11月30日に行われるオリンピックの代表チームを決めるアジア予選を前に、台湾チームの実力のほどを視察!コーチにインタビューしました!
こんにちは、台北ナビです。2008年の北京オリンピックの野球代表の代表を決める予選ゲームが11月末に台湾の台中県の球場での開催が予定されています。台湾は郭泰源率いるナショナルチームが結成されることになりますが、その戦力の層は果たしてどれほどのものなのか、分析してみようと思います。
まず、台湾の選手で頂点に立っているのは王建民投手。NYヤンキースで昨年に続く活躍をして今年は19勝に届く安定感を見せ、注目をされています。彼を含め、ここ数年でアメリカで野球修行をしている選手は大幅に増えています。また、日本のプロ球界でも阪神で目覚しい活躍をしている林威助、日本ハムのルーキーとして注目の陽仲壽など、台湾出身の選手たちの成長が著しく、彼らがこぞって台湾に戻り、ナショナルチームを結成した場合は、日本の代表チームをおびやかす存在ともなるでしょう。
とはいっても、実際にはチームとの契約や個人の都合などもあり、台湾チームがフルメンバーがそろえる、というのは難しい状況だ、という話ですが、実際にはどうなのか、ナショナルチームの現場をしきる方にダイレクトにお尋ねしよう、ということで、台湾チームのブレーンのひとり、龔さんの指導する国立体育学院の野球部の練習風景を見学しながら話を聞くことになりました。
國立體育學院
1987年台北県林口に設立された比較的新しい国立大学。優秀なアスリートを育てる場でもある。野球部は1999年設立以来、林恩宇(現・楽天イーグルス在籍・21歳、投手)、陳偉殷(現・中日ドラゴンズ在籍・21歳、投手)、姜建銘(現・巨人ジャイアンツ在籍・21歳、投手)などを筆頭に、プロ球界に多くの人材を送り出している。(*2007年9月現在のデータです)
大学チームなのに「台湾ビール」??
台湾ではどんなふうに選手を育てているのだろう、という好奇心をふくらませながら、林口の国立体育学院の野球場に到着。秋の柔らかな日差しの中、選手たちが紅白戦を実戦スタイルで戦っていました。
球場に入っていくと、あれ?ユニフォームは「台湾ビール」。台湾ビールの社会人チームなのかな、と思っていると、「協賛企業なんですよ。台湾の大学野球チームの半分くらいは、こうした協賛企業があって、その会社のロゴ入りのユニフォームを着ているんです」とのこと。
龔総教練(監督)は、かつては日本の社会人野球でもプレーし、文化大学の野球部をへて、8年前、国立体育学院の野球部創立時からチームを率いています。台湾の大学野球チームの中でも強豪チームとして定着させたほか、台湾ナショナルチームの国際試合があると、選抜選手を率いて海外を転戦しているということで、選手養成の環境などのことで、いろいろ聞いてみました。
Q 遠征が多いようですが、最近、台湾ナショナルチームのコンディションはいかがですか。
A つい先日、オランダの大会に行きました。やはりキューバは強くて、3試合戦って接戦もありましたが惜敗しました。が、準優勝をとってきました。イタリア大会でも同様に2位でした。
ナショナルチームの最終目標
Q 監督は大学内で野球選手の養成をしているわけですが、選手に海外で活躍してもらいたい、ということを最終目標に掲げて、練習に励んでいらっしゃるんですか?
A いいえ、我々の最大目標は、優秀な選手を育てて強い国家代表チームを作り、国際試合で少しでもいい成績を残していきたい、ということです。強い代表チームができれば、国際的にも評価も高くなり、おのずから日本やアメリカのチームのスカウトからも声がかかって、選手たちによりよい将来の活躍の場を作ってあげることができるのだと思っています。
Q この学校からプロ選手に育った選手も少なくない、名門校となりつつありますが、どうして優秀な選手が集まるのでしょう。
A 私はこの学校に野球部ができて8年間監督をつとめていますが、立派な球場もありますし、バッティング練習場、ジムがあるほか、専任のトレーナーもいます。総合的な設備とスタッフがそろっていれば、学生も興味をもってくれますし、企業からの協賛契約をして予算を確保し、野球を志す選手に奨学金を提供するシステムを整備したので、それに魅力を感じて有能な学生たちが集まるようになりました。
Q 積極的かつ総合的な環境づくりが、いい選手を呼び込んでいる、ということですね。で、この学校出身の選手たちの場合はどんな経緯でプロ球界へ?
A 今、楽天にいる林恩宇は、台湾のプロ野球チーム(誠泰コブラズ)に入ってからの活躍から日本のプロ球界に躍進した選手もいますし、国際大会では各国のスカウトたちの目が光っていて、有望な選手は声をかけられるんです。陳偉殷、姜建銘などの投手も、そうして目に留まり、日本でプレーすることになりました。
Q 現在はいい選手が入っていますか?
A ええ、まだ1年生ですが、球の速い選手が2人ほど入ってきていますよ。
Q 最近、海外で活躍する選手に影響される子供たちも多いんでしょうか。
A プロで活躍する先輩たちの姿を見て「自分の国の選手も、努力すれば海外で通用するんだ」と勇気づけられていると思います。今の子は忍耐力が弱いといわれますが、野球人口に関しては反対に増えていると思います。
Q 監督は、台湾時代の王建民(NYヤンキースのエース)も見てきているはずですよね。どんな選手でしたか?
A 彼はまず背が高かったし、体もしなやかだったので、私も有望視してスカウトしようと思ったこともありましたが…(編集部注:王建民は台北市天母の台北市立体育学院に入学した)。当時はそれほど球が速くなかったですが、渡米してマイナーで一からたたき上げていくうちに実力をつけ、チャンスをつかんだという意味では、たいへん稀な選手だったですね。彼の努力と強運のなせるわざだったかもしれません。英語は今ではずいぶん話せるようになったはずですが、以前から寡黙な子でしたよ。今もベンチ内では端っこの「飲料桶」の横に座っている姿は昔とおんなじ(笑)。
アジア予選の戦略とは・・・
Q 11月30日から12月2日のアジア大陸予選は郭泰源監督以下、どんなメンバーで行く方向なんでしょうか。
A 今、コーチに選ばれているのは、呂明賜、謝長亨、洪一中、呉復連と、現在台湾プロ野球のコーチや監督になっている人が中心ですが、私はアマチュアからの選手をとりまとめる、ということでコーチのひとりに名を連ねています。選手の多くはプロの選手から選ばれることになるでしょうが、アマチュアでも状態のいい選手はどんどん使っていく予定です。
Q 台湾の選手の中には、日米で活躍している選手たちもいますが、これらの選手はどのくらい合流できるでしょうか。
A それは、彼らのスケジュールにもよりますね。メジャーリーグの王建民はじめ、アメリカの選手で帰れる人は、あまり多くないと思います。日本にいる林威助(阪神)なども微妙ですね。陳偉殷、姜建銘などの投手はまだうちの学校に在籍中だから、呼べば帰ってくるはずですが、彼ら自身、現在調子が悪かったり、故障だったりですから。メンバー表の発表は、10月のはじめころになるでしょう。
Q 日本代表チームはプロが中心のオールスターをつれて台湾に遠征に来るのですから、もちろん手ごわいですよね。正直にいって、今回は日本に花を持たせて、台湾チームは来年の世界最終予選(*注)に全力を尽くす、という戦略になるのではないですか?(*注)このアジア大陸予選は1位のチームのみ北京オリンピック出場が決定し、2~3位のチームが2008年3月、台湾で開催予定の世界最終予選に進出、8チーム中3チームがオリンピック出場権を得る。
A 確かに、今回の星野ジャパンは強いと思います。が、私たちは、わずかなチャンスでもあれば、それをつかんでいきたい。野球が面白いのは、チャンスは誰にでもあって、何が起こるかわからないということ。そこにドラマが生まれるわけじゃないですか。私もその可能性を信じて、全力で戦いたいです。
オマケ 将来のプロ卵にインタビュー
先ほど監督から「優秀な投手が入ってきた」とのことだったので、将来のプロ球界のスターになるかもしれない、この選手、黄志龍(18歳)を紹介してもらいました。
黄志龍くん。表情は幼いけれども、けっこうイケメンかも。
Q どこの学校出身ですか?そして、どんな選手を目指しているんですか?
A 高雄出身です。小学校1年生から野球をやっています。プロを目指すとしたら、日本でやりたいです。どうしてかっていうと、僕は背が低いから、アメリカではちょっとね…。好きなチームは破壊力のある千葉ロッテ・マリーンズなので、ロッテでやれたらいいな。
ぼそ、ぼそ、と質問1つに短く一言、となかなかうまく話が聞き出せなかったですが、とても純な、たいへん台湾人らしい青年ではありました。
さて、台湾チームの現状、多少でも参考になりましたでしょうか。台北ナビでは、アジア大陸予選のレポートなど、野球情報も逐次取材してまいりますので、乞うご期待。
以上、台北ナビでした。
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記事登録日:2007-09-14