映画の世界へようこそ!日台3部作の世界に浸れる特別なカフェがここにあります
こんにちは、台北ナビです。
近頃はカフェブームで、あちこちにオシャレなカフェがオープンするのを見かける台北ですが、今日はそんな中でも特に映画ファンにおすすめの一軒「特有種商行」をご紹介します。「海角七號」、「セデック・バレ」など魏德聖監督の作品が好きな方、日本でも公開中の映画「KANO」をご覧になった方は必見です!その名の通り非常に特色あるこのお店、まずは開店のいきさつから伺って行きましょう。
デザイン会社だけあって、お店の名刺やフライヤーもおしゃれで豊富
カフェを経営する「特有種商行」は、映画「セデック・バレ」の撮影後に発足し、視覚デザインやプロダクトデザインを手がけている会社です。もともと台湾にはコレクションしておけるような品質のいい映画関連グッズを作る習慣がなかったので、「セデック・バレ」の魏德聖監督や美術スタッフが相談し、自分たちでデザイン会社を作ったのだとか。この日案内してくれた販売部リーダーの黃詩婷さんも、「セデック・バレ」製作チームの一員だったそうです。
カフェは2014年12月にオープン
お店に入ってすぐのところに映画関連グッズ売り場があります
発足当初は「セデック・バレ」を中心としたオリジナルグッズを主にネットで販売していた特有種商行がカフェをオープンしたのは、2014年12月。特有種のグッズを販売する場所としてはもちろん、映画ファンが楽しんでくつろげるスペースを作りたいという思いからカフェスペースが設けられました。MRTの「忠孝新生」駅から徒歩5分の非常にアクセスしやすい場所にあります。
またこのカフェは、映画で使った大量の大道具や小道具を、映画ファンに喜んでもらえる形で再利用する場所でもあります。店内のテーブルや照明などは、すべて実際の撮影で使用されたものなんです。魏監督率いる果子電影の手がけてきた映画は、日本統治時代を描いたものが多いので、映画のセットや道具も当時を再現するために作ったり、買い集められたレトロで特徴的なものばかり。これらを再利用すれば一つのクラシックな空間ができあがり、映画ファンはもちろん、映画に興味のない人でもまた来たくなるようなお店になると考えたそうです。
日台3部作を見てから来るのがおすすめ!
3作品が獲得した金馬獎のトロフィーも飾られています
コンセプトの通り、ただのカフェだと思って入ったとしても十分にくつろげる空間ですし、昭和レトロな雰囲気が好きな方はきっと好きになるカフェだとは思いますが、やはり魏監督の日台3部作と呼ばれる「海角七號 君想う、国境の南」「セデック・バレ」「KANO」はこのカフェを訪れる前に鑑賞必須の作品だと言えそうです。何しろ店内はこの3本の映画で使われた道具で溢れているんですから!「KANO」を観た方は、入口に無造作に置いてある自転車を見ただけで興奮してしまうはず。そうです、劇中エースのアキラ(吳明捷)が乗っていたあの自転車が迎えてくれるんです!
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(c)果子電影
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映画の中でも印象的な自転車がお出迎え |
上映当時劇場で配られていたフライヤーも、新聞をモチーフにしたレトロな風合いに
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店内の新聞は1930年当時台湾で発行されていた日本語新聞の復刻版
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映画関連の本でいっぱいの書棚
お店の中には映画「KANO」の中に登場する書店を再現したような一角があります。ここには魏監督がこれまで手がけた映画の膨大な資料が誰でも見られるように公開されています。しかもカフェで食事やお茶をしながらじっくり閲覧することも可能なんです!映画のストーリーそのものに関わる歴史資料はもちろん、キャストに関する情報を集めたファイルや、撮影時のスケジュール表、小道具やメイクなどについて走り書きされたスタッフのメモなど、撮影現場の雰囲気を伝えてくれる臨場感あふれる資料までもが所狭しと置かれています。
さりげなく置かれていたのは「セデック・バレ」のカチンコ
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資料スペースの一角にあるデスクには「佐塚愛佑主任」のプレートが。「セデック・バレ」で木村祐一さんが演じていた日本人警察官の名前です
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「コールシート」と呼ばれる撮影予定表。これは「海角七號」のもの
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これは「KANO」の絵コンテ!1930年代の高校野球に関する貴重な資料もたくさんありました
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「最初はこんな風に映画製作のすべてを公開するなんてどうかしてるって言われました(笑)。でもこれらの貴重な資料も、撮影が終わって映画が公開されれば、倉庫に眠るだけ。それだったらこうして公開して、映画ファンや映画関係者の人の目に触れる方が、ずっと価値があると思ったんです」と黃さん。いまや台湾映画界のヒットメーカーとなった魏監督と、監督率いる映画会社「果子電影」の創作活動に直接触れられる、貴重な空間です。
あちこちにコンセントが
資料を見たり思索を巡らすことの他にも、「創作のための空間として使ってもらいたい」という思いから、このカフェにはコンセントがたくさん用意されています。どの席に座ってもパソコンで仕事ができるように、というなんともありがたい心配り。実際このお店で脚本を書く人もいれば、映画製作チームが会議を行うケースも多いんだとか。魏監督もよく顔を出されるそうですし、壁に貼られたサインの中には、蔡明亮監督作品で知られる李康生など大物俳優の名前も。台湾映画関係者との遭遇率はかなり高そうです。
壁一面に貼られた映画関係者のサイン
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ファンも気軽にメッセージを残しています
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気になるカフェのメニューは?
撮影道具に囲まれた空間や資料の数々を見るだけでも来る価値は大いにあるこのカフェですが、カフェメニューにもとてもこだわっているそうなんです。お客さんに快適な空間を提供したい、という考え方をそのままメニューにも生かし、有機野菜や台湾特有の食材を使った創作料理とドリンクを提供しています。定食メニューもあり、夜には特製のパスタも登場するので、食事の場所としても十分使える充実度です。
※メニューは季節ごとに変更します。
辣味噌滷牛筋(280元)
黃さんおすすめの定食がこちら。「
辣味噌滷牛筋(280元)」。台湾の定番小吃の滷味は長時間煮込んでトロトロになった牛筋がメインで、ご飯が進む一品です。季節の野菜と合わせて、バランスのよい定食になっています。
金黃牛奶魚布列德(180元)
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金黃牛奶魚布列德(180元)」は台湾でよく食べられている魚・サバヒーをフリットにして、パンにのせて焼き上げた一品。こんなにオシャレなサバヒー料理を食べるのは初めてでしたが、パンとの相性もバッチリでした。
農夫沙拉佐香檬汁(170元)
サラダ類も豊富で、また食器が他のお店とはひと味違っています。原住民が主人公の映画「セデック・バレ」をヒントに、南澳の原住民族が古くから使ってきた木製の皿を再現しました。実際には原住民の部落でもこのような木皿を使う人は少なくなっていて、特別に注文して作ってもらっているんだそうです。
ドリンクはコーヒーやラテなどベーシックなものから、有機ハーブを使ったものまで、こちらもバラエティ豊か。黒糖を使ったラテ「烤手工黑糖咖啡拿鐵(160元)」は甘さ控えめでさっぱりした味わいがとても飲みやすかったです。また台湾で採れるキク科の「杭菊」とハチミツで作った「杭菊蜜飲(150元)」はキンモクセイのような香りのする癒し系花茶。香りを楽しむために60度という微妙な温度で飲むのがおすすめだそう。どちらもおいしいだけでなく、身体に優しい素材を使ったヘルシーさも魅力です。
2015年4月からの新メニューを写真でチェック~♪
「KANO」野球部の上松くんに遭遇!
写真撮影にも快く応じてくれた鐘硯誠さん。最近はバンドを結成し曲作りにも挑戦しているそうです
お店で働くスタッフさんも「KANO」のTシャツを着ているんだな…などと思いつつバックヤードを覗いてみると、そこには見覚えのある顔が。よく見ると「KANO」で3番ショート・上松耕一を演じていた鐘硯誠さんではないですか!しかもその奥では、「セデック・バレ」で日本側につくタウツァ社の一員・達固を演じた方聖傑さんが料理を作っていました!東部出身の2人は台北で自活しているため、俳優活動のない時にはここでスタッフとして働いているんだそうです。「実は開店当初は人手が足りなくて、助監督もウェイターをしていたんですよ」と黃さん。
映画の撮影期間には多忙を極めるスタッフ陣も、手が空いた時にはお店を手伝うこともあるのだといいます。これも特有種ならではですね。鐘硯誠さんと方聖傑さんはお店で働くようになって料理の腕がめきめき上がったんだとか。「一緒に写真を撮るのも大歓迎」ということなので、運良く会えた方は、遠慮せずに声をかけてみてください!
鐘硯誠さんは髪型を変えたばかりで、「どうですか?」と気軽に見せてくれました
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方聖傑さんは「セデック・バレ」の中で馬志翔演じるタイモ・ワリスの仲間として活躍。ガイドの仕事を経てお店のスタッフになり、次回作へのチャンスを伺っています
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今後はイベントなども要チェック!
この日は生活用品にしぼられた小道具市が開かれていました
ナビが取材に伺ったこの日は、お店の前のスペースで大道具や小道具を販売する期間限定のフリーマーケットが開催されていました。今年2月にも映画で使われた衣装をメインにした販売イベントが開催され、盛況だったとのこと。今回は生活用品に絞った出品だったので、映画ファン以外にも、レトロな骨董家具や食器に興味のあるお客さんが集まりました。今後もこのような販売イベントのほかに、映画や音楽に関するイベントも開催していく予定だということです。告知はFacebookに一番早く流れるので、お店に行く前にチェックしておきましょう。
台北にカフェ多しといえども、映画の撮影道具に囲まれて、心ゆくまで資料を手繰り、俳優さんとも直接会えるお店はこの「特有種商行」だけ。セットの中に迷い込んだような気分になれるこの場所で、映画の世界にどっぷりと浸かってみてはいかがでしょうか。
以上、台北ナビがお届けしました。