時が過ごせそうです。
直線てきでスッキリした飲茶スペース
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丸テーブルもステキです
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蕪心という名のお菓子 100元
串門子のオーナー夫人は、体に良い天然食材のお菓子の研究に大変熱心で、お店で出されているお茶菓子はすべて、ご自分で吟味を重ね、研究し、お茶に合うものを出しているそうです。
写真をごらんください。ナビとカメラマン、出てきたときに思わず歓声をあげてしまいました。見た目も上品で、色使いもとってもかわいくて、食べるのがもったいなくかんじてしまうほどかわいいです。白いんげんをベースに、ドラゴンフルーツでピンクに色づけした中に、新鮮なぶどうが一粒入っています。コロンとかわいいピンクの粒です。
金桔緑豆糕 100元
黄色の粒は金桔緑豆糕。一口いただくと、口当たりは芋羊羹の上品バージョンようで、もっと淡くてはかない口どけです。柚子を連想しますが、台湾の金柑を使用していて、目からウロコの台湾食材利用です。
輸入すれば色々なものが手に入る世の中ですが、あえてそれをせず、その土地土地で採れる作物を利用して工夫を加えて提供するという串門子流のおもてなし、台湾好きなナビの心に響きます。
四角のカスタードケーキ 100元
一口サイズのミルクプリン。意外にしっかりとした噛み応えがあります。甘すぎず、ホッと一息な口どけ。主張が過ぎないところが、お茶を主役としてひきたてます。お茶をたくさんのんでも、こんなに屋沙強いお菓子があれば、胃袋を守ってもらえそうです。
オーナーご夫妻の心意気
親切なオーナーご夫妻
オーナーご夫妻としばらく他愛ない世間話などをしながら、美味しいお茶菓子とお茶をいただく至福のひと時。日本人のことを、「真面目で勤勉、一つのことを一生懸命な姿勢でやり遂げ、そして常に礼儀正しい」と非常に評価してくださっていました。そんな風に褒められて穴があったら入りたいほどだったのですが、そのように外国で評価してもらえるような優秀さ謙虚さをしめした先人の方々に感謝しつつ、自分もしっかりしなきゃと手綱の尾を締めたくなりました。
茶芸館ブームの再来
ナビは台湾に来たばかりの頃、台湾のお茶が美味しくて好きになり、自分で買ったり茶芸館にいってみたりしたのですが、茶芸館は途中少なくなる一方でした。パン屋さんや洋菓子店、コーヒーショップが増えていく中、昔懐かしい茶芸館はひっそりと店じまいしていき、寂しい気持ちがしたものですが、最近の茶と茶文化の復活再生の流れにより、いろいろなところに新しい茶芸館ができ、以前とはことなったコンセプトでそれぞれの個性を醸し出しています。この串門子茶館もその一つ。路地を入った静かな場所に、付近の風景と溶け込みながらも異彩を放つこの空間は、きっと日本人の皆さんも気に入ってくれると思います。
永康街の一番賑やかな部分からはすこし離れていますが、しっとりとした古き良き台湾の住宅街の一角で、いっぱいのお茶と爽やかなお茶菓子を楽しんでみませんか?
以上、台北ナビでした。